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ヨーゼフ・メンゲレの逃亡

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作品情報

あらすじ

ヨーゼフ・メンゲレ、アウシュヴィッツ絶滅収容所に移送され、降車場に降ろされたユダヤ人を、強制労働へ、ガス室へと選別したナチスの医師。優生学に取り憑かれた彼は、とりわけ双子の研究に熱中し、想像を絶する実験を重ねた。1945年のアウシュヴィッツ解放時に研究資料を持って逃亡。その後、49年にアルゼンチンに渡った彼は、79年にブラジルの海岸で死亡するまで南米に潜み、捕まることも、裁かれることもなく様々な偽名のもと、生き続けたのだった。そして、その死が遺骨のDNA鑑定によって確認されたのは90年代になってからのことだ。なぜメンゲレは生き延びることができたのか? 彼は、どのような逃亡生活を送ったのか? 謎に満ちた後半生の真実と、人間の本質に、ジャーナリスティックな手法と硬質な筆致で迫った傑作小説。ルノードー賞受賞作。

作品詳細情報

タイトル:
ヨーゼフ・メンゲレの逃亡
ジャンル:
小説海外小説一般
著者:
オリヴィエ・ゲーズ高橋啓
出版社:
東京創元社
掲載誌:
ファイルサイズ:
0.7MB
配信方式:
ストリーミング、ダウンロード

作品レビュー

[ 2018-11-26 ]

戦後、戦犯追及を恐れ、多くのナチ党員が南米に逃れた。残虐な人体実験を数多く行った医師ヨーゼフ・メンゲレもその1人である。アドルフ・アイヒマンのように、その後、居場所を突き止められて断罪された者も多いが、メンゲレは死を迎えるまで、ナチハンターの手から「逃げおおせた」。その潜伏生活については不明な点も多い。
本書は膨大な資料を読み込んだうえで、「影」の部分を小説的手法で補うという、T.カポーティに倣った「ノンフィクション小説」の手法を採る。
南米時代のメンゲレの実像に近づこうという試みである。

ナチ時代のメンゲレは、双子に異常な興味を示し、収容者の生死を選別し、乳飲み子も殺した。だが彼は、異様で巨大な怪物だったのか。
ここに描かれるメンゲレは、優等生ともてはやされた昔を懐かしみ、故郷に焦がれ、見えない追っ手の手に怯える、どちらかといえば卑小な人物である。
終わりのない逃亡生活に疲弊し、学位を取り上げられたことに怨嗟し、世間の批判は陰謀だと憤怒し、誰も理解者のいない孤独に悲嘆する。
自身をモデルにしたとされる残虐な歯科医師が登場する映画「マラソンマン」を見て絶望するし、過去の罪を問う息子に問い詰められて逆上する。
「悪魔」的な冷酷非情さからはほど遠い。

メンゲレは誰にも知られずひっそりと死ぬ。
大勢の前で糾弾されたアイヒマンとは対照的に。
だが、それは果たして彼の「勝利」だったのか。

彼の死後も、世間では「メンゲレは生きている」という噂は絶えなかった。死んだことにして、実は追及の手を逃れているのだと囁かれた。
映画化もされた小説「ブラジルから来た少年」さながらに、南米でも悪魔的な実験を続け、ヒトラー再来・ナチス再建を目論んでいるのだという穿った見方まであった。
死後何年も経ち、ついには墓が暴かれ、遺骨が鑑定に掛けられるまで、メンゲレの「逃亡生活」は終わらなかった。

振り上げられた人々の怒りの拳。それは彼の為したことに対して、当然の反応であっただろう。
だが、メンゲレの真実の姿が、本書に描かれたものに近かったのだとすれば、その拳が破壊すべきものはなんだったのか。
なぜこうした「俗人」然とした人物が怖ろしい所業を為しえたのか。誰か止めることができなかったのか。止められるとすれば、いつどこでだったのか。
彼は本当に自分のしたことを悔いたことがあったのだろうか。そしてこれは彼個人の特異な性質のみによるものなのだろうか。

真の「悪」とは何なのか。
その問いの答え難さに、いささか茫然とする。

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