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おらおらでひとりいぐも

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作品情報

あらすじ

74歳、ひとり暮らしの桃子さん。夫に死なれ、子どもとは疎遠。新たな「老いの境地」を描いた感動作!圧倒的自由!賑やかな孤独!63歳・史上最年長受賞、渾身のデビュー作!第54回文藝賞受賞作。

作品詳細情報

タイトル:
おらおらでひとりいぐも
ジャンル:
文学・詩集日本文学
著者:
若竹千佐子
出版社:
河出書房新社
掲載誌:
ファイルサイズ:
0.9MB
配信方式:
ストリーミング、ダウンロード

作品レビュー

[ 2018-1-3 ]

早くも「今年一番の収穫かも」と思わせる傑作と出合いました。
昨年の文藝賞受賞作。
作者は63歳の新人、若竹千佐子さんです。
どんな作品かと言うと、「老いるのも悪くないかも」と思わせてくれる作品です。
なんて書くと、お涙頂戴の感動物語だと思われるかもしれません。
のんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのん。
全力で否定します。
東北弁が唸りを上げて炸裂し、柔毛突起どもが暴れまくるのです。
何のことか分かりませんね?
順を追って説明いたしましょう。
主人公の桃子さんは75歳。
既に最愛の夫を見送り、2人の子供を育て上げ、都市近郊の新興住宅街で一人ひっそりと暮らしています。
代わり映えのしない毎日ですが、桃子さんの頭の中には様々な人格が棲みついていて(これを「柔毛突起」と呼んでいます)、しょっちゅう井戸端会議を開いています。
しかも、東北弁で。
何故、東北弁かというと、桃子さん自身が岩手県の出身だからです。
桃子さんは田舎にいたころ、農協に勤務していました。
農協の組合長の息子と縁談も決まっていましたが、東京五輪のファンファーレに押し出されるようにして故郷を飛び出したのです。
そして、既に他界した夫と運命的な出会いを果たすのです。
老境にある桃子さんは、愛とは何か、自分の人生とは何だったのか、としきりに問い詰めます。
手垢の付いた回答を引き出すと、柔毛突起どもが途端に暴れ出します。
「おめだば、すぐ思考停止して手あかのついた言葉に自分ば寄せる。何が忍び寄る老い、なにがひとりはさびしい。それはおめの本心が。それはおめが考えたごどだが。」
いや、このやり取りが実に愉快で、痛快なのです。
ほぼ全篇、こんなふうに賑やかな東北弁で饒舌に語られます。
取り立ててドラマチックな展開はないですが、頬の緩む場面あり、吹き出す場面ありで、「ああ、この世界にずっと浸っていたいな」と惜しむような思いでページを繰っていくと、最後は「あれ? 俺、もしかして泣いてる?」ってなるんだから、実に鮮やかな手並みと言うほかありません。
それに若竹さんたら感性が実に若々しくて、擬音の使い方も思い切りがいいし、はみ出すことを恐れない、とういうか積極的にはみ出していくんですね。
作中の冒頭で紹介される、ジャズを聴いているうちに丸裸になって踊っていたなんてエピソードは、これは若者の感覚でしょう。
ほんと脱帽です。
これだけの才能があれば、もっと早くデビューできたのではないかと思ってしまいますが、若竹さんの中では本作を著すまでに一定の年月が必要だったんでしょうね。
まさに「機が熟した」というべき、その一瞬を捉えて放った閃光のごとき作品です。
若竹さんがこれからどういう作家人生を歩まれるかは分かりません。
ただ、この作品を世に残せただけでも、生まれてきた甲斐があるというもの。
羨ましい限りです。
これから日本は高齢化社会の長い長い下り坂を下って行きます。
下り坂なんて書いたら、「失礼な」と思われる向きもあるでしょう。
あのさ、そういう「常識」をいったん脇へ置こう。
下り坂はネガティブだっていう思考が前提にあるから、そう思うんよ。
そうじゃない。
下り坂の先には、確かに雲はないけれど、道々、野に咲く花や味わい深い石を見つけられる悦びがあると思うんだ。
さあ、希望を持って老いよう。
桃子さんと一緒に。
※蛇足ですが、本作は、今度の芥川賞ノミネート作。
ぜひ受賞して欲しいものです。

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