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日の名残り

作品レビュー

[ 2017-11-26 ]

人生は近くで見れば悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ――とは、喜劇王チャップリンの名言だ。私は若い頃、悲劇の対義語は喜劇だと思っていたが、歳をとるにつれ、悲劇と喜劇は大抵セットでやってくることが実感として分かるようになってきた。セットというより、同じコインの裏表という方が、より適切な表現かもしれない。

カズオ・イシグロの小説は、そのことを端的に私達に示してくれる。特にこの『日の名残り』という作品はそうだ。とある屋敷に勤める老執事の視点を通して、失われゆく古き英国を淡々と描いたこの物語は、人生下り坂に入ったと感じる者のみが理解しうるユーモアとペーソスとに満ちている。

簡単な一言が言えなかったばかりに失ってしまった女性。壮大な徒労に終わった幻の大事業。人生をかけて理想を追い求めたが、歴史を築くどころか、平凡な家庭を築くことすらできなかった男達。実利主義の前に破れ去る騎士道精神…。老執事の失意と悲嘆が、時に不穏な、時にユーモラスな筆致で描きだされてゆく。失われた人生を思って涙した老執事が、新しい主人のためにアメリカン・ジョークの練習をしようと決心するラストは、カズオ・イシグロ式ユーモアの真骨頂だ。

前途に夢と希望しかない者には、この小説の味は分からないだろう。人の数だけ叶わなかった夢があり、打ち砕かれた希望がある。それを知る者だけが、ありえたはずの別の人生を思って、老執事と共に涙することができるのだ。夕暮れどきが最も良い時間だというのは、老いゆく者に対する作者なりのエールだろうか。悲劇だろうが喜劇だろうが、主役だろうが端役だろうが、与えられた役を最後まで演じきるのが、人の定めだとするならば。

[ 2017-12-10 ]

英国執事を主人公に据え、英国文学ならではの上品さとユーモアを散りばめながら、これまた戦後の英国を体現するかのような栄光の落日を重厚かつスマートなタッチで描いた作品です。
今回もカズオ・イシグロお得意の回想シーンが休暇で旅をする現在とパラレルに交錯していて、回想が割と非時系列的であるにもかかわらず卓抜な文章表現にてぐいぐいと読者を惹きつける物語の構成力はなかなか大したものでした!

英国執事に求められる「品格」とは何か?どこぞの国の角界でも問題視されるテーマが今回のお題です。
いまは館の主人を失い、大富豪のアメリカ人に買い取られたお屋敷ダーリントン・ホール。召使いの数もぐっと減り日常業務もままならなくなったミスター・スティーブンスは、現在のご主人様より自動車旅行を提案されたのを幸いに、かつての同僚で女中頭であったミス・ケントンに会うべく車を走らせる。
運転や宿泊の折々に思い返されるのは、かつてのダーリントン・ホールで執事の職務を忙しく忠実にこなしていた華やかな日々であり、貴族の使命感に燃えていたご主人様ダーリントン卿やミス・ケントンとの思い出の数々であった・・・。

戦前・戦中・戦後を経て、目まぐるしい時代の変化の中に取り残されてしまったお屋敷と執事という存在を、日本人の血を持つカズオ・イシグロが圧倒的な文章力でモノにしたというところがまず面白いです。
カズオ・イシグロのノーベル賞受賞スピーチを読むと日本的なものへのこだわりがあったとのことですが、このようなあまりにもイギリス的な視点においても戦前・戦中・戦後を経た日本文化との共通性があるのかもしれませんね。
そのような中で問われるのは職務に求められる「品格」です。この物語では世の中でもはや失われようとしている執事の「品格」ついての事例が繰り返し提示されます。これは長年に培ってきた職務への誇りであり、自負であり、ひいては求められる社会の規律であったとも言ってもいいでしょう。
しかし逆に、父の死や求愛の拒絶といった人生の重大事にも目を背け、ひたすら職務に身を捧げるといった頑迷さも鼻につきます。
ひたすら励む職務に対し、われわれはそこに忠実の美徳を見るとともに、どこか滑稽さも感じるのはやはり第三者的な別世界の視点でしかないからでしょう。作者はこの視点を最大限に活かすためかなり大げさな振る舞いをさせていると思いますが、それが腑に落ちてしまうのは作者のエンターテインメントの力量が優れているからでしょうね。
そこかしこに出てくるユーモアもとても面白かったです。

社会が変わり、人生の黄昏にも気が付いた時、老執事が向き合ったのはいまや残酷となってしまったかつての栄光でしょうか。
いや、かつての栄光を胸にしまいつつ、そして、苦々しく感じる過去も全て飲み込んで、ミスター・スティーブンスが考えたことは新しいご主人様であるアメリカ人に対応するべくジョークを身につける研鑽を積むことでした。
こうしたユーモアに満ちた微笑ましさに、カズオ・イシグロの繊細な優しさを感じてしまうのです。

[ 2018-06-20 ]

舞台は1956年のイギリス。
主人公は大きなお邸の有能な執事として働いてきた初老のスティーブンスである。
世は変わり、現在の主人はアメリカ人富豪だ。
主人の好意で短い休暇をもらったスティーブンスは、かつてともに働いていたミセス・ベンを訪ねる旅に出る。人手の足りないお邸にもう一度勤めてはくれないかという淡い期待があってのことだったが、それはただの事務的な思いだけではなかった。
車での旅の途中、スティーブンスはお邸の華やかなりし頃を思い出す。
ミセス・ベンの住むコーンウォールへの旅は、彼の過去への旅でもあった。

彼が長年仕えた英国貴族のダーリントン卿は、紳士の中の紳士だった。優れた名士に仕えることをスティーブンスは誇りに思ってきた。最高の執事に何より必要なのは「品格」だと信じ、その道を極めるために日々、勤めに励んでいた。
けれどもダーリントン卿は、ナチスへの協力者として、戦後、批判にさらされ、失意のうちに世を去る。
スティーブンスの一生とは、ある意味、まがい物に身を捧げたがために、身近にいた女性の好意に応えることもなく、ささやかな家庭的幸せも逃してしまった人生だったのだ。

この物語は本質的に、身を捧げたものに裏切られる悲劇である。
だがそれを、英国の美しい風景と、シニカルだがなお温かいジョークに包んだところに、イシグロの「優しさ」を見る。
朴念仁のミスター・スティーブンスに、ミス・ケントン(あるいはミセス・ベン)が魅かれた理由は、案外、職業上の完璧さに滲む、「哀しいかわいらしさ」にあったのかもしれない。執事としての自分を崩すことはできない。けれども時折、人としての芯が覗くのだ。

「品格」とは何か。作中でスティーブンス自身も論じているが、これはなかなか難しい。
「信じたもの」に身を奉じること自体の崇高さ。それこそが「品格」であるのかもしれない。あるいはそれが虚像に過ぎなかったとしても。
スティーブンスが追い求めた理想は、いささか「時代遅れ」であったのだろう。だが残光の中できらめくその輝きは忘れがたい印象を残す。

イシグロはふわりと比喩で語る作家ではないかと思う。
彼が書く「執事」的なるものは、実は多くの人が抱えるものなのではないか。理想に燃え、それに身を投じる。だがそれはどれほど確固たるものなのか。一度は信じたものに、ひとは時に裏切られる。輝かしいはずの理想のメッキは、時に剥げる。そうなったときに、ひとはどうするか。
それでもなお保てる「品格」はそこにあるか。

お邸の輝く日々は戻らない。自らの青春もまた戻らない。旅の終わりにスティーブンスは痛いほどそのことを知る。
だが彼は執事であることをやめない。
それどころか、新しい主人に沿うべく、「アメリカンジョーク」を学ぼうとするのだ。絶望的にセンスがないにも関わらず。
その真摯さの哀しいおかしさ。それでいてはっとするような強さ。

日の暮れ方、光が闇に呑まれる前のほんのひととき。それは作中人物が言うように、1日でいちばんの時間なのかもしれない。あまりに短い、あまりにはかないひととき。
だがそのはかなさのゆえに、それは美しいのかもしれない

[ 2019-05-17 ]

英国最高の文学賞・ブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロの傑作長編。
第一次・第二次大戦の前後の激動の時代を経験した英国貴族のダーリントン卿に使えた執事(バトラー)による回想形式の小説。
今まで、カズオ・イシグロの本は「わたしを離さないで」、「忘れられた巨人」、「わたしたちが孤児だったころ」の3冊を読んできたが、本書が一番心に刺さった本だった。
《以下、ネタバレあり・未読者は注意!》

主人公である執事のスティーブンスは、自分が長年仕えてきたダーリントン卿を真の英国紳士であると信じ、自分もそれにふさわしい執事であろうと長年自らを高めてきた。結婚もせず、英国一の品格のある執事であることだけを目指し、ダーリントン・ホール(ダーリントン卿の有する大豪邸)で働く女中頭のミス・ケントンと共に数多くの使用人達をとりまとめ、ダーリントン・ホールを運営していた。

しかし、ダーリントン卿は第二次大戦後、ドイツに対して便宜を図ったという汚名を着せられ、失意のうちに自殺してしまう。
ダーリントン卿亡き後、ダーリントン・ホールは米国人実業家ファラデイ氏に売られ、使用人もほとんどが解雇されたが、スティーブンスはファラデイ氏の執事として屋敷に残ることとなる。

ある時、米国に一時帰国するファラデイ氏から休暇をもらい、英国の美しき田園地帯を車で旅行するスティーブンス。その最終目的地は、旅行の直前に彼女の夫婦関係が上手くいっていないことを匂わせるような意味深な手紙を寄越した元女中頭のミス・ケントンと出会うことだ。今のダーリントン・ホールは使用人が足りない。もしミス・ケントンが復帰してくれれば、自分として非常に心強い。

美しい英国の田園風景を自動車で旅行しながら、6日目の旅行の最後にミス・ケントンとスティーブンスは再会する。その再会は、たったの数時間、スティーブンスが滞在していたホテルの談話室でのことだ。

ミス・ケントンは現在、夫婦関係は上手くいっていると話した。上手くいっているというよりも、今の夫を愛せるようになるまで自分は成長したのだとミス・ケントンはスティーブンスに告白する。だから、ダーリントン・ホールには戻れないと・・・。

ミス・ケントンと別れ、当時、彼女が本当は自分のことを慕っていたのだということを知ったスティーブンスは、自分の人生の意味を根底から覆され、そして自分の人生を振り返って、まさに沈む太陽の『日の名残り』を見ながら涙する。
もちろん、今まで自分が生きてきた人生には一片の曇りも無く、自分にも他人にも誇れる「執事」人生であったと胸を張って言うことができる。
二つの大戦を生き抜いてきた英国という国に対して、直接ではないけれども、ダーリントン・ホールを訪れる英国首相を始め、各国の重要人物らに執事という仕事を通じて、数々のお世話をすることによって、英国に貢献することができたという自負もある。

しかし、自分には他にも選ぶことのできた人生があったのではないだろうか?

執事を辞め、ミス・ケントンと一緒になり、贅沢はしなくとも、愛する人と幸せな人生を送る。そんな人生を選ぶことも自分には十分にできたのではないか。
それを思うと、無性に涙が流れる。

人生の酸いも甘いも経験した誰もが人生の終盤にさしかかった時に自問するであろう「自分の人生はこれで間違っていなかったのだろうか?」という疑問。
そこには当然答えなどはないが、本書を読んで、自分が歩んできた人生を見直す契機となる1冊だった。

年老いた執事の人生と英国の時代の変遷を同調させ、美しき英国の田園地帯の情景と執事のユーモラスな中にも厳然とした執事人生の回想を通じて読者に語りかける美しき一冊。カズオ・イシグロの傑作。

[ 2011-12-28 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-10-06 ]

沈みゆく一瞬の輝きでしか見えないものがある。傾いた陽が、やがて勢いを忘れブラッドオレンジの絵の具のようになる頃、その柔らかな光の影でしか見えてこない形がある。大抵は、そうした影がようやく見えた頃には、もはや後戻りできない夜が目前にある。輝いだ喧噪も午後の無為な時間も同じように覆い尽くす夜である。夕暮れの光のなかに知っていたはずのシルエットを見て、あたかも初めてそれに気づいたと感じたとしても、そのシルエットを為すそれは以前から間違いなくそこにあったのだ。ただ、日々の忙しさの中に忘れ、無意識に記憶から追い出し、夕暮れの時間になって初めて思い出した。それだけのことなのだ。そうやって気づいた影は、間も無く漆黒に沈んでいく。秋の夕暮れである。

一日を振り返るとか、思い出にひたるとか、あるいは、過去にふと気づくというのは、存外容易なことに違いない。映画や小説で見るフラッシュバックは、そうした容易さがあるから受け入れやすいのだろう。その容易さがゆえに切ない。そういうものである。

とりたてて触れるべき事はない。世界的に知られた英国作家の代表作のひとつである。何が起きるわけでもない。なんども読み返すような深い描写が繰り返されるわけでもない。ある人に会いに旅立つ。ただそんな話である。英国の斜陽と簡単に片付けることもできなくはないが、それ以前にひとの日常と傾きかけた陽の光が周囲を覆う。ただ、最後の1行まで読み切らなければわからない。それだけのことである。

(2017年9月より前に読んだものですが、今回は例外で登録)

[ 2018-05-18 ]

5月の連休中の読書です。
カズオ・イシグロが昨年ノーベル文学賞を受賞した時に買ったまま、本棚にしまっていたのを引っ張り出して。

1950年代のイギリスを舞台に、年老いた執事・スティーブンスが成年期に過ごした日々を一人称で回想する本書。
1930年代のイギリス、というのがピンとこなくて、ネットで世界史の年表にあたる。
ふむふむ、世界恐慌を受けて各国が保護主義貿易を強める中、ファシスト政権が台頭し、第二次世界大戦に向けて緊張感が日に日に増していた頃、と。

ちょうど本書を読み終わったばかりのタイミングで、公開されていた映画『ウィンストン・チャーチル:ヒトラーから世界を救った男』(原題はDarkest Hour)を観たのですが、比較できて面白かったです。
『ウィンストン・チャーチル』は、政治を動かす中心にいる上流階級の、それに対し、本書は上流階級に仕える周辺の人間の、それぞれ対照的な目線でこの時代のイギリスの苦境を描いています。

そして、このスティーブンス氏が、なんともツッコミどころ満載の人物で。
決して悪人ではない、むしろ、職業意識の高い真面目な人物なのですが、どうにも不器用すぎる。
特に、かつて同僚として働く中で恋が芽生えたミス・ケントンへの態度は、ちょっと都合が良すぎると思いました。
でも、忙しい仕事の合間にこっそりロマンス小説を読むことを楽しみにしていたり、色々おっちょこちょいで、憎めない。

そんなスティーブンスが、第二次世界大戦や、ナチスの台頭と敗北に巻き込まれ、彼が信じて身を捧げてきた全てが過去になった時、口にする言葉が良かったです。
時の流れの中で、自分も周りも変わってしまったときに、どう物事を受け止めるか。
過去は過去、とさっぱり切り替える考え方もありだとは思うんですが、個人的には、ちょっとさみしすぎるなと。
歴史のうねりの中で成す術がなかったとしても、振り返ってみれば以前とった行動が愚かに思えたとしても。
必死に生きてきた自分を静かに肯定するスティーブンスの言葉は、時代も政治体制も異なる国を生きる私にも、響きました。
本書の中で、しばしばスティーブンスが「品格」とは何か、ということについて考察をするのですが、良い部分も悪い部分も含めて自分を肯定し、先へ進もうとする姿こそ、もしかしたら「品格」なんじゃないか。
そうだったらいいなと思います。

翻訳であることをほとんど感じさせない土屋政雄の訳、この小説の成り立ちを鮮やかに描写する丸谷才一の解説も素晴らしくて、本編と一体となって一冊を完成させています。

[ 2018-01-13 ]

一人の老執事が昔の女中頭に会いに行く小旅行の間の回想録と言ってしまっては身も蓋もないですが、それだけの設定でここまで読ませる本はないと思いました。
過去と現在を行き来するイシグロさんならではの書き方が、少しも違和感ない感じなのは、年老いた執事という設定にもよるのでしょうか。
本の最初の方と最後では主人公の執事に対する見方が大きく変わってしまい、自分でも戸惑うくらいです。
何が真実であったかは、きっと終わってわかるものなのでしょう。最後のシーンはとても考えさせられました。
読みやすい本ですが、読み終わった後も心に残る本です。お勧め。

[ 2013-06-16 ]

古き良き時代のイギリスが舞台。英国執事とその主人、そして女中頭の物語です。
尊敬する主人に仕え続けた執事が、晩年初めて旅をしながら自分自身の人生を振り返ります。

「品格」を体現した生真面目な執事が語る主人との催事や会議がすばらしくてときめきました。
執事の役割もそうなのですけど英国貴族の役割もね。とてもよかったです。

それから、抑制されつくした口ぶりで語る女中頭との恋愛模様も、つつましやかすぎて愛おしくて、少し切ないけどなんとなくほっこりするような。これも生真面目で偏屈な執事ならではの語りが効いていてときめきます。

また、翻訳が上手で、全く違和感のない、それどころか美しい日本語が物語の雰囲気にぴったりでした。
上質な作品。

[ 2016-10-31 ]

昔大学の講義で習った、信頼できない語り手(しんらいできないかたりて、英語: Unreliable narrator)、という言葉を思い出しました。
20イギリスの執事の回顧録。いかに自分が品格があり、理性的で、主人の仕事に盲目的に従っているかを蕩々と語っているが、その文章の節々から女中頭へ慕情、怒濤の時代の変遷を読者はうかがうことが出来る。
執事の語られていないところで多くの事象が動いている(ex:女中頭の恋、政治経済の動向、父親の心境)のにも関わらず、それを一切排除し、私見に寄った語りを進めるので、重いと感じる人もいると思うし、逆に執事になりきって没頭出来る人もいると思う。

[ 2018-01-15 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-11-06 ]

ノーベル文学賞作家、ガルシア=マルケスの代表作「百年の孤独」をかつて苦心して読みました。
同著者の「族長の秋」に至っては、4~5ページ読んだところで、「とても歯が立たない」と投げ出しました。
ですから、今回、ノーベル文学賞受賞の報に接し、カズオ・イシグロの著書を初めて手に取った瞬間、こう思いました。
「自分には高尚過ぎる内容かな、難しいのかな」
とんでもない誤りでした。
読後の感想は、読みやすい、そして面白い。
いや、こんなにリーダブルな小説だとは思いもよりませんでした。
内容も興味深い。
英国の老執事が過去を回想する物語。
タイトルの「日の名残り」というのは、人生の黄昏時に入った執事のことを意味しているのでしょう。
そして、恐らくダブルミーニングなのではありますまいか(主人公の執事の口調を真似てみました)。
それは、かつては世界に冠たる大帝国だった英国の没落という意味です。
主人公の執事が、以前は国際的にも影響力のある名家の英紳士に仕え、現在は米国人の大富豪に仕えているということが、それを象徴的に表しています。
しかし、本書の大テーマでもある、「品格」ということになると、英国紳士に軍配が上がるでしょう。
あるジョークを思い出しました。
米国人が英国に行って、素晴らしい芝生を見ました。
「こんな見事な芝生は見たことがない。いくらかかりました?」
相手は一言、「500年」。
米国はしょせんカネだけがモノを言う国、英国には格式と伝統があるという英国人の心意気が伝わるジョークです。
さて、未読の方でこれから本書を読むという方は、これ以降読まない方が賢明かもしれません(ネタバレとか謎解きとか、そういう類の本ではないのですが…)
主人公の執事に恋焦がれる女性がいます。
名家の英紳士に、ともに仕えた女中頭です。
女中頭は、外で知り合った男性から求婚され、やがて屋敷を離れることになります。
主人公は、現在仕えている米国人の大富豪から勧められ、英国中を自動車旅行しながら、この女中頭の元へ向かいます。
そして、最後に女中頭から、好きだったことをほのめかされます。
ここはジンと来る場面です。
人生は取り返しのつかないものなのだ、ということが伝わってきます。
静かに深く、人生の何たるかを教えてくれる、大変にいい作品でした。
たくまざるユーモアもあります。
客人の息子に「生命の神秘」(セックスのことですね)を教えようとする場面などは、実にユーモラスです。
最後は、主人公の老執事がジョークの大切さを痛感して終わります。
このラストも実に爽やか。
「もっと肩の力を抜いて行こうよ」という著者のメッセージのように思いました。
ところで、カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞の後、「なぜハルキじゃない?」という、本質とは全く違う報道がメディアを覆いました。
そんな些末な話に矮小化しない方がいいのではないかと、読後、思ったことでございます。

