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夜の写本師

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作品情報

あらすじ

右手に月石、左手に黒曜石、口のなかに真珠。三つの品をもって生まれてきたカリュドウ。女を殺しては魔法の力を奪う呪われた大魔道師アンジストに、目の前で育ての親を惨殺されたことで、彼の人生は一変する。月の乙女、闇の魔女、海の女魔道師、アンジストに殺された三人の魔女の運命が、数千年の時をへてカリュドウの運命とまじわる。宿敵を滅ぼすべく、カリュドウは魔法ならざる魔法を操る〈夜の写本師〉としての修業をつむが・・・・・・。日本ファンタジーの歴史を塗り替え、読書界にセンセーションを巻き起こした著者のデビュー作。

作品詳細情報

タイトル:
夜の写本師
ジャンル:
小説ファンタジーファンタジー(国内)
著者:
乾石智子
出版社:
東京創元社
掲載誌:
ファイルサイズ:
2.8MB
配信方式:
ストリーミング、ダウンロード

作品レビュー

[ 2015-4-5 ]

いやぁ~、面白かった!
逸る気持ちを抑えながらページをめくり続けた。
いわゆるファンタジー小説というジャンルが苦手な自分が
コレほどハマったのはホンマ珍しいし、
その新人離れした描写力と、物語が持つ力を読む者に改めて知らしめてくれる、ストーリーテリングの巧さよ。

数千年の時を越え
本の中の世界を行き来する主人公と同じく、
読んでいる僕自身も緑豊かな海沿いの街を、彼、彼女らの生きた世界を、
本を開くことで追体験できる至上の喜び。
「ああ~、これが小説だ」と思える何事にも代え難い充実感に感謝!
( 開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんて本しかないし、極上のファンタジー小説があればタイムマシーンなんていらないのである笑)

右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠を持って生まれてきた主人公の少年カリュドウ。
14歳のある日、女を殺しては魔法の力を奪う大魔道師アンジストに
育ての親である女魔道師のエイリャと優れた魔力を持つ少女フィンが目の前で無惨に殺され、
不甲斐ない自分を呪い、復讐を果たすための孤独な旅を描いた
大人のダークファンタジー。

まったく何にもないところから
新しい国や社会を創造し、読む者を今ある現実から異世界へと一気に連れ去るファンタジー小説という特殊なジャンルだけに
そこに何がしかのリアリティがないとただの絵空事となって
物語に入り込めなくなってしまう。

けれどもこのファンタジー小説のスゴいところは圧倒的な描写力と緻密な設定によって違和感なく読む者を引きつけ、
小説というただの紙束からまだ見ぬ新しい世界を出現させるのだ。

主人公の少年カリュドウは
大魔道師アンジストへの復讐のため、
彼を倒す魔法を習得するのに必要不可欠な「写本師」の修業をしていく。
印刷技術がまだなかった時代には、それぞれの本はこの世に一冊きりしかなく、古くなったから棄てるなんてことはできなかった。
だからこそ古くなった本を新たな紙に書き写し、新しく蘇らせる写本の仕事はなくてはならないものだった。
使いこまれボロボロになった本を一字一句同じ筆跡で書き写し、高品質で一生使用に耐えうるために紙の素材やインクにもこだわり、決められた期限内に仕上げる写本師という仕事のなんと高技術で魅力的なことか。(製本すれば隠れてしまうページの端には花や剣など写本師だけの好きな印を入れられる)

そして写本師からレベルアップして「夜の写本師」になると、自分が書きしるしたもの自体に魔力を宿らせることができ、なんとその本を読んだだけで呪いがかけられるのだ。
この力を使ってアンジストに復讐を誓う主人公の執念が切なくも胸に沁みる。

写本工房での修行のパートは、本好きならヨダレタラタラになること間違いなし。
装飾文字を書く者、細密画をほどこす者、本文を筆写する者、周囲に飾り模様を入れる者など仕事は分業化されていて、 
一冊の書物が出来上がる過程が疑似体験できる。
(印刷技術が普及する以前の本は
宝石や貨幣よりも貴重な知的財産として大切にされていたことが解ります)

修行が終わり成人になったカリュドウは自分の出生の秘密が記され、アンジストを倒す鍵となる深紅の革表紙の本「月の書」を手に入れ、
逃れられない宿命の戦いへと誘われていく。

この小説を読むと、物語が持つ力とともに「言葉の力」や「言霊」について改めて考えさせられる。

愛情を持って育てられたペットは手並みの艶や目の輝きが違うように、
ちゃんと一ページ一ページ、人の手と目が触れて、息がかかり可愛がられた本は、
活字がやわらかくなり、そこに込められた人の思いをじかに感じられるようになる。

今、簡単に死を選ぶ人や
夢を信じられない子供が増えてるけど、
そんな時代だからこそ、ファンタジーが必要だし、
ファンタジーを信じることこそが悪意の拡散を防ぎ抑止する作用があるのだと思う。
夢を信じる心をつくるのは
ファンタジーの世界をいかに信じきれるかどうかにも通じると思う。

たった一冊の小説が、ときには誰かを救うことがあるように、
大好きな作家の小説の新刊が気になって今はまだ死ねないでもいい。
そう思わせてくれる不思議な力が物語には確かにあるし、
そんな小さなことで人生が繋がっていく感じが人間の一生であって欲しい。

徹底的な闇を描きながら
かすかな希望を見せて締めるラストも深い余韻を生む、
物語の力を忘れた
今の大人にこそ読んで欲しいダークファンタジーだ。

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