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作品情報

あらすじ

青春を戦争の渦中に過ごした若い女性の,くやしさと,それゆえの,未来への夢.スパッと歯切れのいい言葉が断言的に出てくる,主張のある詩,論理の詩.ときには初々しく震え,またときには凛として顔を上げる.素直な表現で,人を励まし奮い立たせてくれる,「現代詩の長女」茨木のり子のエッセンス.(対談=大岡信,解説=小池昌代)

作品詳細情報

タイトル:
茨木のり子詩集
ジャンル:
文学・詩集詩・短歌・俳句詩・詩集
著者:
谷川俊太郎
出版社:
岩波書店
掲載誌:
ファイルサイズ:
1.7MB
配信方式:
ストリーミング、ダウンロード

作品レビュー

[ 2018-7-18 ]

茨木のり子さんの詩を読むとき、私は自分の祖母のことを思い出す。茨木さんと私の祖母は大正15年、同じ年の生まれだ。亡くなったのは茨木さんが平成18年、祖母が平成20年だから、二人とも同じ時代に生きたと言っていい。

日本の戦後詩を牽引した大詩人の茨木さんと、専業主婦だった私の祖母との間に、もちろん個人的な繋がりはない。茨木さんは、帝国女子医学専門学校(現・東邦大学)を卒業後、医師と結婚し、自身も文筆家として優れた業績を残した。いっぽう私の祖母は、尋常小学校を卒業後すぐ奉公に出され、工場労働者と結婚し、4人の子の育児と義理の両親の介護で一生を終えた。二人の人生には、悲しいほど交わるところがない。文芸に親しむどころか、祖母は文盲とは言わないまでも、日常生活をかろうじて送れる程度の識字能力しか持ち合わせていなかった。「新しい女」とは縁遠い人生を送った女性だった。

にもかかわらず、茨木さんの詩の中に、私はしばしば祖母の姿を見いだす。人妻の肩の匂いに憧れた少女の中に(小さな娘が思ったこと)。爆撃によって破壊された町で、ひとり空を見上げた女性の中に(わたしが一番きれいだったころ)。進学をあきらめて家庭に入り、泣きながら男衆の宴会の世話をする主婦の中に(大学を出た奥さん)。夫に先立たれた妻の中に(その時)。生前多くを語らなかった祖母の、心の奥に封印された喜びと悲しみを、私はこれらの詩の中に見る。昔から何度も繰り返され、これからも何度も繰り返されるであろう、女の人生の希望と失望を見る。

「自分の感受性くらい自分で守れ」という激しい詩で知られる茨木さんだが、決してタフなだけの人ではなかったことが、この詩集を読むとわかる。戦争を挟んで急激に変化する社会と、情けないほど変化しない女性の立場とのはざまで、力強い言葉を書き連ねつつも、物言わぬ女性への共感を忘れなかった人だったのだと思う。

祖母は毎朝30分かけて新聞を読むことを自らに課していた。彼女の読解力では書いていることの半分も理解できなかったが、勉強をやり直そうとするかのように、晩年までその習慣を変えることはなかった。祖母を突き動かしていたものは、茨木さんに詩を書き続けさせたものと、たぶん同じだったと思う。その一点において、二人は同じ時代を生きた同志だったのだ。

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