[ 2018-04-03 ]

読後にしみじみとした、言いようのない感動があります。

消えゆく英国文化の生き残りとも言える執事、スティーブンスが、短い旅の中、輝かしい過去を回想するという、淡々とした物語です。
退屈そうな、山場もなさそうな展開と設定なのに、カズオ・イシグロの腕にかかると、登場人物たちの生き生きとした会話劇と、執事としての品格を保ってきた執事自身の語り手効果で、素晴らしいストーリー性を発揮するのです。
回りくどいし、ハッキリと断言もしない台詞回しなのに、リアルに、率直に迫ってくるのが流石です。

スティーブンスのいう品格の意味を、読んでいて完全に理解はできませんでしたが、彼が果たそうとした役目や、英国の執事たちが目指した精神を想像することはできました。
今は執務を完遂するよりも、感情的部分や、正義の行動を起こすことに、重きをおく傾向が、あるように思います。
だからこそ、ローカルな、限られた伝統的な精神に、失われていくものを見出して、しんみりと感動してしまったのかもしれません。
スティーブンスが目指した品格に、我々は価値すら見出さなくなるかもしれない。それくらい、自分の役割を貫くことに冷淡さすら感じるのが、今の普通だと思います。

でも、誰もが人生で犠牲にしてきたこと、無くしてきたものをふりかえり、あのときああならばと、別の可能性を考えることはあります。
スティーブンスの場合、執事という立場を貫く、自己の品格を貫くという行動によって、ありえたかもしれない可能性を失ってしまうわけです。
語りの端々や記憶からスティーブンス自身の胸の痛みを感じ取れて、スティーブンスの幸せを願わずにいられなくなりました。

彼らが失っていったもの、可能性があったかもしれない未来への哀愁に、胸がぎゅっとしめつけられるのですが、人読後はほのかな温かみにも癒されました。
老年になればなるほど、人は成し遂げた分、なくすものや実現できなかった可能性への道を思うのかもしれません。
まだそんな年にはなっていないのですが、私の胸には、スティーブンスやミセス・ケントンの悲哀や喜びが、ずっと残り続ける気がします。
何を選ぶのか、それは人それぞれ違うのでしょうが、選んだ道を胸を痛めながら進んだ彼らを慰め、賞賛したくなりました。

[ 2018-08-17 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-03-07 ]

著者の得意な第二次世界大戦の時代を振り返る形式。エンタメ。終盤のどんでん返しが悲しくてよい。
信用ならない語り手による欺瞞的な回顧という形式も著者が得意とするところだが、今回は全てを執事の品格というフィクションで糊塗する男。語り口が一々うざったらしくてよい。そして豊崎由美氏も指摘するとおり、実質はたんなるだめんず。テンパるとすぐに感情的になり、父の死に目にも会えず、かつての主人を執事盲目的に賛美し。。。
とはいえ、最後に自己欺瞞に自ら言及し、執事の品格という欺瞞を徹底することで淡い恋を丸く収める点は、一周回った感じで感動的。欺瞞もやり通せば本物になりうるという希望を感じさせる。ジョークを勉強しようという情けないアホさで〆るのもかわゆす。

[ 2017-10-09 ]

再読
イシグロ氏、ノーベル文学賞受賞おめでとうございます。ということで、また引っ張りだして読んでみた。昔読んだ時は断然「私を離さないで」派だったけど、今読むとこっちの方が好きかも。
クライマックスのウェイマスの桟橋の夕日のシーンは言わずもがな。もうね、小説の構成が、もうね。全てはこの、隣に居合わせた見知らぬ男に、このセリフを言わせんが為の前振りに過ぎなかったんだなぁという、気持ち良いしてやられた感。
…と、まあ王道な読み方でも楽しめるし、もちろんちょっとしたイギリス歴史小説としても楽しめるし、私はこの小説、世間知らずのスティーブンスの「初めてのおつかい」的な、コメディタッチの冒険譚としても楽しめるのではないかと。
主人公のスティーブンス氏って、頑固でプライドが高くて、変に見栄っ張りで、イケ好かない奴なんだけど、馬鹿真面目に努力しても、その努力の方向性がズレズレだったり、憎めないキャラクターなんだよね。
以下、私が読みながらツッコんだところ。
旅行1日目、通りすがりのオッサンの挑発に乗り「絶景の丘」にすたこら登るスティーブンス氏。
ナショジオでしか見たことない世界の景勝地より、やっぱりグレートブリテンの景色には品格があるぜ(ドヤぁ)
レジナルド様に「生命の神秘」を説こうとシャクナゲの茂みに隠れる、が未遂に終わる。
気になってるミス・ケントンの前でついついいけずな態度を取ってしまうスティーブンス氏。
仕事終わりにミス・ケントンの部屋で行われるココア会議(おまいら中学生か!)
ガス欠になったり、つい見栄張って素性を偽ってしまったりと、失敗した後は素直に失敗を認め、たかと思いきや往生際悪くエクスキューズを並べまくる。(で、毎回言い訳の文がその後2〜3ページ続く。)
新しいアメリカ人のご主人様にアメリカンジョークで応戦するも、盛大にスベり、ラジオを聴いてネタを仕込むも、田舎の農村の酒場にて(しかも同じ鳥ネタで)場を凍りつかせ、極め付けはラスト「お帰りになったファラディ様を、私は立派なジョークでびっくりさせて差し上げることができるやもしれません。(ニヤリ)」(なんだその鋼のメンタル)
これ、絶対イシグロ氏も狙ってる〜。
とか、低俗な視点で楽しんでました。天下のノーベル文学賞に対してスミマセン。
でも面白かった〜。

[ 2018-04-25 ]

カズオ.イシグロ 著
土屋正雄 訳

執事といえば やはりおもい浮かぶのは イギリスの執事
ダーリントン卿に長い間使えて いたが、物語はダーリントンホールを受け継がれたアメリカのファラデイ様の執事をしているところからの始まる 主人公執事役のスティーブンスのかなり まどろっこしい言い訳じみた説明には少し辟易してしまう事もあり、実際次々に読みたくなる小説ではなかった気もするが、普通本を読んでると 勝手に自分なりにその人なりの雰囲気を想像して 主人公を自分で作り上げてしまうものだが、なかなか スティーブンスの人となりのイメージが湧きにくく 次に進みにくいところがあったのは否めないが 執事たる自分が思うものに より近く そして実直に執事たるものに人生をかけてるのが だんだん 面白く感じてきた 後半は
執事の旅に待ち受ける事柄に興味を持ってしまったくらいだ スティーブンスが実際の生活している姿を垣間見ることはなかったが ひとつの事に従事してやり遂げる事って こういう事なんだろうなぁと思った 以前 映画で観た「私を離さないで」でが深く心に残っていたので 随分と違った形でイギリス文化に触れているんだなぁと感じました。
でも、アメリカにはアメリカのやり方でジョークも覚えようとする 人間的な雰囲気も良かったです

[ 2016-09-17 ]

ある一人の執事が往年雇い主に仕えた日々を、女中頭への淡い恋心とともに振り返るという、特にストーリー的にも盛り上がることなく終わる物語なのだが、
イギリス貴族の重厚な雰囲気と洗練された文章が読んでいて実に心地良い。
訳文は、下手な受験生の関係代名詞の直訳のような意味の分かりづらい日本語なのだが、それがまたオールドキングスイングリッシュの古めかしい匂いがプンプンして、より一層戦前の大英帝国の雰囲気を醸し出してくれていた。
2016/09

[ 2014-11-14 ]

人生の黄昏に差しかかった老執事が自動車旅行をしながら、仕事に生きた半生や仕えてきた主の思い出を語る。一見地味なこの小説が極めて高い評価を得て、また幅広い人気を誇っている理由は何だろう。

完全な一人称小説で、邦訳でもスティーブンスの言葉遣いが慎重に構築されている。ここで語られるのはあくまでスティーブンスの目から見たこと・語ってもよいと判断したことだけ。技巧や仕掛けをついつい勘ぐりたくなってしまうのを抑え、まずは虚心坦懐に読んだ。

スティーブンスは古き佳き英国を体現する人物。彼の語りは実直な人柄をそのまま映し、自らの職務への矜持と昔の主人への敬慕が溢れる。しかしそこに感情の氾濫はない。夕陽を受けて鈍く輝く思い出の数々は、すでに色あせている。邸で開かれた数々の国際会議も、ミス・ケントンとの交情も、劇的なところは全くなくあくまで静かにしみじみと語られる。

終盤まではただただ「巧いなあ、渋いなあ」と感心しながら読み進めた。しかし最後の最後に感動の大波が来た。旅の目的地に達し、省察を終えたスティーブンスが静かに流す涙に込められた意味は計り知れない。信念を貫き誠心誠意職務に邁進した。今でも誇りを持っているし後悔もない。それでも「これでよかったのか」という思いが襲ってくる。

三十余歳の作家の視点は驚くほど老成しており、筆力も確か。ただこの小説の滋味は誰でも堪能できるごくシンプルで間口の広いもの。これが本書の最大の強みなのではないか。

[ 2017-06-25 ]

これほど丁寧語が徹底されて、イヤミ感も皆無な文章は初めて読んだ。
自分の恋愛感情も深く押し殺して、最後まで執事としての職務を全うする姿勢に感動した。
AmazonのCEOが心に残る一冊に上げていたので読んでみたけど、一流の人は一流の文学を読んでいるんだなぁ。。。

[ 2017-10-11 ]

書店から軒並みその著作が姿を消している、最新のノーベル文学賞受賞作家から。自分の中では、”百年の誤読”で目星をつけて、受賞決定前に購入しておいたものを、このタイミングで読んでみました、って感じ。実は「わたしを~」に対して、心の底から喝采を叫ぶ、ってほどに好きにはなれなかった関係で、本作を買いはしたものの、何となく後回しにしてしまってました。で、これがまた素晴らしかったのです。最近、「海外文学」ウエルカムモードに個人的になっているせいかもしらんけど、かなり深く味わわせて頂きました。特に何が起こる訳でなく、ある執事の小旅行の模様が描かれているだけなんだけど、その回想を通じて明らかになってくる物語が素敵で。終わった後もしばらく余韻に浸っておりました。

[ 2017-12-31 ]

今年の読み納めになったのは、『日の名残り』。
時の過ぎていくことを感じさせられる時期だっただけに、ひとしお切なさが胸に迫った。

二十世紀前半、ダーリントン卿に執事として仕え、戦後、卿の死後は屋敷ごと、アメリカ人富豪に買い取られたスティーヴンス。
父もまた執事で、執事としての品格に強い執着を持っている。
頑ななまでのプロ意識。

一九五六年、老境に達しつつあるスティーヴンスは、新しい主人のファラディの好意で自動車旅行に出かける。
かつてダーリントン・ホールをともに切り回した女中頭のミス・ケントンに会いに行く。
面会の理由は、お屋敷への復帰を促すこと。
しかし、彼の回想する物語からは、抑圧されたミス・ケントンへの思いがありありと読み取れる。
ミス・ケントンが示した彼への好意を、頑ななプロ意識から拒絶したことへの後悔も滲んでいる。

時代が変わり、自分も年老いて衰えていく。
後になってみればつまらない意地を張り通して、つまらない決断をする―。
誰にでもそんなことはある気がする。
思うようでなかった人生を噛みしめる人の姿は、悲劇的になってしまいがちだけれど、この物語は少し違う。
ミス・ケントン、今はミセス・ベンとの再会の後、バス停で一人泣くスティーヴンス。
通りがかりの老人が「夕方が一番いい時間だ」、人生前を向いて楽しまなくちゃ、と語りかける。
安っぽい救いではない。
何とも言えない味わいのある終わり方だった。

[ 2018-05-02 ]

なんだか思いっきり泣いた後にだけ感じる満足感のような、そんな味わいの一冊。

読書会の課題図書。
今年話題のノーベル賞受賞作家、カズオ・イシグロさん作。1989年。

#

舞台はイギリスです。時代はどうやら、1950年代?1960年代?くらいのようです。
主人公はスティーブンスさんという、どうやら初老の男性で、職業は「執事」です。
つまり、大邸宅に住む大金持ちのご主人様に仕え、その邸宅の運営、大勢の召使や女中たちを束ねる仕事です。
イギリスは、いちはやく資本主義化した一方で、「地主=貴族階級」と「資本家ブルジョワジー」と「労働者階級」という三つの階級が厳然と戦後まで残っている社会の仕組みが特徴的です。
(どうしてかというと、その階級社会を崩壊させるような内乱が起こらなかったからでしょう)
その、「地主=貴族階級」のひとり、「ダーリントン卿」に、ながらく仕えていた訳です。主人公のスティーブンスさんは。

#

お話は、かつてダーリントン卿のものだった邸宅が、いろいろあったようで、今やアメリカのお金持ちの物になっている時代から始まります。
そして、執事であるスティーブンスさんも、邸宅とセットでアメリカ人に販売されたようで、今はアメリカ人のご主人様に仕えています。
どうやらかつての「ダーリントン卿時代」と違い、随分と邸宅の運営はリストラされて、少人数でのやりくりをさせられています。
そのスティーブンスさんが、ご主人様の親切で、数日間の休暇を貰います。そして、ご主人様の車(フォード)で郊外へ旅で出かけます。
どうやらその旅というのは、かつての同僚だった「ミス・ケントン」なる女性と久しぶりに会いに行く旅のようです。

この数日間の、「ミス・ケントン」と会いに行く旅の様子と。

その旅の間に、スティーブンスさんが回想する、これまで数十年間のよしなしごと。

というのが入れ替わり立ち代わり語られて、進んでいきます。
スティーブンスさんの1人称。

この語り口が、絶妙に上手い(ということは、翻訳もとても上手いと思います)。
この上手な感じ、食べやすさ、手ざわりっていうのは、どこかしら、村上春樹さんの小説にも似ています。
とにかくスティーブンスさんの思いに寄り添っているうちに、人物のキャラクターが浮かび上がり、謎が見え始め、哀愁が押し寄せ、サスペンスが生まれてきて、知らぬ間にどきどきしてきます。
こういうの、なんていうか、感性とか云々は勿論ですが、とにかく小説家としての技術力が極めて高い気がします。

#

スティーブンスさんは、長年「ダーリントン卿の執事である」ということに誇りを持って、全身全霊をもって勤めてきたわけです。
「ダーリントン卿」はどうやら、第1次世界大戦に従軍した貴族?(あるいは貴族的な階級の人)であり、第2次大戦までの年月に、何かしらかの政府の公職にもあったようです。
そして、ナチス・ドイツとの開戦をなんとか回避しようと、非公式ながら各国の首相や要人と密会や食事会を重ねて、政治的な活動に貢献してきたようです。
執事であるスティーブンスさんも、そういったVIPたちとの食事会や、宿泊のお世話などに大わらわで、「何か世界の中心に、平和に貢献できている」というプライドを抱いて、結婚も恋愛もせずに勤務してきました。
スティーブンスさんは、典型的な「イギリス紳士」であるダーリントン卿のもとで、典型的なイギリスの執事として、品格と能力を身に着けた仕事人であろうとして生きてきました。

つまりは堅物。
ですが、その徹底した美意識と自己犠牲には、凄味すら感じるものがあります。

そして、その黄金時代を共に戦った女中頭が「ミス・ケントン」だったようです。

そこには、プロとして渡り合い、共闘し、時にぶつかりながら、仕事という情熱の平原をともに歩いてきた者同士だけが持てる連帯感も好意も横たわっていました。

だけれども。
何かがあって、ダーリントン卿はいなくなってしまった。

そして、屋敷は(スティーブンスさんごと)アメリカ人に渡ってしまった。

アメリカ人の主人は、それなりに優しいし素敵だけれども、所詮はダーリントン卿のような「品位あるイギリス紳士」では全くありません。

つまりは、成金が「イギリスの邸宅っていうものを、執事ごと買ってみた」というだけです。

そして。

何かがあって、「ミス・ケントン」は、仕事を辞めてどこか地方に、遠くに、結婚して去ってしまった。
その上、手紙のニュアンスによると、結婚からもう二十年くらい?三十年くらい?を経て、どうやら現在はあまり幸せでは無いようだ。

何があったのか???

スティーブンスさんの独り語りを聴いて、

「へえ~、本物の執事っていうのはそういう仕事なんだあ。なるほどなあ。戦前のイギリスの、名誉と富を持った階級の暮しっていうのは、そういうものなのかあ」

と、ページをめくっているうちに、徐々に引き込まれて行きます。

何があったのか???



初老になったスティーブンスさんは、ミス・ケントンからの久方ぶりの手紙を頼りに、一人旅を続けます。
スティーブンスさんは、もしかしたらミス・ケントンがふたたび屋敷に戻ってきて、一緒に働いてくれるのでは?という淡い期待を持っています。
だけれども、会ったら、自分からそう言って誘うべきなのか、明確な態度は決めかねています。

物凄くゆがんだ形ですが、恋の香りが漂います。

どうなるのか???



(以下、本文より)

怖かったのですよ、見知らぬ土地へ行って、私を知りもしない、構ってもくれない人たちの間にひとりいることを考えますと、とても怖かったのですよ。

人生が思い通りにいかなかったからと言って、後ろばかり向き、自分を責めてみても、それは詮無いことです。

あのときああすれば人生の方向がかわっていたかもしれない---。そう思うことはありましょう。それをいつまで思い悩んでいても意味のないことです。

#

それでも、思い悩むんです。
思い悩んでしまうんですね。

初老になったスティーブンスさんと、ミス・ケントン。

夕方から夜にかけて。日没の頃。日の名残り。
それが一日でいちばん美しい、素敵な時間だ、と語られます。

スティーブンスさんの掌から砂のようにこぼれおちたものたち。
つかめなかった、つかまなかった、「幸せ」のようなものたち。

理屈で言ったら、ぜんぜん救いなんかないんです。

でも、それでも小説を読み終えて、7割の痛みの奥に、ほっとする何かがあります。

痛い思いをして、思うようにいかなかったことは、人生そのものの否定なんかぢゃありません。

なんだか思いっきり泣いた後にだけ感じる満足感のような、そんな味わい、大人の味。美味。

[ 2018-07-22 ]

映画を2度もみているので、読み始めるとアンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの顔を思い浮かべながら読むが、違和感は無い。映画は原作の世界をほぼ忠実に描き出したものだったのが分かったが、映画では分からなかった心の動きが文字になっていて、さらにドライブ旅行の1日目-夜ソールズベリ、6日目-夜ウェイマスにて、と時間と場所が書かれていて、その上で現在と過去を行ったり来たりするので分かりやすかった。また場所も地図で確認しながら読んだのでより物語世界を味わえた。第二次世界大戦の前と後という設定においては、「遠い山なみの光」や「浮世の画家」のイギリス版なのだなあと感じる。

仕事が楽しくなるかどうかは上司を人間的に好感を持てるかどうかが鍵である。その点スティーブンスは過去も現在も恵まれていたと思う。歴史的に業績を否認されようとも渦中においては霧の中だ。新しいご主人へのジョークの技術の取得に向けて、スティーブンスの顔は未来への道に向いている、そんな1956年の空気を感じて読み終わった。

[ 2013-01-06 ]

過ぎ去った日々に思いをはせる、夢をもう一度見る。イギリスの執事を取り上げている。伝統があるが、現代にはそぐわない感じもする。また、今の時代にどのようにして仕事を続けていくのか?本書では「品格」という言葉で表現している。時代は大戦の前後、旧貴族の生活が大きく変化をした時代背景。ダーリントンホール。卿の裏方としての活躍、世界にどれだけ影響を与えたかは良く分からず。ミスター・スティーブンスの執事として使命は主人に尽くすこと、それが品格であると語られる。屋敷を切り盛り、維持すること、主人の命令には忠実であること。執事として、自分を出してはいけない。感情というものを持たない。父に対しては尊敬、死にもあえず。ミス・ケントン、女中頭、仕事は有能である。感情はある。執事に対して、愛情を持つと思われる。30を境にして、結婚することを選ぶ。旧家屋敷をアメリカ人が購入。主人が米国に帰国する時、執事は1週間、休暇を取り、ミス・ケントン(ミセス・ベン)を尋ねる旅行をする。旅行時の回想で、日々が語られる。1人称の語りであるが、ミス・ケントンの愛が感じられる。執事は、この愛を感じ取っていたのだろうか?愛を感じつつも、品格を優先したと考えるべきか?それは最後に示されている。執事はダーリントンホールとともに役目を終えた。品格を伝統を紳士を守るために、愛することをしなかった。そして今は、家敷と伝統を米国人に買われた。自由を重んじる国に売られた。自分を見ていた。それは過ぎ去りし日々の自分であった。後悔はしない、名残なのだ。

書かれた時代背景で、イギリスの斜陽時代か?
男と女の対比であるが、仕事に生きるか生活に生きるかの対比としても受け取れる。それは性の違いとしても描かれる。
名残、自分を許すこと?

