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作品情報

あらすじ

「学校と塾との往復だけが人生じゃない」誠史たちは筏作りに熱中し、そして航海に出る。大海原を夢みる少年たちを通し、現代社会の矛盾を描いて、児童文学界に衝撃をあたえた傑作長編。

作品詳細情報

タイトル:
ぼくらは海へ
ジャンル:
児童児童文庫
著者:
那須正幹安徳瑛
出版社:
偕成社
掲載誌:
ファイルサイズ:
9.3MB
配信方式:
ストリーミング、ダウンロード

作品レビュー

[ 2013-8-30 ]

「ブックマーク」にいただいた本のアンケートにあった本を借りてみる。ズッコケ三人組の那須さんの旧作。最初は1980年に偕成社から出ていて、私が図書館で借りたのは10年後余りに偕成社文庫になったもの。私が小学校の頃によく読んだ偕成社文庫はクリーム色の字に水玉の装丁だったけど、水玉時代よりもサイズもひとまわり大きくなってる気がする。

カバーの袖には、"「学校と塾との往復だけが人生じゃない」誠史たちは筏づくりに熱中し、そして航海に出る。大海原を夢みる少年たちを通し、現代社会の矛盾を描いて、児童文学界に衝撃をあたえた傑作長編。"とある。

住宅地から自転車で30分ほど、海に近い埋め立て地のあたりは、去年の秋に工事が中断するまでは、立ち入り禁止だった。工事が中断されてから、誠史[さとし]たちはおそるおそる荒れ地へ入りはじめた。塾へ向かう近道だったせいもあるが、海岸線にそって続く土砂の山やまを《アパラチア山脈》と呼び、山脈のむこうへまわりこんだところにあった小さなプレハブ小屋で、誠史たちは塾へ行く前に集まるようになった。

去年の秋から小屋のあたりですごすようになった、同じ進学塾に通う誠史、雅彰[まさあき]、邦俊[くにとし]、勇[いさむ]に、春になってから、同じ6年3組の嗣郎[しろう]が加わる。嗣郎は家が貧しく、自転車をもってないし、塾にも通っていない。父のいない誠史、妹おもいの雅彰、おとなびた邦俊、転勤族の勇…5人の6年生は、それぞれくっきりと個性がある。

ある日、勇と嗣郎がつくった船が、他の3人に公開された。船といっても、細長い棺桶のような木の箱が浮かんでいる、ごく簡単なボートだった。その名は「シーホース号」。誠史も乗ってみたが、大きな波にシーホース号はあっけなく横転して、誠史は海へ落ちた。

ずぶ濡れの誠史をおいて3人が塾に行ったあと、「もっとでかい船つくろうか」と誠史は嗣郎に声をかける。もっと大きな船「ジャンボ・シーホース号」をつくろうと、勇が設計図を書いてきた。

設計図にしたがって、《アパラチア山脈》のがらくたの中から材料になりそうな材木を探し、釘をぬいたり、板切れをひっぺがしたりして、寸法通りに切っていく。このとき活躍したのは嗣郎だ。父親の大工道具をもちだしてきた嗣郎は、船の骨組みになる角材をひとりで切りそろえてしまった。

釘をうち、板を張り、1ヶ月ほど苦労してできあがった「ジャンボ・シーホース号」は、進水式の日に、ずいぶん水が入ってくることがわかり、しかも右側の船板ごと雅彰が海に落ちた。

あいだに、「ジャンボ・シーホース号」をつくる前後の、5人それぞれの暮らしが描かれる。親をみる目、自分自身をみつめる気持ち…私はそこを読みながら、6年生の同じクラスにいた、あの子やこの子のことを思い浮かべた。誠史や雅彰のような子もいたし、邦俊や勇のような子もいた。嗣郎のような子もいた。同じクラスの子のそれぞれの家庭に格差や貧富があることを、6年生の私もなんとなく分かっていた。

うまくいかなかった「ジャンボ・シーホース号」のつぎに、また新しい船づくりが始まった。こんどはいかだ型の「シーホース三世号」。竹ざおではうまく操れないので、帆を張ることにした。それで海に出てみたが、帆をふくらませると、三世号はしゃっくりをしたようにがくがくする。

このあたりから6年1組の康彦と茂男が仲間に加わる。康彦が設計図を書いてきて、マストの位置が重要だという。いかだの下にはドラム缶を並べ、甲板には小屋も建てた。試運転はうまくいった。帆は風をはらみ、三世号はかなりのスピードで走りはじめた。

船のことだけではなく、学校のこと、塾のこと、家族のこと、それぞれの心にうずまく思い、ときに猛りたつ心のうちが書かれている。嵐の日に、三世号を見にいったらしい嗣郎が死んだ。勇は父の転勤でまた引っ越していく。

そして、嗣郎が死んだあと、埋め立て地に近づかなくなったほかの仲間をおいて、誠史と邦俊は、嵐でかなり壊れた三世号をつくりなおしていた。夏休みも終わりに近い日に、二人は三世号で、太平洋に向かって船出する。大きな海へ、二人は旅立ったのだ。

物語の舞台は広島とおぼしく、クラスの三分の一くらいは塾へ行ったりしていて、いつ頃の話かなーと思いながら読んでいた。旧作ということもあって、えらい古い話のような気がしていたが、最初に発表された1980年というと、よくよく考えれば、私自身が6年生のときだ!あのころ、すでにズッコケ三人組は読んでいたけど、那須さんにこんな作品があるのは全然知らなかった。

30年を経て、2010年には文春文庫に入ったそうだ。

(8/18了)

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