[ 2013-06-24 ]

読み終わると、静かな余韻が残ります。
この著者の人物の作りこみ方はやはり見事。
この人ならそうするだろう、という納得がどの行動からも損なわれることはありません。
決して胸躍るような展開はありませんが、夢中でページを進めてしまう魅力があります。
「日の名残り」というタイトルが、この小説にとても良く合っており、極めて良い邦題のように思えました。

[ 2019-06-05 ]

カズオイシグロさんの「私を離さないで」が面白かったので、同作者の作品を探しました。ブッカー賞受賞作だったのでこの本を読みました。

イギリスの執事が語り部となって進む物語。

この半年読んだ小説の中で一番心に刺さりました。
執事の口調が品があって読んでいて心が凛とします。
執事や女中頭、卿のキャラクターが、明記されてはいないのに会話の雰囲気や文体からじわっと伝わってくる。
カズオイシグロさんならではの表現力。

[ 2019-06-26 ]

題名が素敵だと思う。
スティーブンスの執事としてのプロフェッショナルさ。
人ってどんな選択をしていようと、ああだったらとか後悔したりすると思うけど、そのときの自分に自分が誇りをもてているのなら素敵なことだと思う。
誰もが年老いていくわけで、でもそれを受け止めるからこその悟りもあるのかな。

[ 2018-11-10 ]

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[ 2018-09-10 ]

ノーベル文学賞の本というものがどういうものなのか気になり購入。

過去に映画化されており、そちらも高評価。
観てませんが…

イギリス、ダーリントンホールでダーリントン卿に仕えた一流の執事が本作の一貫した語り手。
時代は移り変わり、館の新しい主人となったファラディの提案により、執事スティーブンスは出発する。

旅をしながらスティーブンスはダーリントンホールでの自分の人生を回想する。

執事としての仕事への姿勢、哲学。
主人への忠誠心。
歴史を動かさんとするダーリントンホールでの会合。
そこに集まる要人たちや主人との出来事。
会合の最中に起きる父親の死に向き合うスティーブンス。
向き合っていた彼は果たして息子としてのスティーブンスなのか、執事としてのスティーブンスなのか。
同じ館で共に主人に仕えたミスケントンとのやりとりが「日の名残り」としてスティーブンスの脳裏を巡っていく。

仕えた主人に対する彼の忠誠は、旅先で主人への世界の認識に触れる時試される。

そして、小旅行終わりに、館を後にしたミスケントンと再び逢う時、日の名残りは彼の心を動揺させる。

人としての、そして「地位にふさわしい品格」、持つべき矜持、主人への忠誠心。
スティーブンスの持つそんな特質が胸を打つ。

小説を締めくくる最後のシーン。
海辺の町の桟橋での見知らぬ男との会話。

小旅行によって過去の出来事を反芻し、選ばなかった自分の過去の決定に区切りをつけて、スティーブンスは思いを新たにし、今使えるべき主人へと思考は前進してゆく。


一人の紳士の凜とした姿、歳をとり、過去への思いと戦いながらも、前進していくそんな美しくも哀愁の漂う物語。

言葉にすると陳腐だけれど、人としての品格、ひいては、「地位にふさわしい品格」。そんな考え方も大きなテーマだと感じた。

ようするに、面白かった。

[ 2018-01-15 ]

「結局、時計をあともどりさせることはできませんものね。架空のことをいつまでも考えつづけるわけにはいきません。」p343

スティーブンスは現在の主人から暇を出され、以前いたミス・ケントン(現在 ミセス・ベン)に会いに行きます。その道すがらダーリントン・ホールで開催された重要な外交会議や「理想の執事」に近づくべく仕事をしていた過去に思いをはせます。スティーブンスの胸に去来するものは一体なんでしょうか。

ブッカー賞授賞作。主人に忠実であること=品格ある執事。と思い仕事を遂行していたスティーブンス。しかし、自分が思い付かない事が起こるのが人生の面白みであり哀しみです。その変化にスティーブンスは戸惑い、旅の最中に出会う人々と話すことで「自分の価値観」や「自分が当たり前」がそうではない事に気づくのではないでしょうか。ミス・ケントンと会った後にくる哀しみを和らげてくれたのは、たまたま会った初老の男性のひと言です。哀しくても後悔しても過去は変わりません。「これから何をしていくのか。」変えられるのは自分だけだと思いました。

[ 2018-09-01 ]

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[ 2019-03-18 ]

見えてきた風景を頭の壁にくっきりと刻み、ゆたゆたと旅を続けながら頭のなかの風景画に話しかけ、感じたかったわたしに迫って行く。
スーツが英国の民俗衣装のようなものであるということ、時にネクタイは組織と個人を強固に結びつける短い紐、首輪になること、そんな社会にある当たり前がどうやって形成されていくのか、当たり前って何?という問いの連射で、当たり前の背景が、かすかに視える、硬直化した態度を割る太陽の光を浴びた。
本書は、特有の考えの習慣から離れる旅を提供し、ペンが滑るように流れる時間と真面目に向き合わせてくれる。

[ 2017-12-10 ]

素晴らしいの一言。

ノーベル文学賞発表の前日、カズオ・イシグロさんが選ばれたらいいな〜と何と無く思った翌日ニュースを見てびっくり‼️

土田正雄さんの翻訳が素晴らしいのでページを開くごとに場面場面の風景や登場人物の動向が目に浮かび上がるようだった。

[ 2018-03-31 ]

イシグロ作品初読み。
美しい文章で綴られる老執事スティーブンスの回想。読後は温かい余韻が心の中に残った。
英国の名家の戦前戦後を支えてきたスティーブンスが、かつての同僚と再会すべくひとり旅に出る。
そして道中、のどかな田園風景の中をドライブしながら、これまでの自分の人生や執事としての仕事についての思い出に浸る。。。
実直を絵に描いたようなスティーブンス、自分の感情も押し殺して主人に仕え、ただひたすら執事としての品格について考え追い求める半生だったが、真の意味の品格って何なのか?それは本当に正しい事だったのか?品格にこだわり過ぎたがために気づくことができなかったミス・ケントンの本当の気持ち。最後の数ページ、すべてに気付き衝撃を受けるスティーブンの心の描写が見事だった。
旅先で出会った元同業の男性の言葉が深い。
 -人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。

ジョークが上手くなったミスター・スティーブンスとまたいつか再会したいなぁ。

[ 2017-09-04 ]

執事スティーブンスは、ダーリントン卿に長年仕えてきましたが、ダーリントン・ホールがファラディ様の手に移った後も屋敷に残り続けました。そして、新しい主人ファラディ様の提案により、スティーブンスはイギリス国内をフォードで一人旅することになります。

スティーブンスは旅のなかで、イギリスの田舎の素晴らしい風景や、その土地の人々に出会います。その途中で、ダーリントン卿に仕えていた時代のことを何度も思い出します。

偉大な執事とは「品格」を持っていることであると考えていたり、ダーリントン卿を信頼して忠実に仕えていたりしたことがわかりました。執事目線の小説は初めて読んだのですが、当時のイギリスで世界を動かす重要な会議が開かれており、自分もその手助けをしているような、誇り高い雰囲気を感じることができました。

女中頭のミス・ケントンとの思い出の場面では、スティーブンスが仕事一筋だという印象が強かったです。そこが彼の良いところでもあり、悪いところでもあると思いました。ミス・ケントンの気持ちになると、少し切なくなりました。

旅をしているはずなのに過去を振り返った話が多く、物語を通して過ぎてしまった日々に対しての哀愁を帯びていました。しかし、スティーブンスがジョークの練習に取り組もうと意気込むところなど、笑える場面もありました。

[ 2017-10-26 ]

空気感がすごく良かった。直接は書いていないのに、そうとわかるような表現が素敵だった。
イギリスの少し曇っているような、グレーな色味の世界観が書かれていてすごい…

[ 2013-09-22 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-06-30 ]

土屋さん訳、すっと頭に入ってくる。すごいなあ。夕方が1番いい。人生においても余生が1番いい。そんな風に思えるのがよいなあと思う。
remains =名残り。 残りが名残となるだけで奥深さが全然違うから言葉は楽しい。

[ 2017-06-12 ]

日本語の表現が英語でどうやって表現されているのが気になる時がある。差支えないのではあるまいか、なんて言われても、英語ではどうなってしまうん?isn't itくらいしか分からん。てかこの執事のしゃべり口の原文がどうなっているのか、適当に執事って言ったらこうだよねって、って言って訳したのか。でもやっぱ執事って言ったらこういうしゃべり方だよなー。まぁ戦国武将っぽくもあるけど。
ともあれ実に執事らしい執事というか、まぁ本物なんて知らないんだけど、でも戦国武将とか知ったような気になってる程度に執事のことを知っていて、まぁその執事っぷりは、紳士の国というか、実はいまやフーリガンとかトレインスポッティングとか、明らかに例えが古いけど、腹切り芸者なみに、外国のことなんか良く分からんという自分にとっての昔の英国っていえばこうだよなー感が完璧で、なんだか分からんけど妙に読ませる。

[ 2016-12-04 ]

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[ 2016-08-25 ]

初めて読んだカズオ イシグロ作品。全く予想していなかった文体、ストーリー、内容で一気に引き込まれた。執事という仕事に誇りを持ち、より高みを目指し、Jokeですら学ばなければと考える真面目一辺倒なMr.Stevens. 「品格」という言葉と、そこに思いをいたすこと。同士との和やかな、真摯な議論。仕事を言い訳に、抑えてしまったMs.Kenton への思いと、20年後の結末。
「品格」を、人ではなく、まずイギリスの美しい田園風景に見出すこと。なんて鮮やかなのだろう。
Mr.Stevensが語るように、「最良のイギリスを見る機会」に触れられたと思う。あまり好きではなかったイギリスへ興味が持てるようになった。折に触れ、何度も読み返したい作品。

[ 2012-10-24 ]

生真面目な主人公がせつなく、でも哀れむ気持ちにはならない。イギリスのイメージを濃くしてくれた作品。主人公の執事の気持ちに寄り添ってしまう。主人に仕える執事とできた嫁には共通するところがあるかも。
BSプレミアムで映画「日の名残り」(アンソニー・ホプキンス主演)を見た。やはり渇いたせつなさがあってよかった。

[ 2019-05-17 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-12-16 ]

日本での武士の威厳が崩れて行くように、英国の貴族への評価も移り変わっていく様が、執事スティーブンスが、主人公として、物が経っている。

政界の名士のお屋敷に、有能で、堅物の執事が、大英帝国の栄光が失せて富豪のアメリカ人が、主人になってもお仕えする。

その主人は、自分の帰国の間に、数日間、執事に休みを取らせて、イギリスを観光して来いと、勧めてくれるのである。

品格を持った貴族たち、それに忠誠を誓ったような執事、そして、有能でありながら、自分の思いを言えなかった女中頭が、本の大部分を示しており、過去の英国の讃歌であり、そして時代と共に移りかっわって来た背景が、よくわかる。

長い年月によって、世の中の政治も、風潮も、そして、スティーブンスとミス・ケントンの関係も、変わってしまった。

桟橋から見る秋の夕暮れ 人生が、思い通りに行かなかったからと言って、後ろばかり向き、自分を責めても詮無い事・・・・・
何か真に価値あるものの為に微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで充分だと、、、、

凄く読み易く、そして、時間的な過去への話も、流れるように、執事と女中頭と貴族との会話で、読み取ることが出来た。

[ 2018-05-13 ]

淡々と叙述されていく。どこかに盛り上がりがあるわけでも、思わぬ展開があるわけでもない。もしも小説の価値が、エンタテインメント性で決まるとすれば、この作品の価値は低いだろう。しかし良い。すっと沁み込んでくる。良質な鉱泉水を口にしたような読後感。

[ 2017-10-28 ]

善人だけど独りよがりな主人公・スティーブンスにやや辟易しつつも、読み進めるうちに愛着が湧いてきて、終わり近くの一人でしくしく泣くシーンにはもらい泣きしそうになってしまった。そして不思議に暖かな読後感。最初は単調に思われたスティーブンスの起伏を抑えた一人称がこんなに効いてくるとはなあ。第二次世界大戦前後の英独の関係をもっと良く知っていたらさらに楽しめたかも。

[ 2011-12-01 ]

部活でも仕事でも受験でも
アイデンティティを賭けて何かをやった人なら
何歳でもそれぞれの年齢ごとに得られる味わいがあると思う。
二十年も重版を重ねているのは
単にノスタルジーを刺激するからではなかった。

この本に合わせて
『英国王のスピーチ』を観ると面白いかも。
…というか、たまたま日の名残の読了直後に観たらとても面白かった。
セット鑑賞、オススメです。
この映画の時代は、ダーリントン卿がファシズムに血迷う少し前。
実際にエドワード8世はゲーリングらと親しくしていたそうで
ダーリントン卿みたいな人も実在したのかも。

[ 2017-11-25 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2013-02-12 ]

執事として、そして人間として夕暮れの時を迎えた主人公が
陽が昇っていた頃、つまりは自分が一番輝いていた時代を
振り返るお話。

主人への忠誠心と揺るがない愛国心。英国紳士、素敵です。
物語は終始単調なので途中若干飽きもありましたが、
ラストは感動しました。これがブッカー賞かぁ。

私も夕陽の落ちる時間がとても大好きです。
夕暮れ時を太陽とは反対の存在として認識するか、
それともこれから更に深く濃く熟してゆく闇の時間への
入り口と見るか。

私はどっちもアリだと思います。

[ 2011-12-06 ]

読書家の方から紹介していただいた著作。日系イギリス人による19世紀前半のイギリスが舞台の作品。主人公の老執事が、昔の同僚を訪ねる短い旅の間に様々なことに思いを馳せる。つかの間の人生の小休止だからだろうか、旅の道すがらのちょっとしたハプニングも潤滑油となり、老執事の追憶は堰を切ったようにとめどなくあふれ出す。一流の執事である彼の回想は、執事の何たるか、品格の何たるかということを常に見据えつつ、自分と身の回りの人の経験した出来事を中心に格式ばった調子で展開する。道徳高い主人に全身全霊で尽くし、高貴な精神を貫き続けることの尊さ、そしてその難しさ。時に逡巡し、傷つきながらもそれを体現し続ける仕事人からは、品格を保ち、プロとしての誇りを持って生き続けることの大切さと同時にその儚さを教えられる気がします。

[ 2018-01-31 ]

読み終わってまた深い満足感に包まれた。
執事という、日本の(私の)日常生活からではほぼ想像のできない仕事についている男の独白で物語は進んでいくが、その内容が非常に興味深い。
イギリスの歴史、地理、執事という仕事について、奥深く語られる。すべて興味深かった。
イギリスへ行ったことがないので、想像力をかき立てられた。
また他の作品も読んでみたい。

[ 2017-06-14 ]

階級社会での独立というのは、個人的にとても面白いテーマなのだけど、長い間執事として生きてきた主人公が追い求めた品格は、本当に人としての品格だったのか、人生も終わりへの曲がり角に近い時に出かけた旅の終わりに得た答えは面白かった。
また、善良だが実は自己中自己愛過剰な執事さんを、嫌われキャラにさせずにユーモラスに描いていく辺りに作者の技量を感じてしまった。

[ 2014-05-29 ]

執事スティーブンスの回想。主人公の勤勉でシャイな人柄は、日本人にも馴染みやすい。通勤の合間に少しずつ時間をかけて読んだ。ラスト、「日の名残り」というタイトルに感動する。名残りを惜しみつつも楽しめるような生き方をしたい。

[ 2012-02-15 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2011-04-01 ]

カズオ・イシグロの名を世界に知らしめた初期の作品ですが、今まで読んでなかったのです。2度の大戦を経て没落していくイギリスの姿に、執事として品格を追求してきた人生の最後に、深い失望をさとる主人公の姿を重ね合わせた、哀切で美しい作品。執事という職業の硬い殻に必死にとじこもるミスター・スティーブンスのかたくなさは、読みながら何度も「あなたってひとは・・・」と嘆息してしまうほど。その自制のかたまりみたいな彼の言動が、ほころびのように自己欺瞞を表出させ、やがて崩壊していくさまを、本人の独白のみで描いてみせる文章の技巧は、見事というほかありません。味わい深い翻訳もすばらしい。

[ 2011-02-13 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2012-01-02 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-12-07 ]

イギリス、貴族のお屋敷を切り盛りする責任者 “執事” 。
そうお嬢様の面倒を見てるだけじゃないのだった。
スティーブンスは、理想の執事像を体現する事が目標だったのだろうか。時は流れ主人は貴族からアメリカの富豪に変わり仕え方に戸惑う彼。与えられた休暇旅行にこみ上げるものは何だろう。最盛期だった自分、衰え始めた今、微かな恋心?
空の色が変わる夕暮れ、そこにある日の名残り、暮れても希望は先の楽しみは何かある。

[ 2011-11-16 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2013-10-03 ]

一面に広がる美しいイギリスの田園風景と、スティーブンスの哀愁漂う回顧録が相まって、どこか懐かしくも切ない世界を感じさせる1冊。自分の職業に誇りを持ち、何の疑いを抱くこともなく長年邁進してきた果てに、スティーブンスが自分の人生を振り返り、そこでようやく気付く・・・。スティーブンスの人柄には、イライラしてしまうところもあるが、まっすぐで魅力的な紳士だ。

[ 2011-05-14 ]

再読。
これまでの歳月を振り返りながら旅する執事。
執事ならではの静かで上品な語り口ながらも、どこかユーモラスで、ジョークの返し方がわからなくて困惑する様や、旅の目的を何度も職業上の理由とするあたりなど、思わずクスリ!
最後は胸がキュンと切ない思いに。
郷愁と優しさに満ちた美しい作品だと感じました。

[ 2014-06-03 ]

仕事人間が仕事しかしてこなかったことに人生の晩年で気づく。もう戻れないことに涙するが、悔いているわけではない。その選択を全うしていこうと決意する。グッとくるなこういうの。何も決めないと何も始まらないっていうのはここ2年ぐらいで感じた。

[ 2012-09-25 ]

語り手の老執事は変わり者で、英国の執事という職業にこだわりが強い。誇りをもっているというだけでなく、独自の美学があるのだ。
以前の同僚女性を訪ねて旅に出た彼は、道中過ぎ去った日を回想する。
自分の生き方はこれでよかったのか、今までの自分をどう受け止めていけばいいのか、かつての主人を振り返りながら静かに語る姿が印象的。

人生の黄昏時に、また読んでみようかな。

[ 2013-01-21 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-07-05 ]

ノーベル文学賞作家の代表作。第2次世界大戦直後のイギリス、ベテラン執事スティーブンスがはじめての長期休暇をとって、国内をドライブする。一応、旅の最終目的はあるのだが、たいして重要ではなく、旅の途中、出会いやトラブルがあったり、スティーブンスがこれまでの執事職を振り返ったりする漂流小説。

チャーチルなど歴史上の偉人も登場し、イギリス史に詳しければもっと楽しめる小説だろう。

スティーブンスは旅の終わり、自分の人生が夕暮れに染まりつつあることを知る。体力も記憶力も忍耐力も衰えた。それでも彼は執事として成長しようと誓い、勤める屋敷へ帰る。そんなスティーブンスが執事として新たに得ようとする能力ってのが、ジョークのセンスというのがイギリスらしいオチだ。

[ 2012-04-10 ]

こんなに物悲しい小説をわたしは知らない、というくらい悲しい。盛者必衰という言葉がありますが、栄華を極めたものの衰えた、沈みゆく姿ほど物悲しいものはない。
1950年代末のイギリス。二度の大きい大戦をくぐり抜け、戦勝国として君臨したものの、大英帝国の栄光は失せてしまった。伝統、格式高いダーリントン・ホールの盛衰の物語は同時に大英帝国の盛衰を風刺しているようで。かつては列国の要人を招いて華々しいパーティーや、ヨーロッパ・世界の行く末を担う重要な会議が高潔なる英国紳士の理想の元行われていたのに、大戦が終わった今、スティーブンスを含めた邸宅は富豪アメリカ人のもの。その前提だけでも悲しい、ほんとうに悲しい。物語は旅と同時に進行して、輝かしい日々の思い出が走馬燈のように巡り巡って、旅の終わりの現在の結末に終着する。スティーブンスが敬愛してやまなかった高潔な紳士である主人は、凄まじい流れで移りゆく時代に取り残されてしまった。一生を仕事に捧げたスティーブンスは結局、人間が生きる上で真に大切にしなければならないと今になって感じるものは、もう取り返しがつかない時間の流れの中に失ってしまったと思い至り、日没の時間に不意に涙を流す。
日没はなんといっても、翳りゆく大英帝国の姿。カズオ・イシグロは人間を優しく描くけれども、必ずその中に弱さ、未熟さを含ませる。スティーブンスは執事の鏡で洗練され、品格もある人物のように思われるが、わたしには足りないところもたくさんあったよう思われた。しかしそこが、人間味を感じさせる最も重要なところ。大英帝国の伝統への静かな敬愛の念に満ち満ちているけれども、外国系の血ゆえにどこかそれを客観視できる強さ。こんなに面白くて悲しい小説は久しぶりに読んだ。

[ 2018-02-27 ]

意識高い系執事による品格を追い求めるストーリーです。

かつて英国で社交界の中心的存在だったダーリントン・ホールの執事スティーブンスは、現在の雇用主である米国人実業家ファラディの許しを得て、北イングランドへのドライブ休暇をとる。その目的はかつての同僚ミス・グランドを訪ね、人手不足に悩むダーリントンホールに戻ってくる気はないか誘う、というもの。旅の途中、これまでの執事人生を誇りとともに振り返るスティーブンスですが、読者は彼の静かな口調の中に、そこはかとない違和感を覚えます。

スティーブンス自らの語りで物語が進みます。
自分の心情を吐露しているはずなのに、どこまで本気なのかわからない。
「偉大な執事は、紳士がスーツを着るように執事職を身にまといます」というスティーブンスにとって、スーツを脱ぎ捨てるのは、完全に一人でいる時だけ。
語り口調ということは他人を前にしているということであり、その間はスティーブンスは、自らを犠牲にしてでも主人に仕える執事だからです。

その自己犠牲を尊ぶ彼の執事感がもっとも現れるのが、父の死に際に立ち会わなかったことを思い出す行。
同じ屋敷の中の、ほんのすぐそこの部屋で父が死の床に伏したにも関わらず、設宴での接客を続けたときを振り返るスティーブンスの言葉は、静かな執事言葉にも関わらず、壮絶な「職業意識」が現れています。

「私にとりまして、あの夜はきわめて厳しい試練でした。しかし、あの夜のどの一時点をとりましても、私はみずからの「地位にふさわしい品格」を保ちつづけたと、これは自信をもって申し上げられます。」

「そして、あの夜の私をうらやまぬ執事がどこにおりましょうか」

揺るぎのない断定口調なだけに、スティーブンスの葛藤が伝わってきます。

旅の終盤、ある人物との出会いをきっかけに、その口調に変化が見られる。
執事のスーツに綻びが生じたとも受け取れる変化は、スティーブンスにとって幸福だったのか、救いになったのでしょうか。

「あたし執事さんだから」的な自己犠牲を賛美するでも批判するでもなく、人間としての「品格」に迫る傑作です。
みんなのうたの歌詞に炎上する人もそうじゃない人も、ぜひ読んでほしい一冊です。

[ 2012-04-05 ]

美しく流れる文章、示唆に富んだ内容、人間味のある人物描画、吸い込まれていきます。ブッカー賞をもらうだけあって、作品として素晴らしい。そして、「過ち自体は些細かもしれないが、その意味するところの重大さに気づかねばならない」この一文は物語において重要であり、僕にとっても重くのしかかるものであった。

[ 2008-04-15 ]

映画『日の名残り』もしみじみと感動的な作品でした。ただし映画のほうは主人公である執事の淡い恋愛のほうに重点が置かれていたような印象があります。原作は、むしろ執事が仕える主人の運命(ドイツ指示がヒトラーの敗戦によって責任問題となりやがて没落、屋敷はアメリカ人の手に渡り、執事もそれに伴いアメリカ人に仕えることに)とそのことによって翻弄される執事、そして古き良き伝統や礼節、しきたりといったものが失われていく様子にとまどう執事の内面の動揺の方に重きが置かれています。深く、そしてしみじみと傑作です。

お言葉
▲人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方がいちばんいい時間だって言うよ。▲

読了 2007/8/4

[ 2018-11-18 ]

普通なら痛くて耐えられないところまでゆっくりと静かに案内してくれて、そっと物語から帰してくれる。並の忍耐じゃないなと思う。

[ 2017-10-13 ]

美しい情景とともに、主人公の切ない想いが胸に迫る。哀愁漂うけど爽やか。心が洗われるような読後感でした。

[ 2017-10-09 ]

1989年英国最高の文学賞ブッカー賞受賞作。
30年間、品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスの第一次世界大戦から第二次世界大戦の間を中心とした回想録。
長年仕えたダーリントン卿への敬慕、邸内で催された重要な外交会議の数々、執事の鑑だった亡父、女中頭のミス・ケイトンとのやりとり等々。

「品格の有無を決定するのは、自らの職業的あり方を貫き、それに堪える能力だと言えるのではありますまいか」

翻訳とはいえ控えめながらも力強い語り口が絶妙で、物語の世界に引き込まれる。
一人称の語りにより、徐々に明らかになっていく、ダーリントン卿や女中頭のこと、自らの生き方・姿勢。
なんと形容したらいいのか、余韻の残る作品である。

[ 2012-10-08 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2019-07-08 ]

先の主人の凋落を傍観しつつ盲信的に仕え時代の趨勢に取り残された品格を至上とする執事としての生き方しかしらない男。新しいアメリカ人の主人の登場で自分のこれまでのやり方が通用しなくなり内省するが、主人の象徴する新しい時代にもはやついていくことはできない。主人にもらった休みでこれまでの自分を振り返り、外の世界の新時代の訪れを感じ始めるが、それでも過去を失敗と認めない意地と体面が残る。夕日を眺め隣の老人に穏やかに絆されていくが、彼はこれからすべてを変えるにはすでに歳を取りすぎていることを感じさせる憂愁を残す。

[ 2019-03-24 ]

過ぎた日々の後悔は重くのしかかるかもしれないが、それでも前を向いて歩いて行かなくてはならないと思った。あの時やっていればではなく、今からどう生きるかを考えて生活を送りたい。

[ 2019-04-03 ]

栄光の大英帝国、敬愛するご主人さま、高名なお客さまがたをお招きする美しいお屋敷、華やかだった時代と、自身か偉大な執事たらんと努力した日々…を振り返る執事・スティーブンス。
執事を愛するお嬢様方には必読の書。文章も、翻訳とは思えないほどこなれていて美しい。

[ 2019-02-19 ]

イギリスのお屋敷「ダーリントンホール」の執事として働くスティーブンスが、以前女中頭をしていた女性を訪ねて旅をする。
その間にずっと思い起こすのは、前の主人ダーリントン卿と、執事としての自らの行動と、そして女中頭のミス・ケントンのこと。

品格とは何か
第二次世界大戦前後のダーリントン卿の立場の変化
執事という仕事への誇り
ミス・ケントンに対して「あの時こうしていれば…」という葛藤

随分前に映画を観ていて、アンソニー・ホプキンスが厳格な執事を好演していた記憶がある。

読んでいて、美しい文章とスティーブンスの品格とに、背中がしゃんとまっすぐに伸びる感じがした。

[ 2018-12-08 ]

1950年ごろに執事である主人公が自らの半生を独白する形式の小説
ですますでなく御座います口調はかなり引っかかるものの訳文に文句つけても仕方ない
執事視点な職場でのあれこれ話だが
これが他の国ならともかく
ミステリ小説などのおかげ(アガサ・クリスティのおかげというべきか)で
おなじみのイギリス郊外な感じの舞台であるところが
身近なようでさっぱり想像しがたい背景の味わいな時代もので
明治の小説にも「書生」という存在が出てくるが
「執事」のわかりがたさすなわちファンタジー度の高さはなかなかのもの
そういうわけで21世紀現在の日本から出ずに暮らしている身には
1989年の英文学として出されたこのおはなしを
どこが面白がるところなのか英国で20世紀を過ごしたひとほどわかれないが
小説としては巧みな出来でなるほどな感じ
職場ものでも青春というほど青くなく教養というほど重くなく
人生の夕暮れ喜劇として良い娯楽小説
ニューシネマパラダイスと同じ味わい
むしろ解説のほうが20年前なのにからだからしかたないのか
古すぎて違和感を感じるこんにちきょうこの頃である

[ 2018-10-09 ]

英国名家の高名な人々に仕える執事としての品格とは何か?を価値観として生きてきた主人公。が主人が変わり世の中が変わってきたタイミングで数日の旅に出た際、自分の人生を振り返り自己評価と価値観がグラつき少しずつ変わろうと踏み出す。冒頭からラストまで映画を観ているような気分で一気読み。この本もまた頂きものです。出会えたことに感謝。

[ 2018-08-19 ]

解説に頷いた。 過去を振り返って 一つの原理原則に忠実なあまり、思考停止に 陥っていたのではないかという気づき。そして、後悔 。それでもなお、まだこれから先の日々にベストを尽くすことはできる、と、残日を見ながら思う。

[ 2018-06-02 ]

不器用な人でも、自分の良しとすることを一生懸命やるしかない、ということかな。主人公の執事は職業経験やプライドに従って誠実に語っているのが周りとのコミュニケーションギャップを生じてそれが微妙に粋に表現されていて良い。特に女中頭とのいきさつが、旅の時間が進んでいくとともに明らかになっていくところに妙がある。
最後のジョーク頑張る、のところが健気で素敵なエンディングで好き。

[ 2018-07-26 ]

美しいと感じた本。
文体、描写される風景、主人公の精神、どれもが凛とした一本筋の通った美しさを感じた。

[ 2018-04-04 ]

完璧な主人と完璧な執事。だが読み進めると印象が変わる。仕事は完璧ではあるが、私生活では完璧ではなく寧ろ凝り固まった価値観に囚われて大事なモノを色々と失ってしまう可哀想な執事。変わる時代と変わる主、失ったものと得たもの、得ようとするもの。文章に感じた違和感も読んでいくとそれも無くなった。

[ 2018-06-12 ]

2018.6.12読了
☆4

著者の作品は「わたしを離さないで」に続き2作品目。
「わたしを離さないで」よりは読みやすく、馴染みのなかった執事という仕事やイギリスの文化風習について多少なりとも理解することができた。

主人公のスティーブンスが、不器用ではあるものの愚直なほどに真面目な人柄で親しみを感じた。
雇主がどんな境遇に陥ろうとも、スティーブンスが雇主を信頼し変わらぬ態度で従事する姿が心に残った。


[ 2018-08-19 ]

『おぼんあけ』

カズオイシグロさんのファンになりたいと思うキッカケをくれた作品である。
おぼんあけ。
とある花火大会を跨ぎながら、読み進めた作品。
だから私にとっては味わい深い。
カズオイシグロさんのどこか冷静を保つ空気感が伝わってくる。
が、しかし、とある箇所でアツイ瞬間が通り過ぎる。
そう。
最後のシーンである。

この『日の名残り』は映画化されていて、まず映画としてのバージョンを鑑賞しました。
うーん。
原作のほうが面白いw
すみません。

執事の心の振動が伝わりやすいのです。
小説のほうが。

でも、それでも映画のバージョンも楽しめるのがいい!

今回この『日の名残り』は自分にとって人生でのマストとしての作品になった。
それは、私に読書方法のアップデートのきっかけをくれた作品だからである。
この作品によって、読書することが楽しくて楽しくて仕方なくなった。

もう感謝にたえない。

[ 2018-02-01 ]

1度信じてしまった人を客観視することは難しいし、自分が大切にしてきたことを自分で否定することもまた難しい。

[ 2017-12-14 ]

傑作。自分の中の2017ブックオブザイヤー、ぜひ推奨したい作品です。
主人公で執事のスティーブンスは、自らの仕事に邁進するあまり、主人の過ちも、同僚の愛情にも気づかなかったが、誰にでもあり得ることではないか、と強く感じました。

[ 2014-01-17 ]

 素晴らしいとしか言いようがない傑作中の傑作。 
 物語の舞台は第二次大戦後のイギリス。政界の名士であるダーリントン卿に仕えていた有能な執事のスティーブンは、戦後ダーリントン卿が失脚してアメリカ人のファラディ氏が屋敷の主人となってからも、過去の実績を買われ仕えていた。
 かつてのダーリントン卿の屋敷は各界の名士や国家指導者が集まり、世界の動向を左右するような国際会議の舞台ともなった。それを取り仕切る卿を誇らしく思ったし、執事として陰ながら成功を支えることができた自らの仕事に満足もしていた。しかし栄華は過去のものとなり、何十人もいた使用人も、今ではスティーブンを含めて二人だけとなっていた。
 ある時、主人であるファラディ氏がしばらくのあいだ屋敷を留守にすることになり、好意からスティーブンにも暇を与え、イギリスの美しい景色を堪能する旅に出てはどうか、と提案する。
 最初は断っていたスティーブンだったが、ある女性のことが頭に浮かぶ。その人に会いに行くために旅に出ることを決めた。
 ミス・ケントン。多くの使用人をまとめ、スティーブンととも屋敷の裏方を支えた有能な女中頭。意見の相違から衝突もしたが、お互いの力を認め、尊敬していた間柄だった。


 物語はスティーブンのモノローグという形で綴られている。美しい英国の自然や田園風景、そして地方都市に暮らす人々との心安らぐ交流が語られる。丁寧で気品のある表現から、行ったことがない場所なのに、情景が目に浮かぶ。クラシックカーで旅するスティーブンとともに、風を感じながら帰郷の途についているような気分に浸れる。これはもう圧倒的に文章が美しく上手いから受け取ることができる印象であって、はっきりいって離れ業だ。
 彼はハンドルを握り、前を見たまま昔話を語る。ダーリントン卿との想い出、華やかだった屋敷の喧騒、執事としての心構えを教わった父との確執、そして旅の目的であるミス・ケントンと成し遂げた仕事と、口論の数々。


 執事という職種の方に会ったことも話したこともないが、たぶんこういう口調で、穏やかだけれども知性を感じさせる会話をしてくれるのだろう。


 そしてラストシーンがとてもいい。感動的だ。 
 『日の名残り』という書名に込められた世界観に、もう感嘆の声しか出てこない。

[ 2018-02-12 ]

この本を楽しめるかどうかは、本作に書かれない時代背景をどれだけ把握しているかによると思われる。

それなりに楽しめましたが、風刺作品としての理解はあまり出来ませんでした。知識不足ですね。

[ 2018-08-05 ]

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロの代表作、読みました。
執事が仕えた政界の名士への敬慕と女中頭への淡い想いの想い出を描く、伝統的な英国らしい話でした。

[ 2018-10-02 ]

戦前の旧き良きイギリスを描いた作品、と一言で言えばそうではある。ある意味、清廉潔白で美しすぎる作品。それがイギリス紳士なるものなのかもしれないけど、何というか、もう少し人間らしい側面からも登場人物たちを描いてほしかった、と思うのは浅い読み方だろうか。読み手によっては、違う読み方もあるかもしれない。そういう点では、幅広いファンがいそうな一作。

[ 2017-09-19 ]

公私ともに人生の岐路に立つスティーブンス。
まず、彼の頑までの執事たるものこうあるべきという、職人気質に圧倒された。

女中頭とは、仕事上の段取りから、人選まで、どちらも譲らないもので、口論になることも、しばしばあったけど、好きだったのか。

休暇を取ってスティーブンスは、ドライブ旅行に出かけ、旅先で出逢う人達との交流に乗せて、かつての主人ダーリントン卿のこと、父のこと、女中頭とのやりとりを振り返っている。

読みながらスティーブンスと一緒に旅をしているみたいで、ハラハラドキドキ感が、半端じゃなかった。

夕方がいちばんいいのか。しみじみ、納得した。

2017.09.19読了。

[ 2019-03-23 ]

執事のスティーブンスが旅を通して自身の人生を振り返る
執事の目から見た世界は自分たちとは大きく違い、品格というものを考えさせられる

日の名残りとは夕方を指しているが、これは人生の後半に差し掛かったスティーブンス自身のことも指しているのかも

[ 2019-02-21 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-12-20 ]

翻訳も素晴らしい、静かな優しさと哀愁に溢れた物語。ダウントンアビー みたあとだから、主人公の執事がカーソンさんとダブって見えた。

[ 2018-10-27 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-10-29 ]

ノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロ氏がイギリスで権威あるブッカー賞を受賞したときの作品、という触れ込みに惹かれ読んだ。イギリス貴族の屋敷で執事を務める主人公の目を通して、国運を巡る政治世界の裏側の駆け引きに触れつつ、主人公の歯痒いまでの犠牲的な、ある面では冷徹に見える心情、その忠実さと代償に失うものの価値観に執事の職格を感じさせられる。屋敷が売られ、新たな主人となったアメリカ人から、休暇を得ることで、昔勤めていた女中頭を訪ねていく旅に出るが、道中の出来事と古き良き昔への回想が静かに流れ、再会の場面へと期待が高まり、再会そのものの本作への入れ方には工夫が凝らされ、結末へのつなぎ方は心憎い。土屋政雄氏の翻訳は、本作の良さを十分活かしている名訳である。

[ 2017-10-09 ]

時の人、カズオ•イシグロの作品。Amazon .com CEOのジェフベゾスも好きな本の一つに挙げているというんだからどんなものなのか、ちょっと読んでみようと読み始めた。

そんなふとしたきっかけで本を読み始めることは、今までの自分では決して選ばなかった世界観の本であることが多いので悪くない。今回は主人公はイギリスの由緒正しい名家の老執事の話。彼の今回の旅と、これまでの回想が織り交ぜられながら、落ち着いた美しい言葉と文章で物語は進んでいく。執事のこれまでの人生、仕事、人間関係、今旅しながらの回想、そしてこれから。

長い人生、もしもの瞬間はある。そしてもしもの瞬間を思い起こすこと、それは時間が経てば経つほど味わいは深く、同時に毒も熟していく。人は、もしもの瞬間を味わうことや、その毒に侵されながら、それでも毒を取り除き、立ち直り、またその次へ進んでいく。

これから自分の人生にどれだけのもしもの瞬間があるのだろうか。どれだけ味わい、どれだけ毒を食らって生きるのだろうか。きっと何も正しいことはない。後になって後悔しない選択をしたいだけ。

[ 2017-02-23 ]

内容紹介は、文庫本の裏にのっている通り

文学を読んだ経験自体が少ないせいで
なんともいえないが
読み心地はよかった

ただでさえ、エンターテイメント系の作品でない小説では、読者それぞれの楽しみ方
感じ方があると思うのだが
海外文学となると
その国の、書かれた当時の情勢といったものも
知っていると知っていないでも
全然読み方が変わってくるんだろうなという印象

他人におすすめできるほどの
教養などを持ち合わせていないので
おすすめ度は3にしておく

[ 2016-08-14 ]

映画化されてそれは未だ観ていませんが、
この小説をどのように描いているか、気になります

主人公の仕事に対する姿勢には感服しますが
その気高さとプライドとは裏腹に
こと「人」として見たときの不器用さというか
話のすれ違いっぷりが半端ないです

それこそがこの小説の面白さだと私は思います。
追記:祝ノーベル文学賞 カズオイシグロさん!!

[ 2017-11-28 ]

執事の品のある語り口調なので、背筋が伸びて気持ちのよい文章だった。スティーブンス氏とミス・ケントンの軽い言い争いが面白かった。映画を先に見てしまい失敗したと思った。登場人物のイメージが付いてしまい残念な気持ち。でもいつか再読したいと思ったし、イシグロ氏の他の作品も読んでみたくなった。

[ 2018-01-22 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-11-22 ]

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の名著。
素晴らしかった。
イギリスの田舎の風景が眼前に広がってくるようだ。

執事の仕事はヨーロッパ中にあるものの、真の執事はイギリスにしかいない。
それはイギリス民族特有の”品格”からきているのかもしれない。

[ 2017-11-16 ]

「品格」というキーワードで物語りは進行する。
主人公にとっての品格は「脱ぎ捨てない事」。理想的な執事像を描き、それを身にまとい、人前ではそれ以外の姿を見せない事。「装い」であり「本質=本当の自分の姿」では無い。
この物語の中では、その「装い」を脱ぎ捨てて生身の自分を出していたら、違った(より良い)人生が送れたかもという瞬間が何度か描かれる。しかし、いつもこの主人公は装う事を止めず、その結果、尊敬する主人は間違った道に進み、好意を寄せ合った女性とのロマンスも駄目にしてしまう。
しかし、それは悪い事なのだろうか?本質的に理想通りに成れるのならそれに越した事は無いが、そのような人は稀有だろう。だからといって安易に流されず、理想に近づくためにそれを装い続ける事は厳しく、そして正しい道にも思える。
確かに主人公は幾つかのものを失った。しかし、「装い切った」事によって得た物も大きいように思える。悔悟が無い事は無いだろう。しかしこの物語の最後で、主人公は過去を振り返る事をやめ、そして「冗談」の練習を決意する。新しいアメリカ人の主人にとってより良い執事を演じるために。

[ 2016-01-31 ]

英国貴族に仕える執事のお話。
執事の巧妙な語り口によって、日常ではあり得ない高貴で優雅な世界へと引き込まれる。

[ 2016-01-11 ]

英国のバトラー(執事)が、生涯一度の短い旅の間に、自分の半生を回想していく物語。
貴族の館とそこで働くバトラーは、英国の文化・慣習の一つの象徴と言えるが、それを日本生まれのカズオ・イシグロが取り上げ、精緻な描写でこれだけの長編を書いたことがとても驚きである。この作品が英国最高の文学賞と言われるブッカー賞を受賞したことから、英国人にとっても高い共感を得られた作品であることがわかる。
自分の女中頭への本当の思いに気づかぬまま離ればなれになってしまう個人的な悲劇と、長年仕えたダーリントン卿が後年には対独協力者と評価されてしまう歴史的な悲劇が、主人公の仕事振りそのままに抑揚を抑えた文章で淡々と、しかし優しさと温かさを持って語られていく。
『The Remains of the Day(日の名残り)』の題名そのものの、ほの悲しく、郷愁を誘う作品である。
(2013年1月了)

[ 2017-10-27 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2015-12-30 ]

すごく良かった。
ほんのり感動した。ほんのり切なかった。

スティーブンスの主人への忠誠心とそれに基づく全ての態度、思想はまさしく品格といえるだろう。

スティーブンスの気品ある語り口は大好きだ。
翻訳家の方がすごく良かった。

[ 2018-09-15 ]

英国社会、第一次大戦後の混とんとした英国社会を背景に執事として送った人生を恋愛を含め描いている。読み始めはけったるかったが最後の6日目の夜の章で引き込まれた、

[ 2017-11-09 ]

あぁ。いいものを読んだ。幸せだぁ。
カズオイシグロの作品は、さすがイギリス人なだけあって上品さが漂っている。それに加えて、この作品は、英国執事の語り。品格の海です。
読みながら気分がいいのです。とても上品で、芯があって、美しくて。読んでいると自分も綺麗になれる気がしてくるような。
読書で幸せを感じれるなんて、そうそうない。カズオイシグロにはある。
あぁ。幸せ。

[ 2018-10-29 ]

執事のスティーブンの語り口から、彼の性格が滲み出ていた。彼から見た英国や他国、彼を取り巻く人々(女中頭、主人、父、客人たち、旅行中に出会う人たち)が絶妙に語られて、ストーリーにすぐ引き込まれてしまう。読み終わった後のなんとも言えなさが心地よい。

[ 2016-10-12 ]

途中、体調を崩して入院などしていたので、読み終えるのに時間を要してしまった。

仕事以外は不器用な執事スティーブンス。
私はこれを恋愛ものとして読んでみた。
一人称で語りながら、読者にさえ最後まで恋心を見せないスティーブンスにちょっとばかりイラついたが、これこそ不器用のなせる業なのだろう。

[ 2019-08-15 ]

この1年ほどの間に読んだ本の中では一番のすばらしい作品だった。村上春樹でなく、この人をノーベル文学賞に選んだ選考委員の判断は正しいと思った。村上春樹の作品を全部読んだわけではないが、読んだ本の中に、こんな感動的ですばらしい作品はなかった。
ベテランの執事であるスティーブンスが主人の勧めで骨休めのためにイギリス国内を旅行し、かっての同僚であった女中頭のミス・ケントンに職場復帰を依頼するために会いに行く話。旅行の過程で起こった出来事と、その道中で振り返った過去の回想が記されている。主人公スティーブンスの視点で、彼の人生や生き方がその誠実な人柄そのままに、しみじみとした語り口で描かれている。書かれている内容は、主人公の「執事」という自分の職業に対する考え方や、それを裏付けるエピソード、ミス・ケントンとの間での出来事など。とにかく、一つひとつの場面描写が巧みで、映像作品のように鮮烈にイメージすることができる。とりわけ、父親が亡くなった日の出来事が印象的。
読んでいて感じたのは、主人公はどんな場面でも、「執事」という自分の役割を演じきっていたこと。
自動車のアクシデントで、テイラー夫妻の家に泊めてもらうことになり、その食堂での出来事。村の人たちが大勢やってきて、スティーブンスがひとかどの人物であると誤解するが、スティーブンスは自分が「執事」であることを明かさずに、「主人」であるかのように振る舞う。さてはスティーブンス、見栄を張ったなと思ったが、その後の手記を読むとそうではないことがわかった。スティーブンスは村の人が自分が執事であることを知ったらがっかりするだろうと、そのことを懸念したのだ。この場面でも、スティーブンスは執事として取るべき行動を取った。
ミス・ケントンとの再会で知らされた重大なことに関しては、スティーブンスはもっと早く気づくべきだろうと思った。多分、読者のほとんどがミス・ケントンの秘めた思いに気づいていただろう。いや、スティーブンスはとっくの昔に気づいていたのかもしれない。だが、執事として取るべき行動をずっと取り続けていただけなのかもしれない。
執事にとって「品格」が一番大事としながらも、執事の格を決めるのは主人次第だともスティーブンスは言う。
最後に桟橋で見知らぬ老人が主人公に語りかけた言葉が、この作品を締めくくるにふさわしい。
「夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ」

[ 2015-02-15 ]

カズオイシグロのブッカー賞受賞作。never let me goと並んで彼の代表作と言えるだろう。
僕は、カズオイシグロの作品の良さは、「もののあはれ」という概念が英国文化と結びついていることにあると思っているのだが、本作もそこにアジャストする。必死にやってきたことやベストと思われる判断が、決して最善の結果にはならず、ただ、古くなり消えてゆく。主人公の仕事も恋愛も結局、何一つ成就されず、既に古びたものになり、物語は終わる。英国文化の衰退と、一つの時代が終わりゆく悲しみが止めどなく迫る。
英国のバンドThe Smithsを聞きながら読むと、より一層世界に浸れる。
英国映画のウェルネイズと僕に通じる悲しみが、ここにはある。
2015/02/15 読了

[ 2019-02-11 ]

随分前に映画を見ていたので、情景は全てエマ・トンプソンとアンソニー・ホプキンスで再生された。
「信頼できない語り手」の例としても挙げられる本作。かなり早い段階で主人公の認知にゆがみがあることがうかがわせられる。とはいえ、読み終わった後には誰しも昔の思い出を振り返るときはこうなのでは…という余韻に浸った。

本編ではないが、翻訳者があるイベントが「summer day」となっているのはおかしいとイシグロ氏本人とやりとりして、「sunny day」と変更を頼まれたというエピソードも印象的だった。

[ 2019-09-29 ]

最初は取っ付きにくく、主人への真面目実直な仕事振りと反面ミス・ケントンとのすれ違う心にため息をつき、最終しみじみとスティーブンスの過ぎ去った年月の重さを思った。最後まで読むと題名が味わい深い。

[ 2018-02-04 ]

あのときああすれば人生の方向が変わっていたかもしれない。そう思うことはありましょう。しかし、それをいつもまでも思い悩んでいても意味のないことです。

[ 2019-01-19 ]

(01)
前へ進めない,前に進まない小説でもある.
本書の主人公ミスター・スティーブンスのおそらく最初で最後の長期長距離旅行は,どのような旅程であったのだろうか.設定はおそらく1960年代,ダーリントンのあると思われるイングランドの中央部からコーンウォール半島へは直線で300㎞程度である.日本の本州でいえば東京郊外から伊勢を目指したぐらいの距離であり,当時の交通機関,道路事情からしても,決して長距離ともいえないドライブにも感じる.ヒロインのミス・ケントンまはたミセス・ベンとの再会をクライマックスとして,それが半島のどん詰まりで演じられたとすれば,そこまでの往路に4日を要し,復路は3日,計7日間の旅になったと推測される.またエピローグ的な位置づけにあるウェイマスは,先の伊勢旅行に比せば,伊豆熱海的なところにあって,復路の出発点寄りのほぼ南端にそのロケーションがある.
物語は,主人公の宿泊や休憩など停滞した場所から回想される.回想される年代の幅は50年から30年までのスパンぐらいのミス・ケントンがダーリントンがいた時代が主となり,時に現在の主人であるファラディ様のもとでの近況も語られる.過去の時間への射程は,より遠く,より古いほうから,より近く,より新しい記憶へと下ってきており,その点ではほぼ時系列に並べられたエピソード群からなっているともいえる.
現在のファラディ様から,過去のダーリントンへと飛び,過去のミス・ケントンと現在のミセス・ベンが,この旅の末端であるコーンウォール半島で焦点を結び,再び現在へと帰ろうとする主人公を描いており,往復運動または円環運動が本書の構造には見えている.途中途中の宿や停滞における情景や会話も印象的ではあるが,それはどこかしら過去の風景(*02)にも見える.
こうした停滞感や「またその話?」とでもつっこみたくなるような老人特有の過去のみへの言及という特性は,主人公の自己満足やともとれるような「品格」と相まって,また耄碌した過去の偉人としての主人公の父とのダブルイメージによって,現在の主人公やその舞台となる国土がアメリカや現代の象徴であるファラディ様から暗に放逐されようという危機とも多重に重なり合わされている.

(02)
風景の美しさとは何か.それが個人的な事情にもよることは,本書にも見えている.
国土やその国をなす一部の土地で繰り広げられる情景は,旅人によって目撃されるが,日和った旅人に,あるいは人生の黄昏にあり,危機をおおよそ乗り越えてきた老人によってこそ,美しい風景は見出される.こうした風景の美化,あるいは風景の捏造は,もちろん記憶の美化や捏造とも因果が深く結ばれている.風景は美しくあるべきである,過去は美しくあらねばならない,といったリアルを見誤った観念あるいは信念と,国土と共に練り上げられたアイデンティティの中枢をなす「品格」とは共犯関係にある.そしてミスター・スティーブンスの鈍感が,ご主人様への最高度の配慮と忖度にともなう性能ともいえる.品格は鈍感をともない,美しくないものを鈍い感性によって排除する皮肉な仕組みでもある.
「我関せず」という半意識的な鈍感とニヒルな態度は,主人公の恋愛にも,主従関係にも,対国家関係にも表れている.自らが馘にされそうな危機にも鈍感であり能天気な主人公が,ジョークを有しないゆえに最大のジョークな存在,笑えるボケ役として意識的に描かれているのは,本書の特に優れた品性でもある.

[ 2015-03-23 ]

ブッカー賞受賞作を私如きが良かったよ呼ばわりするのも
どうかなーと思いつつ。

英国の「執事」システムがもうちょっとわかっていると
また楽しめたのかな、と思いました。
ミステリに出てくるジーヴズとかバンターとかは、本業が語られてないんですね~
中学時代に読んだ「エイリアン通り」って漫画に、思い続けた女性とその息子に仕えて続けている執事が出てて、そのイメージくらいしかなくて・・・
今読み中の「リヴァトン館」でもちょっとズレてる気がしてて、そういう本を先に読んだほうがいいかもしれない。

[ 2018-10-25 ]

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[ 2017-12-27 ]

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[ 2014-11-06 ]

この作者さんは非常に丁寧に物語を紡いでいく人ですね
でもすごく読ませる
特にハラハラドキドキがあるわけでもないのにこんなにも読ませる秘密は何なんだろう?

執事としての品格論なんてものが語られるわけだけど、英国の古きよき伝統みたいなものを背景としたこんな議論が結構楽しい
この品格論は本作のテーマにもなっていて、ラスト、人生を振り返って品格の誇りの下に自己を抹殺してきたことに対する自責があり、一抹の光があり、さらに静かで激しい恋の話も添えられ、周到に用意された複線のユーモアとともに静かに幕は閉じられる

素晴らしい!!

いろいろな読み方があると思いますが、私は夢中になって一気に読みました
それほど物語として面白かった
私が老齢にさしかかっていることも一因だと思いますが、作品の素晴らしさという点に疑問なしです

訳もきれいな日本語で良かった、翻訳を全く意識しないで読めました
小説を読む喜び・楽しさを改めて感じさせてくれた作品

[ 2018-01-22 ]

いい作品です。正直、私のストライクゾーンからはちょっと外れていたのですが、ここまで完成度の高いものを見せつけられたらやはり評価せざるを得ないでしょう。
一般的なエンタテイメント、娯楽作品・大衆小説で括られるべき作品とはちょっと毛色が違います。ストーリーの起伏や派手さだけでみると恐らく『忘れられた巨人』のほうに軍配が上がるでしょう。しかし本作には本作なりの良さがあります。それはイギリスの伝統、品格と呼ばれていたものが失われていくさまを、ダーリントン卿の栄光から失脚に至るまで、およびケントンとの出会いから別離までの過程と重ね合わせ、時には可笑しみを交えて―――ケントンとの微笑ましいやり取りであったり、父親やダーリントン卿への過剰なまでの敬愛であったりするのですが―――、静謐な物語の中に折り込むことにより、主人公が抱く喪失感とともに押しつけがましくない形で読者に展開して見せているところにあるように感じました。
本作を読んでいるとディケンズの作品を思い出しました。一人は歴史上の、もう一人は現代のイギリスを代表する作家ですが、何となく物語の雰囲気も似ているように感じられたのは私だけでしょうか。

[ 2019-05-10 ]

その生涯を執事であること、執事を極めることに費やしてきたミスタースティーブンス。英国が栄華を誇った時代は過ぎ、自分の人生を振り返る彼の中にあるのは少しの後悔、そしてこれで良かったのだろうかという不安
「夕方が一番素晴らしい」この言葉を人生にも当てはめて考える彼はそれでもやはり生来の生真面目さでこれからを生きていこうとする。
真面目過ぎる彼は全てに一生懸命で、それが時に気まずい結果となることも。
執事の仰々しい言葉遣いやイギリス独特の回りくどい表現、日本語で自然に書かれていたが原作ではどうなっているのかまた読んでみたい

[ 2019-04-13 ]

日本経済新聞社

小中大
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リーダーの本棚全国農業協同組合連合会会長 長沢豊氏 
度量と先見性の重み学ぶ

2019/4/6付日本経済新聞 朝刊

  実家は山形県のブドウ農家で、東京農業大学の農学部に進学した。











 大学生のころに読んだのが、加藤諦三の『生きる』です。自分には自分の生き方がある。人に惑わされず、しっかりとした自己を持っていなければならない。柳のようにしなやかな発想が必要で、堅い枝はぽきんと折れてしまう。そんなことを学びました。


 自分なりの夢を抱いて人生を歩まなければならないということも、この本を読んで感じたことです。大学では先輩に恵まれ、全国各地から来たたくさんの友人と交流しました。勉強熱心だったとはいえませんが、楽しい学生生活でした。そうした日々の中で、心に秘めた夢がありました。


 自分の先祖は江戸時代、冷害で村の人々が年貢を納められなくなったとき、藩主に苦境を直訴して親子で処刑されました。今で言う農民運動です。屋敷があった場所は神社になり、今も2人がまつられています。父親も農協の組合長をやった人で、地域のブドウのブランド化に努めました。強く意識していたわけではありませんが、何かしら地域の役に立ちたいという思いは学生時代からありました。


  山形県の農業高校で1年あまり果樹園芸分野の農業経営について教えたあと、実家で就農した。


 就農したころに読んだのが、柴田錬三郎の『大将』です。佐世保重工業を再建し、奥道後温泉を開発した坪内寿夫をモデルにした小説です。当時、柴田錬三郎は大変な人気作家で、何か読んでみようと思い、手にとってみたのがこの本です。眠狂四郎など時代物で有名な小説家にしては珍しいテーマを扱った本だと思い、興味を持ちました。


 この本で感じたのは、人間の度量と先見性、人と人のつながりの大切さです。地元のブドウはブランドが確立できていて、まじめに働けばその分所得が増えます。希望を持って就農しました。ただ市場価格には常に波がある。そこで貯蔵庫を造り、出荷を調整することにしました。相場を読み、勝負に出てぴたりと当たるとじつに楽しい。トラック1台で30万円から40万円にもなる。必要なのは戦略です。農家は一国一城の主、大将なんです。


 転機は47歳のとき、地元の山形農業協同組合の常務になったことです。一生懸命やっていた専業農家をやめ、農協で常勤で働くことにしたのは大きな決断です。農協活動に人生をささげようと決めたんです。どうすれば農家の所得を増やすことができるのか。重責がのしかかりました。


 そのころ読んだのが、五木寛之の『大河の一滴』です。一滴のしずくが集まって川になって流れ、大海へと注ぎ込む。人生ははかない。でも一滴のしずくにすらなることなく、終わりたくはない。組合員のために汗を流すべきだ。自然とそう思うようになりました。


 常務になった年は複数の農協が合併した直後で、非常に厳しい決算になりました。財務上、処理すべきことがたくさんありました。にもかかわらず、職員の考え方が保守的で、今まで通りのやり方を続けようとしていました。「このままではつぶれる」と思い、職員を集めてはかなり厳しいことを言いました。あまり好かれた常務ではなかったかもしれません。


  全農の会長になった後、ある経済人の紹介で京都大学の山中伸弥教授と会食する機会を得た。


 身構えてしまいましたが、お会いしてみると話し方が柔らかく、とても謙虚な方で、リラックスして接することができました。『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』という本も読んでみました。研修医のとき、厳しい指導医から「ジャマナカ」と呼ばれてもめげたりせず、しっかりとしたビジョンを持って研究を続け、ノーベル賞を受賞された。自分も組織のビジョンを発信していますが、組合員と農協、そして歴史に対して謙虚であらねばならないと思っています。


 いろんな分野の本を読んできましたが、思い出すのは生き方に関わるものが中心です。そしてふり返ってみると、どれもそのときどきの仕事につながっているものばかりですね。


(聞き手は編集委員 吉田忠則)






【私の読書遍歴】




《座右の書》


『大河の一滴』(五木寛之著、幻冬舎)


 


《その他愛読書など》




(1)『大将』(柴田錬三郎著、講談社)
(2)『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』(山中伸弥著、講談社+α文庫)
(3)『生きる』(加藤諦三著、大和書房)
(4)『ローマ人の物語』(全15巻、塩野七生著、新潮社)。山形農業協同組合の専務のときに読んだ。ものすごく長かったので、年末年始に時間があるときに集中して読んだ。読み切るには時間と体力が必要だった。近代国家の原点はギリシャではなく、ローマだということを知った。
(5)『日の名残り』(カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳、ハヤカワepi文庫)。登場人物のスティーブンスという執事を通し、ちょっとしたしぐさや食事の仕方を含め、自分が仕える相手を理解することの大切さを感じた。どうすれば組合員に喜んでもらえるかという自分の課題と共通だと思った。




 ながさわ・ゆたか 1950年生まれ。2017年から現職。山形農業協同組合の会長、山形県農業協同組合中央会の会長などを兼務している。


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[ 2014-02-22 ]

 スティーブンスの後悔に共感し、影に徹する優秀な男だと思われていた彼の過ちと悲哀に胸がつぶれる思いだった。淡々とした日々の回想録のような序中盤から終盤になると抑えられた文の意味が分かる。彼の状況への理解が進むにつれて彼の過ちに気付くのだ。

[ 2014-02-26 ]

執事が好きなら読んだ方がいい、と勧められて読み始め、気づいたら読み終わっていました。
読み始めの頃は職務を完璧にこなす、今時ありがちな執事像でしたが、読み進めるうちに、大きな失敗もしているし、人生において取り返しのつかない過ちも犯していて、決して完全ではなかった、ということに気づかされていく。
序中盤でスティーブンスの恋愛に関する描写があまりにも少なく、この人は恋愛をする気がない、もしくは諦めているのかな?と思いましたが、最後にうっすらと述べてあり、救われたような、むしろ残酷なような、複雑な気分です。
とにかく人物描写が豊富になされていて、序盤こそ退屈でしたが、引き込まれるような面白さがありました。

[ 2018-01-24 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2014-02-15 ]

歴史的名作だと名高い本作であるが自分には合わなかった。英国の上流階級の歴史や文化に興味がないと楽しめないと思う。スティーヴンスの固執する品格やら仕事への姿勢にも共感が抱けなかったからだろうか。

[ 2017-12-02 ]

物語としても読めないこともないけれど、イギリスの古い文化を褒めたたえている話で、媚を売ってるような感じもしたところが残念。

[ 2017-04-10 ]

執事と女中頭のきゃっきゃうふふなのかなと思いきや、よくわからんけどグイグイ読んでしまった。多分、とても文学。

[ 2015-11-18 ]

とても良かったです。第二次世界大戦から10年経過したイギリスでの、ある執事の独白から物語が始まります。
しかし、この作品はイギリスに関する知識、歴史に関する知識、イギリス人の国民性など、沢山の知識がないときちんと理解できないかもしれません。もちろん私は上記の知識が皆無に等しいので、あとがきを読んでうっすら理解できたかな…?ぐらいです。なので、星4つです。もし、私に上記の知識があれば、星5つでは足りないところなのでしょう。
それでも、物語の中にある情緒やセンチメンタリズムは誰にとっても普遍なものであると思います。それをほんの少し感じられただけでも、読む価値があると思います。
映画化もしているそうなので、是非見てみたいです。

[ 2018-02-27 ]

国の勢いとして、この頃のイギリスと今の日本を重ねながら読んだ。執事が自分の職業に忠実であろうとしながらも、奥底には別の気持ちを抱えながら最後は思わず涙ぐんでしまう所で、題名の意味が染み込んできた。
読む時期で色んな味わいが出てくるような独特の物語であった。

[ 2014-12-20 ]

どう咀嚼し、どう評すれば良いか。

メッセージが多様で、物語りの切り抜きに一つ一つ感銘を受ける。しかし展開は恐ろしくゆったりと、一人の執事の語り口調で回想を挟みながら綴られる。雇い主を通しての政治的なメッセージ。忠誠心とは何か。職務とは何か。民主主義は、どうあるべきか。一人の人生として、何を標榜し、生き抜くのか。執事が記憶を辿り、過去の同僚を求め、束の間の旅に出る。そこで出会う人々。

人生とは何か。答えはないが、ただこの小説を読んで言えるのは、日の名残りのような、人生の晩節こそが味わい深く、過去の出来事に意味を与えながら尚、浸ることの出来る、時間なのかも知れないという事だ。

一人の等身大の人生に、こだわって生き、振り返り、味わって。そんな生き方も、悪くないのではないだろうか。

[ 2015-01-25 ]

大屋敷に仕える初老の執事が「人生の夕方」にさしかかった頃、自分のこれまでの過去を回想する旅に出ます。

敬愛して仕えたダーリントン卿は戦後連合国加担の汚名を着せられ、人々から忘れられてしまいました。
女中頭との仲はちょっとした行き違いから壊れ、修復できないまま終わってしまいます。


執事がもう少し早く卿に進言していたら?
女中頭の気持ちにもう少し早く応えていたら?


執事はおそらく道を誤っていることを薄々気がついていたに違いありません。

しかし、彼は自分の信じる「品格」という言葉に縛られるあまり、一種の思考停止状態に陥っていたようです。


失くしたものはすでに帰ってきません。
彼が盲目的に信じた「品格」も、旧時代の遺物として忘れられていくようです。
そこに残るのはかすかな日の名残りだけです。


執事の独白と、歴史的事実が絡み合っていく描写が上手く、楽しめました。

[ 2018-01-14 ]

執事の視点から見える世界が、独特の感性で描かれていて、ぐいぐいとその世界観に引き込まれる感じ。
恋のチャンスを冷静に切り捨てて、でもそれを知らずにいるのが切なく、でもどこか温かい感じさえする。恋も愛も知らずチャンスも逃した孤独な人と、単純に見ることは出来ないなあと思った。
最後、老人が残した言葉がまた良い。

[ 2015-02-06 ]

同名の映画は数回見ました。舞台はイギリス貴族の屋敷。そこで働く人々を取り仕切る執事が語り手となり、第二次世界大戦前後の屋敷の人々を描く小説です。カズオ・イシグロの作品は所々に曖昧さ、謎が仕掛けてあり、時に語り手の言葉の裏を推理する必要もあります。頭を使いたくないという人は映画の方をどうぞ。N先生のオススメより

[ 2018-01-05 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-11-21 ]

ノーベル文学賞受賞者の作品

難しいかと思っていたが、読みやすい作品だった。
読了後は、自分も旅をしたような気持になった。

[ 2018-03-17 ]

何度も読みたい本。回顧と現在の絡み合いも、個人と世界の関わりも、全て含めた世界の在り方が、せつなくせまってくる物語。

[ 2017-11-20 ]

執事というのは英国にしかないとは知らなかった。
映画などで知るその人は、大きなお屋敷に仕えている実直そうなおじいさんだが、格式高い家柄の執事はそれなりの品格がなければならない。
が、その品格とは何なのだろうと、考えさせられる作品だ。

Mr.スティーブンスは、執事の皮を脱ぐのは自分の部屋で一人になった時だけと考え、どんな時も感情を表さず、主の命令を完璧にこなし、自分の意志や意見は余計なものと排除して生きてきた。
それが執事の品格と信じていたが、その結果、女性からの恋心にも気づけず、主が間違った方向へ向かっても諫めることもできなかった。
そして、主も亡くし、自身も黄昏を迎えた今、屋敷の付録のようになって別の主に仕えている自分を見つめている。

執事としては最高の人生だったかもしれいが、人間としてはどうなのだろうと考えさせる。

でも最後に出会った男が、いいことを言うね。
過去を思って涙するのではなく、前を向いたらいい。
黄昏はこんなに美しいのだから と
そして彼が前に向かって歩いて行くところがよかった。

[ 2017-11-24 ]

「ダウントン・アビー」の高尚ver.なんて言ったら双方に怒られてしまうかしら。
秘書という仕事柄、執事には若干共感を覚えるのだけど、母親が
「あなたには面白くないかも・・・」
と言っていたので、もっと年齢を重ねればさらに面白いというか、身に染みる部分があるのかもしれない。

[ 2018-01-26 ]

「夕方は一日でいちばんいい時間」

人生の夕暮れ、ひとつの文明の夕暮れ

主人公はひとつの道を極めようとひたすらに努め、そのことに誇りを持った人物。
なのに、振り返った時に見えるものは、後悔なのか悲哀なのか。
それでも、太陽が西に沈みいく時は美しい。

[ 2016-01-11 ]

かつてイギリスの名紳士に仕え、今はアメリカ人の元で執務をこなすベテラン執事が数日間の休暇の中で巡りあったイギリスの風景、人々、かつての同僚との再会を通じて自らを振り返る物語。執事であるスティーブンスが屋敷の中(世界を動かす車輪の中心)で完結していた自分の世界から一歩出て、イギリスの風土に心を打たれつつも出会う人々とのやり取りから、世界はもう別の姿を見せていることを実感する。そういった心の揺れ動きから、これまでの自分の行いは執事としての「品格」に基づくものであったと思い込んでいたことが、実際は人としてのあるべき姿から外れたものであることを自覚する。もはや取り戻すことのできない数々の過ちを自覚したスティーブンスは、旅の終わりに出会う美しい夕暮れに涙する。帯にあるとおり、そこにはただ静かな感動がある。

[ 2017-11-09 ]

http://133.52.131.151/opac/opac_link/bibid/TB90321926

(推薦者:経済 吉川 宏人先生)

[ 2018-02-01 ]

屋敷の外の世界をほとんど知らず、「これだけの執事の仕事はなかなかできない、」とか、「あの人は上品だ(上品でない」とか、チマチマした執事のこだわりにイマイチ興味持てず、女中頭との意地の張り合いもあまり読みたくないものだった。と思っていたら、いつの間にか女中頭の部屋で毎日ココアを飲み率直な業務打ち合わせをするうちに心が通うなんて、人間はおもしろい。

[ 2019-02-13 ]

意図せずナチに協力してしまって戦後失意のうちに亡くなったかつての主人の執事としての仕事を通して、人間の品格とは何か、という問題を語った作品。自分のおかれた立場を完璧にこなそうという向上心が大事だと思った。日本語訳が俊逸。

[ 2018-01-27 ]

すごく面白いというわけではないけれど、クライマックスに向けて後半はそこそこ盛り上がります。パラレルワールドに言及したミス・ケントンの告白に触れ、夕陽を望む桟橋で涙する主人公が残りの人生の展望を見い出すラストシーン!

翻訳本らしからぬ読み易さも相まって、ブッカー賞受賞の名著をなんとか読了することが出来ました、ホッ。(^^) /

[ 2016-01-17 ]

ダウントン・アビーを見ているので英国執事の雰囲気は掴みやすかった。世界史の知識があればもっと面白く読めそうだが、主人公スティーブンスの気の毒なほど真面目で奥ゆかしい性格、それ故の悩みや苦悩だけでも十分読みごたえがある。
理想とする「品格のある執事」を目指し、仕事のためだけに、ひたすら身を削って生きてきたスティーブンス。自分が輝いていた時期が過ぎ、切なく人生を振り返る中で浮かんでくる、自分への誇りや後悔、これでよかったのかという疑問は、何かに懸命に生きていればいつかは誰もが感じることなのかもしれない。全体が静かで美しい、忘れられない一冊。

[ 2016-01-30 ]

英国執事の話。スティーブンスはダーリントン卿から米国のファラディに仕え先が変わっているが、旅をしながら、かつてダーリントン卿に仕えていたころを思い出す。
英国ドラマ「ダウントンアビー」を見ているので、執事の雰囲気や環境などは伝わってきた。もし見ていなかったら、読み進めるのをやめたかもしれない。
立派に執事として勤め上げた父親との関係、ミス・ケントンとのお互い仕事においてプロフェッショナルを目指す会話のやり取り、品格とはなにか、国家間のやりとり、しかし、自分の意見というよりも、いかに主人にサービスをするか、主人に仕えるかということに重点を置いていたスディーブンスの人柄がうかがえる。
途中立ち寄った村で侯爵と間違えられたこと、ミスケントンは幸せに暮らしていたことなど、旅で起こったこと、気づきなどどれも丁寧に語られていた。

[ 2014-04-25 ]

ブッカ―賞受賞作品とのことで期待して読むが、イギリスの歴史に疎いためか、それほどの良さは伝わってこなかった。
前半は回想や執事の品格論が淡白に展開されるが、後半に主人公の生き方に幾つもの矢が放たれる。電飾で飾られた桟橋を見ながら涙する主人公の、品格はあるものの己の無い生き方に、哀愁と悲哀を感じた。
海外での会議後のディナーの意義やホテルで会議を開くスタイル、ホストの心構えなどは勉強になった。

[ 2018-06-17 ]

ノーベル賞作家の作品はつまらないだろうと思うのは私の全くの偏見だった。読後は余韻が胸に広がりすぎて、その広がりを持て余してしまい、最後は目からあふれてしまった。なんとなく泣きたくなったのだ。悲しかったわけではない。スティーブンスが眺めた美しい落日の風景が私の目にもまざまざと浮んできたからだ。
読み始めてすぐ「ダウントンアビー」を観ていてよかったと思った。スティーブンスの語るお屋敷は私の中ではダウントンだった。テレビを観ているときよりも、さらに深く屋敷に入り込めた気がした。

[ 2017-11-04 ]

 品格ある執事の道を追求してきた主人公が旅を通じて、これまでの半生を振り返る。

 執事の世界にほとんどというか全く縁がないので、地味ではあるが、かなり責任が重く、そして品格が求められる厳しい職業であることがよくわかりました。

 国際情勢が不安定な時代に外交会議を裏で支えるという重責を担っていた主人公の品格はやはり素晴らしいものだと感じました。

 タイトルの意味も最後の場面でしっとりと心に沁みてくる感じで終わり、自分もこれからの人生の日の名残りを少しずつ味わっていきたいと感じました。

[ 2017-11-09 ]

遅れ馳せながらのカズオイシグロ。執事の回想をここまで読ませるとはね。胸に染みる小説で読後感もなかなか。

[ 2018-04-12 ]

人生 だれしも 一度は、味わうだろう 後悔。でも 人間 それは当たり前であると思った。 その時 その時 一生懸命 行きてれば なおさら 沢山のことは 見えてないのが人間なのだと思った。人間だから当たり前。そんな事を この小説から感じた。みんなある事だから そこで 後ろを向く必要はなく 前を見てれば良しってことなのだろう。

[ 2013-01-05 ]

スティーブンスの丁寧な語り口で綴られる、古きよき日々の記憶。

品格ある執事として、ダーリントン卿に仕えたスティーブンス。「品格ある執事」とは、どういった存在か。

「品格」とは、「職業的ありかたを貫き、それに耐える能力」 というスティーブンスの言葉が印象的」


ゆっくりと、前を向く姿。今を生きようとするスティーブンスがとても魅力的。

[ 2018-02-09 ]

世間的にこの本が高い評価を受けているというのはそれとして、あくまで自分がこの本を楽しめたか楽しめなかったかと言う点においては…再読はないかな。
執事としての彼の意識姿勢は気高く、彼の執事としての覚悟や心構えには頭が下がる。文章も細やかだけれど…うーん。大衆的ではない、と思ってる。合わないんだろうなあ。ただ、良い読書体験にはなったと思う。

[ 2018-12-06 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2016-02-16 ]

イギリス貴族の没落、アメリカ富豪の台頭。執事の品格へのこだわり、身近にあった愛に気づけず。何か哀愁感じるラストでした。

[ 2015-08-02 ]

イギリスの老執事スティーブンスの過ぎ去りし日々の回顧録を中心にした物語。

上品な語り口で、スティーブンスの言動の端々で本人の生真面目さが伝わってくる。
ときにはクスリと笑ってしまうくらいの実直さ。

品格とは。を追求しながら過ごした懐かしき日々に想いを馳せて、叶うことのなかった女中頭への淡い気待ちや戻らない時間の切なさが静かに沁みた。

ここまで美しく上品な物語を書き上げるなんて。

[ 2017-11-05 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-03-27 ]

『あのときああすれば人生の方向が変わっていたかもしれない ー そう思うことはありましょう。しかし、それをいつまで思い悩んでいても意味のないことです。

私どものような人間は、何か真に価値あるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのような試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとすれば、結果はどうであれ、そのこと自体がみずからに誇りと満足を覚えてよい十分な理由となりましょう。』

今の価値観からすると共感できないことも多いが、品格のある執事を目指すスティーブンスの内面がよく描かれている。ただし、見られることを前提にした日記のスタイルなので、本当の彼の内面がどうなのかは、彼の周辺の反応から推測するしかなくて、そこんとこを考えさせられるのが面白い。

[ 2018-02-24 ]

主人公の執事という仕事に対する姿勢、思い、現代でもあてはまる人や職業があるように思う。仕事人間のような人が日の名残りのような年代を迎えて読むと身につまされる部分もあり、影響を受けそうな1冊。

[ 2013-10-29 ]

イシグロ氏は本当に哀愁や余韻の残し方が絶妙だと思う。
読了後に抱くこの小説のイメージはまさに日の名残りのような切ない哀愁だった。

主人公である語り手の丁寧で神経質な言葉遣いがなんとも執事を貫いてきた男の人生観や考え方、性格を伝えてくれる。
繰り返される「執事の品格」や仕事たるやの話に、そんなに仕事や品格が大事なのかと問いたくなる。
彼が職業人として一流なことに代わりはないのだろうが、生き方としてそれでいいのか…?
生きることや仕事とは何かについて考えさせられる作品だった。

[ 2015-03-29 ]

人生の分岐点を振り返る老執事に、いたたまれない気持ちになりつつ読む。でも読み終わったらすがすがしい気持ち!

[ 2015-08-26 ]

ダウントンアビーを観てから執事の仕事の概要はわかっていた。客をもてなすことに細心の注意を払い気を抜くことがなく、主人には常に忠実であった。このことは本を読むのにとても役立った。また、イギリスの貴族が政治に関わっていたということも知った。


スティーブンスは執事の仕事にすべてを捧げていた。でもダーリントンの主人がアメリカ人のファラディに変わり数日の旅に出て昔の女中頭の女性に再会し彼女が彼を慕っていたことを直接聞き、今までの自分の歩んできた人生を振り返り涙する。一緒に働いていた時、彼女と自分の気持ちに心の片隅で気が付いていたにもかかわらず、気づかないふりをして仕事に専念してきた自分の人生への後悔の気持ちもあり、主人への敬慕もあり、懸命に仕えてきたことに対する誇りもあり、過ぎ去りし日々を旅の終わりに振り返っての涙だったのだと思う。


執事の仕事を完璧にこなし、主人のすることを信じて疑うことなく、そこには自分の考えや私的な生活はないと言ってもいい。新しい執事であるアメリカ人のファラディに通じるジョークを勉強しようとする彼に何か悲しさを感じる。最後まで有能で品格ある執事として人生を終えようとする。それは素晴らしいことでもあるけれど、人間には遊びの部分も必要だと感じる。他の人生を選んだら?と言ってあげたい気持ちになった。

[ 2014-10-06 ]

スティーブンスの執事としての矜持に感動。
イギリスの田舎にいきたくなるほど、景色の描写がよい。
日英どちらのタイトルも美しい。夕方はマジックアワー。

[ 2014-08-15 ]

仕事では悪名高い貴族に仕え、私生活では自分に好意を寄せてくれて、なおかつ自分も好意を抱いている相思相愛な女性がいたのに、結ばれなかった、という事実だけみればとても悲しい話だけど、穏やかな語り口調だからか、そんなに悲観さを感じない。

スティーブンスはこんなにも自分の気持ちを圧し殺して、仕事に打ち込んで、ミス・ケントンへの恋心も抑えていたけれども、スティーブンスが誇りに思っていた、執事として尊敬していた父も、どこかで執事というスーツを誰かの前で脱いでいたからスティーブンスが生まれているのに、その事には思い当たらなかったのか?という疑問がわいた。

それにしても、この人は!と思った男に尽くす!という心意気、そしてやりきったスティーブンスの意思力行動力の強さはすごいと思う。
一人旅を通して、自分のことを省みたり、新たな人や価値観の出会いがあったりして、最後屋敷に帰ったら新しい主人のために、ジョークの練習をしようと、前向きになっているところから旅の効能もすごいと思った。

印象に残った言葉
350ページより…いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。…いつかは休むときが来るんだよ。…それでも前を向きつづけなくちゃいかん。…人生、楽しまなくっちゃ。

[ 2017-11-06 ]

長くイギリス名家の執事を務めてきた主人公が、新しい主人である米国人に与えられた休暇を、これまた主人から借りたフォードに乗って地方を旅する。
その間、執事一筋に生きてきた過去を思い起こし、様々な思いに浸る。
旅の最後には長く一緒に働いた女中頭とも再会する。
一流の執事や女中頭は、休暇もろくに取らず屋敷運営にあたるばかりか結婚すら難しいとは自分には向かない職業だ。

[ 2018-05-09 ]

ノーベル賞を授賞された筆者の作品を読みたくて、英国でブッカー賞を受賞したというこの作品を選びました。

1950年代の英国でのお話。
品格ある紳士的執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、現雇い主に薦められて一人旅に出る。
その間で出会った人々と共に執事人生を回顧する。

海外の作品にあまり慣れなくて、読み始めはなかなか入り込まれませんでしたが、今までに出会ったことのない独特な上品さのある作品でした。
二つの大戦の間に邸内で催された外交会議、偉大な執事でもあった父親との別れや、女中頭への淡い想いなど…。

最終日は、海辺の町の夕暮れの場面で
「夕方が1日でいちばんいい時間だから残りの人生を楽しむ」「その時間は、人間どうしを温かさで結びつけるジョークが必要」
そう感じたスティーブンスは、これからはジョークの技術を開発する為に更なる熱意が必要だと…。
上品で真面目な執事の性格が反映されている言い回し(訳者の技量とも言えますね)が笑えました。
映画化されているとのことで、こちらも観てみたいと思いました。

[ 2019-07-13 ]

『私を離さないで』と同じく、イギリスの情景が物語に独特の彩りを加え、今作では歴史や文化が物語の深みを増している。

愚直な男の述懐を読みながら、徐々に切ない気持ちが込み上げ、打ちのめされる。そして、自分のこれからの人生が眼前に虚無となって広がるような不安と、頭に浮かぶ夕刻の美しい情景にいつまでも胸を揺さぶり続けられる。

[ 2012-09-10 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-10-28 ]

ノーベル文学賞を受賞したということで ミーハーにも手に取った1冊

「私を離さないで」はドラマで観ただけだったが、結構 衝撃的な内容だっただけに ちょっとどぎまぎしながら読み始めた。

品格のある優秀な執事である主人公の思い出を綴りながらの旅・・・・・

読みにくい。執事という職業に合わせた訳がこれほど丁寧で、謙譲語、尊敬語満載で1人語りにはむかないことばだとは。
もちろん 主人公の性格や仕事ぶりを大いに伝え、登場するダーリントン・ホールを訪れる客人達の重要人物度は十分伝わっり、その時の接客態度のすばらしさはイギリスの執事の真骨頂なのだろうけど。

まだまだ 時代をつかみ切れていない若輩者の私には大きすぎる1冊でした。

ミス・ケントンの主人公への恋の裏返しの突っかかり方は可愛かったです。

[ 2012-11-30 ]

抑制された文章を用いて描かれる英国。
失われた伝統と格式とはいうが、皮肉たっぷり、停滞感たっぷり。

とにかく主人公の思考停止状態なところにはイライラさせられるというか、全ページを使って風刺しようとしている感じ。なかなかここまでの徹底っぷりにはお目にかかれないと思う。良いものを読んだ感が強かった。

[ 2017-02-26 ]

かつての、イギリス名家に仕えた、一流執事が主人公の話。
まじめな執事によって語られる雇主との出来事や会話や日常生活がとても心地よく感じられた。いつかまた読み返したくなるだろうなと確信させる作品。

[ 2019-09-14 ]

オーディブルで読む。
かの時代の英国。
ひたすら一人称で語られる。
ゆったりした時間の流れ。
原文で読まないとダメなのかな。

[ 2012-07-09 ]

一歩進んで、右、左、ウィット、一歩進んで、右、左、ウィット、
全ページ『うるせえええええ!』と叫びたくなる英国もの。
星五つに値する素晴らしい小説です。

[ 2014-12-23 ]

最初は、語り手である執事が「言い訳がましすぎる」「些末なことを気にしすぎである」とイライラしながら読んでいました。旅行の最中に旅のことにはあまり触れず、思出話ばかりを時系列バラバラに差し込んできおる…と退屈に思っていたものの、やがて彼の思い出の屋敷とそこにいた人たちの物語に引き込まれていきました。執事の言い訳がましさも物語を構成する重要な要素だったんだなと納得。
今は亡きご主人様に全幅の信頼と人生を預けた執事。とても執事萌えしました。アメリカ人の新しいご主人様のもとで、スティーブンスさんは人生を続けていくのでしょう、それもまた萌え。
作中で、品格は生まれ持った人だけが持ちうる、と言った人がいました。私はジョークもその類いのものだと思うので、スティーブンスさんがジョークそのもので新しいご主人様を楽しませる日は来ないのではないかと思いました。だけどスティーブンスさんは、品格もジョークも向上心を持って取り組むことが大切だと言うでしょう。何事も持ってないから無理だものって諦めてはだめね。と思いながら本を閉じました。いい本でした。

[ 2012-05-15 ]

とてもおもしろかった!

これまでの人生を振り返る老執事。
彼の回想という形をとって、第一次世界大戦前後のイギリスの緊迫した空気、風俗が語られます。

すごく物悲しいんだけれど、ユーモアに溢れていて温かいストーリー。

可笑しいまでに生真面目な執事スティーブンスがとにかく愛すべきキャラクターで、彼のこの先の人生に幸あれ!と願わずにはいられませんでした。

[ 2014-07-20 ]

丸谷才一氏の解説では、当時の斜陽(その後サッチャー女史によって盛り返すのだが)と云われた大英帝国の斜陽たる理由を浮き彫りにしたもの、ということだが、私はある執事の人生を通して、職業についての矜持のようなものを描いたのではないかと思うのだが。
確かにその矜持が自分にとって意味のあるものだったのかどうか、大きな疑問を主人公は抱いているけれど、読者としては「矜持を持って執事として生き抜いた人生」に深い感動を覚える。
翻訳物にありがちな読みにくさは全くない。

[ 2017-11-14 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2013-04-03 ]

十年後にまた読みたい。いや、何度も年月を置いて読み返したい。
働き続けた人間の気持ち、誇り、後悔、分からないことだらけだけど主人公への尊敬ははっきりとある。

[ 2012-05-20 ]

執事小説ということで読んでみる。
不完全かつ信頼できない語り手である執事による、主観と都合の悪いところを意識的にあるいは無意識に隠して語られる、貴族の生活。その色眼鏡がかかったピンホールのように狭い自称からあぶり出される英国貴族の生き方とそれ故の没落。
読みやすいけど、技巧を凝らした小説だと思う。
見えない部分が多いので、この小説を元に当時の政治状況や世情などをさらに調べていくのも面白いかも。
原書は美しいイギリス英語で書かれているんだろうなぁ。

[ 2014-12-29 ]

【伝統的なイギリスの執事を描く】
30年以上勤めたイギリスのダーリントン卿が亡くなってから、アメリカのファラディ卿に勤める主が変わり、数日間の旅を許される。『品格ある』執事を追い求めてきたスティーブンスは、その旅の中でも新たな出会いを、過去の思い出と織り交ぜながら考えられずにはいられない。

彼の追い続けてきた『品格ある執事』が何かを、旅を通して再度考えなおしていく姿は、彼の真面目な執事人生を象徴していて非常に面白い。

例えば、ジョーク。アメリカのファラディ卿はジョークを好むが、そういうものに慣れていないスティーブンは最初は戸惑う。イギリスの伝統には相応しくない!と考えていた彼も、旅をしていくにつれて、主を喜ばせるためにはジョークを学ばなければならないと決心し、コメディラジオを聴き始めたりする。

そういう『品格ある執事』を追い求める真面目な姿が、私は読んでいて面白いと思った点だった。

逆に他のレビューアーが書いているような、人生とは何か、政治とはなにかという深いところまでは考えが至らず、そういったレビューは、なるほどと感じた。

執事という職業は日本ではあまり馴染みがないものであるため、どういう職業なのかを知るにはよい本である。

[ 2015-08-04 ]

オーストリアの先生に、村上春樹に似てるよ、とおすすめされた本。
うーん、そうでもなかった笑

この作品は映画化もされてるらしいです。日本でも公開されたかは分からないけど。ダーリントンホールという、イギリスの大きなお屋敷に勤める執事の話。
執事だから話し方が丁寧すぎて、「ありますまいか」を連発するのが途中から面白くなってしまった・・・。
スタンスとしては自分のような者が・・・という感じなんだけど、自分はこのようなことをやりました、という自負を語る時がとっても回りくどい。

ストーリーとしてはかつての女中頭のミス・ケントンに会いに行く小旅行の話なんだけど、回想がほとんどかも。ジョークについて真剣に考えている時のスティーブンスは可愛かったです。

[ 2012-04-11 ]

カズオ・イシグロの代表作。ブッカー賞受賞。

長年、英国貴族に仕えた執事が屋敷をアメリカ人に買われたことをきっかけに、かつて思いを寄せた女性に会うための短い旅に出る、という話。執事という仕事がどういうものか、彼らの思考がどういうものか、銀の食器を磨くことにかける執念とか、すべてを「とりつくろう」ことで成り立つ人生が旅先での回想を通じて語られる。

個人的には、最初はあまり面白いとは思えなかったけれども、それはたぶん英国史に詳しくなかったからで、読み返してみると時代に翻弄される英国貴族の話や、過ぎ去ってしまった栄光の日々などが切実に感じられてしみじみした。

[ 2012-04-03 ]

最近の主流である“萌え執事”でない執事のお話し。
主人に対する姿勢に、主人公は生まれながらの執事を感じます。
ちなみに『エマ』に出てくるスティーブンスはここが出典なのですかね〜〜

[ 2012-04-04 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-10-13 ]

アメリカ人のお屋敷の執事が短い旅に出る。思い浮ぶのは、品格ある執事とは何か、過去長く仕えたダーリントン卿、執事の鑑だった亡父、女中頭と女中たち、邸内で催された重要な外交会議…英国の過去の栄光とともにあった執事の来歴。

丸谷才一の解説によるまとめ方が秀逸。真ん中くらいまで読み進んだところで解説を読んだのですが、その前後で見え方が一変してしまいました。

[ 2012-12-14 ]

英国貴族のnobless obligeともいうべき外交政策への関与、その貴族をただ敬愛し仕える品格ある執事、そうした失われつつある英国文化を、カズオ・イシグロが悲哀を込めつつも淡々と描けたのは、あとがきに丸谷才一が寄せているように、彼が日系であることにも大いに影響していると思う。
土屋政雄の訳もすばらしい。

[ 2015-11-15 ]

執事スティーヴンスという、その語り口からはいかにも卑賤な人間のミクロ視点から、当時英国がおかれていた国際情勢を描ききる。この作品が評価されえる要点である。もちろんこうした語り手に対する信頼性は揺らぎどころもあるが、自らの取り繕いを冗長に語るところを抜きにすれば、あらかた目撃したことを正直に告白したと言えるだろうから、国の趨勢の代弁者としてつきあう価値はある。

[ 2012-03-05 ]

<英国旧家の執事、スティーブンス。初老の彼は、さまざまな過ぎ去りし過去に思いをはせる・・・。>

再びカズオ・イシグロ。
今作がブッカー賞受賞作です。


相変わらずの美しくも落ち着いた文体で語られる、古き良き英国名家の華麗なる日々。
それが執事スティーブンスの回顧という形で語られます。
文体は訳者の土屋政雄さんの尽力の賜物でしょうか。(「私をはなさないで」もこの方が翻訳)


そして過去というものを語った時に、たどり着く先は後悔だと思います。
人には自分が送ってきた人生を振り返ったとき、転機だったと思えることが必ずあり、
それを思うにつけ、誰しも「別の選択をしていれば・・・」と思ってしまいがち。

しかしそうしたところで、人生をもう一度やり直せるわけでない。
結局、今ある人生を、自分が送ってきた人生を、ありのままに受け止めるしかないんだ・・・


「私をはなさないで」のあとがきにあったように、
カズオイシグロにとって、“運命=受容するもの” なのかもしれません。


ラスト。
心にぽっかりと穴が開いたような読後感でしたが、
最後の最後で、そこをほんの少しのジョークが埋めてくれました。

[ 2012-02-27 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2012-07-09 ]

イギリスの良い所がふんだんに詰められている。
決して早いスピードで物語は進まないが、一挙手一投足、一分一秒が噛み締められるように文字におこされ、紡がれていく。

主であるダーリントン卿への尊敬の念は時代に否定され、職務に明け暮れることで身近な女中からの私募も見落としてしまう主人公はつかの間のドライブでそれらのモノを回顧する。

それはあくまで回顧であり、戻らない大英帝国であるイギリスの落日が彼の背中に垣間見える。それが彼の伝える「日の名残り」なのかもしれない

[ 2014-03-03 ]

カズオ・イシグロの『日の名残り』は静かな小説だ。この静かな落ち着きは著者の特徴のひとつのようだ。しかし静かなだけの小説に人々が飛びつくわけがない。主人公の執事の職業的なプライド・向上心・生真面目さは時に冷たくときに滑稽で、その時代離れした不器用さが、読むものに、不思議に、何かあたたかい感情を呼び起こすのだ。ミス・ケントンとの会話。主人公の執事はミス・ケントンの直截な言葉に怒り心頭に達しているはずなのに、その感情をそのまま表明することをしないばかりか、回想においてもそのような感情がまるで起こらなかったように職業的に問題にしているに過ぎない。この書き方は主人公のかたくなさを表すのに効果的であるだけでなく、彼の寄って持って立つ拠点がたしかであるように見えて、その実つよい思い込みによる部分も多いのではないかという読者の想像を引き出すのにも効果的だ。

執事が質問に真実で答えなかった場面が少なくとも2つある

感情の伴う返事をごまかす・さける

ミス・ケントンが結婚しお屋敷を去ることについての感想は結局語られていない

要するに執事の性格はしっかり描き出されているというわけ。

読後感がしんみりとする良い小説。

ブログ ACH & PFUI より転載
http://achpfui.com/pfui/?p=40

[ 2018-01-23 ]

古き良き時代のイギリスの名家の執事が自動車旅行をしながら、過去のことを回想していく。淡々と語られていく執事の宿命のようなものがもの悲しかった。題名のとおりの日の名残りの執事の幸福を祈らずにいられない。

[ 2018-10-07 ]

客観的に見れば、好意を持っている事ってよくわかる。
でも自分の事になると急に見えなくなる。
そんな事を思った。

[ 2012-01-15 ]

主人公の老執事がかつての栄光を回顧しながら辿る、一人旅。
こういう年の取り方をしたい、と思わせる作品。

[ 2018-09-29 ]

日の名残る夕暮れ、ある者は夜を迎えて明日を歓迎し、ある者は過ぎゆく陽を懐古し来るべき夜に慄く。英国執事の人生にイギリスの凋落を投影する。

伝統に縛られダーリントン卿を絶対視し自己正当化するスティーブンス氏。その彼が最後の場面でベンチに座り空虚と後悔の念に駆られる姿は、英国籍を持ちながらも日系人であるイシグロ・カズオ氏だからこそ描けたものであろう。読者がミスター・スティーブンスに感じる所々のもどかしさと違和感が絶妙である。ミス・ケントンとの再会のあと6日めの章で、それらがカズオ氏が巧みに計算し構成したものであったことがわかる。ダーリントン卿とミス・ケントンとともに過ごした暖かく充実した日々を食み、殻を張ることで取り返しのつかぬ日々に思いを馳せるミスター・スティーブンス
、ファラディ氏のためにジョークを勉強しようとする新たな小さな決意の爽やかさを含め、味わい深い作品であった。

[ 2012-11-29 ]

好きなものではないものを読む。
これが、最近の読書のテーマだ。

僕の苦手なものに、「外国文学」がある。

なぜ、苦手なのかは、わかっている。

「名前が覚えられない」のだ。
いや、覚えられないのではないというのではなくて、その名前からその人がどんな存在の人なのかがいまいちイメージしづらいのだ。

日本人の名前、例えば”たかし”とか”たける”とかなら、自分が知っている”たかし像”や”たける像”が少なからず存在し、そのイメージとちょっとつながり、なんとなくのイメージを持てる。

一方で、外国文学、殊、この「日の名残り」における登場人物のスティーブンスやケントンのイメージは最初つきづらく、基本的に早読みである僕のはずだが、1ページ1ページを読むのに、ものすごく時間がかかった。

けれど、読み進むにつれて、イギリスの美しい風景や、ロイヤルのあるイギリスらしい厳かな雰囲気や、登場人物たちのもつ「人間臭さ」が、だんだんとイメージできはじめ、のめりこんでしまった。

著者カズオ・イシグロ氏は、長崎県生まれイギリス育ちの日系イギリス人だ。彼のことを知ったのは、村上春樹氏がエッセイの中で、「同世代の作家の中で、必ず新作が出ると買ってまで読む、数少ない作家のひとり」と賞賛をしていたことがきっかけ。

この小説が、おもしろいかおもしろくないか、と聞かれたら、正直に申し上げて「僕にはよくわからない」としか言えない。

でも、カズオ・イシグロ氏の作品は全部読んでみたい。
否、読まずにはいられない。

それは、10代のころ、村上春樹作品と出会い「意味はよくわからないんだけど、心地いい」と思ったあの感覚に似ている。

きっと1作品だけでは、分からないコアの何かがあるはずなんだ。

読み進むにつれて、カズオ・イシグロワールドを、
楽しんでいきたいと思う。

[ 2019-01-02 ]

執事の本質的な話がよくわかった。
自分を捨ててご主人につかえる。そして少しの過去に自分を重ねて、ドライブしながら昔の思い出に。
最後にちょっと切ないけど、そこは執事だったんですね。自分を前に出せなかった。
小説としては展開が少なく淡々と進みますので、変化の好きな人にはちょっと物足りないかも。

[ 2014-11-08 ]

執事の目を通してイギリスの貴族文化を描いたんだと思います。
忠誠心が一つのテーマなのでしょうか。
日系の作者だから、とは思いませんが、執事が見せる忠義の形は日本的とも感じました。

[ 2016-03-19 ]

心地よいのか、やや物悲しいのか、静かな深い読後感を感じる本でした。まさに、品格を感じさせてくれる、素晴らしい一冊です。

[ 2018-08-17 ]

最初とても退屈だったが、読了した後、再読したくなる。いいかげんにザッピングしていたことを後悔してしまう結末があるからだ。

職業小説でもあり、紳士淑女のほのかな恋愛でもあり、父子の郷愁、大戦中の歴史秘話でもある。

他のイシグロ作品を経由して最後に読んだ作のせいか、なじみ深い人物がいる。「充たされざる者」に出てきた老ホテルマンとか。

訳者あとがきにあるように「上質な感動」と呼ぶにふさわしい。仕事一筋で家庭を顧みられない父親、誠実なのに刺激がない家庭生活に倦んでいる妻が読めば、感動できるのかもしれない。あるいは理不尽な客に耐えるサービス業全般。

仕事の矜持、反戦意思、男女間における品位。どれも失われたもの、昨日の夕陽を眺めるような想いで、私たちはその古びた有難さを噛みしめる。

[ 2012-10-23 ]

静かで穏やかなお話し。カズオ・イシグロ氏は初読でしたが、想像していた、村上春樹氏みたいなイメージとは違ってました。うまく表現できませんが、さりげないところがうまい作家さんなんだなぁ。良かったです。

[ 2018-07-02 ]

静かに感情が揺れる小説。第二次世界大戦前のイギリスで、こういう流れがあったのかという点でも面白かった。情景の浮かぶ描写が多く、心地よく読み進められる。
ラストの主人公の切なさや後悔のような思いは、映画の方で強く感じられ、それまでの描写では小説で理解の深まる部分があり、映画も小説も両方楽しむことをお勧めします。

[ 2018-12-12 ]

原書名:THE REMAINS OF THE DAY

ブッカー賞
著者:カズオ・イシグロ(Ishiguro, Kazuo, 1954-、長崎県、小説家)
訳者:土屋政雄(1944-、松本市、翻訳家)
解説:丸谷才一(1925-2012、鶴岡市、小説家)

[ 2017-08-14 ]

何事かが起きるわけではない
静かに流れていく
こういう感じ、嫌いじゃない

全く趣は異なるだろうけど、後書きにあったP.G.ウッドハウスのジーヴズシリーズが読んでみたくなった。
あと、正統なジョークも勉強?してみたい。

[ 2012-01-03 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2017-10-30 ]

帯文:”ノーベル文学賞受賞”

目次:プロローグ、一日目―夜、二日目―朝、二日目―午後、三日目―朝、三日目―夜、四日目―午後、六日目―夜

[ 2011-11-26 ]

2年ほど前に読んだ作品。
当時はカズオイシグロの名は知らなかったけど、
すごくいい作品に出会って、読み終わった後も
心地よい余韻に浸っていました。

イギリスの歴史の奥深さと、それに根差した生活を
淡々と送る主人公。
大きな事件なんて起きないけれど、
自分もこれまで生きてきた人達が作り上げてきたものの上に
生きている感覚。

他の作品も絶対読みます。

[ 2016-02-14 ]

良かった。
大事件が起こるわけではなく、淡々と物語は進むが、次が気になりどんどん読んでしまった。

映画も観てみたい。

[ 2011-11-07 ]

イギリス文学。執事のお仕事を垣間見ることができる。屋敷の管理を一手に引き受けるだけでなく、国内外から政界の重鎮を招いて開かれる泊まりがけのパーティ(非公式に政治的な根回しや駆け引きが行われる場)では段取りや当日のタイムキーパーなど、マネジメントを任される。すごくやりがいがありそうな裏方役。時代が変わってこういう「古い時代の執事」はイギリスにもういないらしい。物語は主人公(執事)の「仕事に対する姿勢」に密接に絡んでくるのだが・・・それにしても、この作家さんの作品は読み応えがある。

[ 2013-01-04 ]

追憶は美しい。それは下流に流れ着いた石ころの様なもので、現実の歪みも感情の角も全て時の流れで取り去られ、思い出は滑らかな形となって今の私に辿り着く。執事としての人生も夕暮れ時を迎えたスティーブンスは1週間の余暇を用いた旅すがら、ゆっくりと半生を回顧する。そこに美学や警句を読み取ることも可能だが、不器用な誠実さが滲み出てしまうのが何より愛おしい。そう、僕達にせいぜい出来ることは、ちょっとしたジョークで貴方の人生を少しだけ楽しませること。夕暮れの景色は、明日へと向かう人達を後ろ側でそっと見守ってくれている。

[ 2011-11-06 ]

あくまで形式は独白ながら、まるで透かすようにその後ろに事実が見えてくる描き方が面白い。その事実と独白のズレが徐々にはっきりしてきて、同時に主人公の生きる世界と世間の動静とのズレも折り重ねていて、表現は主人公から世界にたいして向けられた視線で構成されるのに、そこに時代に取り残された主人公に対する冷徹な筆者の視線が入っていて、深みを与えている。

[ 2013-03-24 ]

「日の名残り」というタイトルに感動した。読み終わったときに。うまいなぁー、すごいなぁー、と深々と言葉を噛み締めた。貴族階級が華やかな大戦前から、貴族に仕えた執事のモノローグで語られる英国社会の栄光と挫折は、煌びやかで悲劇的で、哀しいユーモアに溢れている。「私の仕事というのはダーリントン卿次第なのですよ、ミス・ケントン。卿がご自分の目標とされていることをすべて成し遂げられるまではーそれを見とどけるまではー私の仕事も終わりません。卿の仕事が完成した日、卿がなすべきことをすべて成し遂げたと誰もが認める日、そして卿が栄冠を戴いてゆっくり休息される日ーその日こそ、私も自分を満足しきった人間と認めることができるでしょう」
盲目的に主人を信じる自らの執事としての信念は戦後に崩され、それをしみじみと噛みしめる結末の描写は本当に素晴らしい。海で夕日を眺め、「夕方こそ一日でいちばんいい時間だ」という見ず知らずの言葉に、新たな主人への忠誠を再び誓う。老いが見えたときに、誰もが人生を素晴らしかったと言えるわけではないと思う。夕方こそ一日で一番いいーこの言葉には清らかな朝も、華やかな昼間への名残りが隠されていて。さらっとした文体で、語られる淡い思い出が染み渡る。

[ 2012-06-24 ]

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[ 2013-04-12 ]

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[ 2011-09-29 ]

カズオ・イシグロ作品を好きになるきっかけとなった作品。アンソニー・ホプキンス主演の映画も.良かったけれど、やはり小説には及ばない。本当に上質な小説というものは、小説という表現方法のときに一番輝くものなんだなあ。
劇的で派手なところは一切ないのに、静かに感動させてくれる、稀有な作家である。

[ 2018-01-24 ]

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[ 2011-11-12 ]

「わたしを離さないで」がすごすぎたので、
カズオイシグロの他の作品も読んでみようかと思って読んでみた。

やっぱりこの人はすごい。

話が流れてって、
この後どうなるんだろう?、
これってどういうことだろう?、
が気持ちいいくらい直後にちゃんと説明される。
ここまで読み手に添ってるというか、
作者の誘導にまんまともってかれる経験はなかなかない。

設定や時代背景は、正直、興味がないものだったけど、
そんなこと全く問題ではないってくらいすんなり引き込まれた。

面白かった。

[ 2011-09-19 ]

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[ 2013-05-25 ]

ブッカー賞受賞作。英国が舞台だが、古く気高い貴族の姿が、日本の武士道を彷彿させる。執事とは、品格とは…人を恋する気持ちに蓋をし、仕事に全精力を注ぐ執事。少し前の日本のオヤジにもいたよ、こんな人、とかぶる。きっと美的感覚も英国人と日本人は似ているのではないか。原文はきっと美しい英語で書かれてるんだろうな、と想像する。今更ながら、英国の勉強しようか。

[ 2017-04-09 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2011-09-07 ]

文章から伝わる感覚や余韻が印象的に残る。
この本は質の良い物語だと私は読んで感じました。

イギリス名家に仕える執事の記憶と旅の物語。
まず話の構成が素晴らしく無駄がない。
この執事の人間性の品格を称えながらも、時おり見せる過去の過ちへの苦悩と並行して語られる自らを慰めるような栄華の話。

華やかな雰囲気を纏いつつも伝統や格式を重んじ誠心誠意、主にお仕えする執事の忠実さと、ある女性に揺れ徐々に心動かされる感情が何よりも人間らしい憂いさを醸し出している。

完璧な執事でありながらも、憂いさを感じさせるこの物語は晩年にもう一度読みたい。
色々な人生の荒波に揉まれれば、この執事の思いと言葉の意味が深く突き刺さると感じるから。
それまでに私は晩年も成長し豊かな知識と心構えを持って欲しいと願ってしまう物語。

[ 2015-01-10 ]

この人の本は、本当にじわじわと哀しい。読み終わってもそれは続き、哀しみを増していく。
執事の回想を通して、古きよきイギリスを知ることもできる。

[ 2011-08-31 ]

図書館で待つこと数か月。やっと手に入れたのが夏休み中で逆にゆっくり読むことができませんでした。これはじっくりと時間をかけて味わう作品です。主に執事スティーブンスの回想なのですが、人生も終盤を迎え振り返った時の思い。じんわりとなにかがこみ上げます。
しかし、私にはまだ早かったかな。

[ 2009-03-14 ]

英国の名家に仕え、主人を敬い、家政諸事万端取り仕切る事に誇りをもつ一人の「執事」を描いた小説。輝かしき日々を懐古しながら、執事の誇りにかけて変動する戦後の日々を生きようとする謹厳実直な人間性がひどく堅苦しく伝わってきた。新しいアメリカ人の主人に合わせるためにジョークの研究に励むなんて…ああ、なんてクソマジメなんだ〜!執事の職に徹するあまり、恋もプライベートもすべて切り捨てているところなどは「唐変木」という感じだがそれもまた彼のプロフェッショナルな誇りでもあるのだろう。以前これの映画化作品をみたのを思い出した。エマ・トンプソンが良い演技してたなあ…

[ 2014-09-08 ]

単なる回想小説かと思ったけど、そんなことはなかった。
自分の人生に誇りを持ち執事を続けてきたが、人生の終盤にもっと他の人生があってのではないかと嘆くのだけど、もし、執事が私の隣にいたらいい人生ではないかと、肩を撫でてやりたくなった。

[ 2018-11-15 ]

一読、色々なことに「見ないふり」をしてきた男の物語だと感じた。自分の感情さえも。物語の終盤、男は自分の人生が失敗だったと涙する。どう言い繕っても、見ないふりに限界が来たのだ。でも、人生をやり直すことはできない。男はまた同じ生活に戻らざる得ない。哀しくも、味わい深い小説だった。解説で丸谷才一が、主人公の認識の深まりに立ち会うことが小説の大切な要素だというのに強く同意する。

[ 2011-09-29 ]

一時期、秘書のような事をしていたことがあり、その時の上司をとても敬愛していた。秘書の仕事は執事の仕事と似ている。執事であるスティーブンスと気持ちが重なる部分がかなりあったような気がする。上司の考えている事は何か、何をしておいたらいいのか、先回りして割と常に考えていた。その仕事を行う上でのカズオイシグロによるスティーブンスの気持ちの描写は素晴らしいと思う。なんでわかるんだ。

[ 2011-08-09 ]

「執事」の職業や主人への真摯さ、忠誠心。「品格ある抑制」がもたらす英国的美しさ。しかし、その、ときとして、恐るべき鈍感さと融通のきかない思考と行動の袋小路。そして、それを本人もわかっているけれど、どうにもならない悲哀。それを、受け入れていく過程は、このように「美しく語られる」ことによってこそ、昇華されるのだろう。「記憶」とは彼の編み出した物語なのだ。

ミス・ケントンへの淡い思い。しかし、最後には過去の肯定と淡い希望が感じられるところがいい。「ジョークを真剣にマスターしようと思う」と。

一人称で話が進行するが、執事は、誰にこの物語をきかせたかったのだろう、とふと考えてしまう。

[ 2016-03-27 ]

ミスター・スティーブンス、誇り高きイギリス人執事、1920年代英国の重要な地位にある貴族に仕えた彼の回想記です。執事という職業的責務とは何なのか。この職業における当時のイギリス人の優位さを疑う余地がない彼の信念は、今日では違和感を覚えるかもしれません。しかし、年老いてかつてのような働きが難しくなってきたことを認識せざるをえない現在、そうした自分から見た父の在りし日の姿を思い起こします。彼の父も同じように執事をしていたのでした。お屋敷で一緒に働いていた女中頭のミス・ケントンとの数々のやりとり‥
結婚してお屋敷を去った彼女からの手紙を受け取り、それがきっかけで旅に出た6日間。6日めにかつてのケントン女史に会って交わした会話も含め、余韻のある中味でした。
淡々とした回想シーンはセピア色に染まり、ひとりの老執事の人生が蘇ります。

[ 2013-05-10 ]

終始過去に浸かった場面だなぁ…と終わりの方で気付いた。

でも、海沿いに住む者として、ラストの数ページは共感できる事ばかりでうれしかった。

346海の空気は体にいいんだよ
350〜人生、たのしまなくっちゃ。…
186『週に二回以上は』という番組名なのに、実際の放送は週三回が、ウケタ
365時間構造が移り変わるのに、書き方が上手
また、読んでると出てくるイギリスの地名の風景が見てみたくなる

[ 2013-10-14 ]

著者の本としては初めて読んだが、とても印象に残る良い本だった。
品格を大切にする執事の過去の想い出と置かれている現実の差が切なく感じられるが、どこか暗くなることはなく、最後には涙しながらも前向きな(なんとなく少しコミカルにも感じられる)エンディングで本当に楽しい小説だった。
過去の主人の大活躍がダイナミックに描かれ、現実の執事の旅が少し静かに書かれているように感じられ、その差もなかなか面白く感じられた。

[ 2008-06-12 ]

カズオ・イシグロ2作目。イギリスの権威ある賞を受賞した作品という事だが、正直なところ何回か眠くなってしまった。イギリスには執事という職業がある。二つの大戦の前から執事を務めたスティーブンスが、新しい主の薦めで旅に出かけ以前の主人のこと、一緒に働いていた女中頭との思い出、そして自分の「執事」としての品格について回想する。品格ある執事であることを求めるスティーブンスはイギリスの政界に深く係わるダーリントン卿の元で働いていた。そのお屋敷では各国の重要人物が集い不穏な時代の非公式な会議が開催されることもしばしばあった。卿を尊敬し正義のために働いていると信じる卿と同じように主人に尽くす事に執事としての品格があると信じる彼は、品格ある執事の一人であったと信じる父の死や女中頭のミス・ケントンとのやり取りよりもその職務を全うすることを選ぶ。その彼の態度は半ば滑稽なようにも感じられるほど頑なに「品格ある執事」であることを追及する。主人の言いつけが理不尽なものであると感じながらもそれにどんなに強く反対する抗議があっても自分の感情を表すことなくその命に従うことが「執事」たるものという態度。誤った方向に進もうとしている主人を見ながらもただ主人を信じ主人の意のままにつつがなく客人をもてなし、主人を喜ばせようと務める。何か偏屈といおうか柔軟性がない。スティーブンスによる語りという文章は、訳者が意識したものかバカ丁寧な物言いで、なんとなくNHKのドラマのポアロの声の熊倉カズオを思い出しちゃうんだけど、そのどこまでもくだけた調子のないところがイギリスの執事なのだろうかとも思う。そしてダーリントン卿との思いでと共に語られるのが、ミス・ケントンのこと。この女性、女中頭としてお屋敷に勤めだしたのは計算してみるとまだ二十歳そこそこというところだろうか。それで完璧な女中頭であったというのだから、それはどうもとは思うのだが(惑うでもいいことなのかもしれないが)、時にはお互いに自分の仕事に対する自負心とプライドからぶつかり合うこともありながら、認め合い信頼し合っていた。ミス・ケントンが唯一の身寄りの死に打ちひしがれているときも慰めの言葉よりも勝手にもう立直ったと女中頭としての仕事にミスを指摘してしまう彼の態度は鈍感というか、これもまた独りよがりな思い込み。ミス・ケントンの思いに気づきながらも執事としての態度をくづさず職務を優先しようとする彼。旅の終わり、お互い年を取り再会したミス・ケントンの言葉に、彼は自分が失ったものに気がつく。おそーい。ダーリントン卿もミス・ケントンも去り何も残っていないと彼は泣く。そんな彼にかけられた言葉。人生はこれからだと。夕暮れは一仕事が終わりほっとする時間だと。彼の人生もまた今はその夕暮れの時間であると。そうか。やはり私はこの前に読んだ「私を離さない」でのほうが好きだな。これは映画にもなっているらしい。アンソニー・ホプキンスか、映画のほうが感動するかも。

[ 2019-04-12 ]

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[ 2011-09-05 ]

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[ 2014-10-04 ]

1人称で淡々と、語られる物語。
さして衝撃的な事が起っているわけでもない、が、
ある意味では 主人公やワキの静かな激情が描写されている。

例えて言うと、非常にレベルの高い、だけど具が少ないコンソメスープを食しているような。

予定調和的なものは極力排されていて、余韻のある読後感。なかなか良かったです。

[ 2011-08-21 ]

よく「旅行に持って行きたい本」という特集があったりするけど、
これもそんな小説のような気がする。
オレもこれを金沢を旅しながら読んだのでなおさらね。



主人公も旅をしていて、イギリスの各地を巡る。
けど、旅自体が主題ではなく、人生の回想が中心となっている。
旅しながらいろいろ考えるってよくあるじゃない。
落ち着いた調子がそういうのに向く。
(そういえばカズオ・イシグロの作品は回想調の作品が多いね。
なんかあるのかな?)

ジジくさいけど、面白いよ。

[ 2019-08-21 ]

ミスケントンの想いは感じていたに違いない。品格という父親から引き継いだ人生の哲学を前に、その想いとは距離をおくことを固く誓った判断と思う。
執事という生き方に真っ正面から向き合い、貫いている主人公の生き方が清々しい。

[ 2016-01-31 ]

カズオ・イシグロの日の名残りを読みました。

第2次世界大戦の戦中から戦後にかけてイギリスで執事をしていたスティーブンスが主人公の物語でした。
スティーブンスは自分がしてきた仕事を振り返りながら偉大な執事とは何だったのかと回想します。

しかしながら、ずっと仕えて心服していたダーリントン卿はナチスに利用されてしまう愚かな貴族だった、と言うことに気づきます。
そして個人的にも彼を慕っていた女中頭の気持ちにも応えられないつまらない男だったということも明らかになってしまいます。

一生をかけて努力してきたことが、老年になって実は意味のないことだったということに気づく、という悲劇なのですが、その悲劇が淡々と描かれています。

[ 2014-02-19 ]

私にイアン・マキューアン「初夜」を勧めてくれた友人が、「古き良きイギリス人を感じる。そして、それは古き良き日本人にも通ずるところがあるものだ」というようなことを言って、絶賛、勧めてくれたので、読んでみた。

率直に言って、べらぼうに面白かった。以前に同じ著者の書いた「わたしを離さないで」を読んで凄く面白いと感じたが、それよりも断然面白かったし、心を揺さぶられた。
また、友人の言葉が間違っていないことを確信することができた。友人が指していたであろう主人公の品格に対するこだわりがゆえに、そして本作が一人称小説であるがゆえに、ストーリーがより味わい深いものとなっていると思った。

非常に読みやすく、翻訳であることが全く気にならない。ストーリーも一般受けするものと思われるし、胸を張って多くの人に勧められる、勧めたい作品である。

[ 2011-06-10 ]

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[ 2018-06-24 ]

 きわめて巧妙に構築された小説である。この小説の中心にあるのは回想である。主人公のスティーブンスは英国の格式の高い屋敷に仕える執事であるが、すでに彼の価値観ではいかんともしがたい時代になっていた。献身的に使えた元主人は失脚し、今はアメリカ人の富豪に雇われている。元主人には全人格的な信頼と服従をちかって自らの人生以上に奉仕の方を優先してきたのに、新しい主人の行動には今ひとつ理解ができないでいる。
 その中でかつての同僚であり、いまは他家に嫁いでいるケントンという女性を訪ねるために休暇をもらい旅に出るという話である。小説はその旅の途中にスティーブンスが折に触れて思い出す過去の出来事をその都度綴っていく。過去の記述が大半を占めるのである。それは語りでもあるスティーブンスの考え方そのものを象徴するものであった。かれは過去に生き、現状との折り合いをつけられないでいる。ケントンが実は自分のことを思っていたことに気づきながらも執事の職務を理由に自分の感情を消し去っていたことを長い旅の末にようやく気付き認めるようになっていくのである。
 書名の日の名残りは過去に生きる主人公の考え方を表すとともにラストシーンにおけるとある男との会話の中に出てくる夕方こそが最も美しいという人生の諦念に至る暗示でもある。
 英国の古い価値観や、時代の変化に取り残された人の哀歓が痛いほど伝わってくる作品だ。

[ 2013-08-25 ]

淡々としているのに、構成の妙、描写の巧さからか引き込まれて読んだ。
「偉大なる執事とはなにか?」
偉大なる国英国での執事業、当時のあり様など興味深く読んだ。
ダーリントンホールでの思い出、ミスケントンとのすれ違い・・・
静かな午後に読むのにふさわしい本。

[ 2017-12-08 ]

 英国の執事が二つの大戦の間の頃を回顧する。

 ノーベル賞を受賞した時は日本出身者だからと盛り上がったカズオ・イシグロだが、この小説は完全にイギリス人の高貴なる精神を描いたイギリス人しか書けない小説だった。
 崇高なる精神の貴族。彼らは現代の視点から見ると反民主主義でもあるが、高い志で世界に影響を与えていた。そういった貴族に仕えることに人生の意味を見出す執事。時に自分を完全に殺してまで主に尽くすことこそが執事の本質であるとしている。
 その生き方には多くの間違いや後悔があった。でも、だからこそその生き方の素晴らしさを感じることができるのだと思う。

 これぞイギリス。

[ 2012-01-06 ]

初めてのカズオ・イシグロ。読後の余韻がすばらしい。執事についてはいまひとつイメージが湧きにくいが、それを差し引いても読む価値はあると思います。ある程度年齢を重ねたほうが感動が深いかもしれません。一緒に働いていた女性との再会後のバス停での別れのシーンがいいです。

[ 2011-12-26 ]

イシグロの作品は、『私を離さないで』に続き2冊目。
私を離さないで、のほうが好みだったが、本作も面白く一気に読んだ。
(2011.12)

[ 2013-01-01 ]

静かな感動。旅先で時間を気にせずゆっくり読みたい作品。

楽しむことが目的の読書。
本とともに素敵な時間を過ごす。

人生の大切な時間を回想する旅。
旅先で自分の人生を見つめ直す。
人生の意味を思索する旅。

「あのときああすれば人生の方向が変わっていたかもしれない―そう思うことはありましょう。しかし、それをいつまで思い悩んでいても意味のないことです。私どものような人間は、何か真に価値あるもののために微力を尽くそうと願い、それを試みるだけで十分であるような気がいたします。そのような試みに人生の多くを犠牲にする覚悟があり、その覚悟を実践したとすれば、結果はどうあれ、そのこと自体がみずからに誇りと満足を覚えてよい十分な理由となりましょう。」(351-352ページ)

夕方を楽しめる人生というのもいい。

[ 2011-05-09 ]

ページが進むにつれ、執事という職務に誇りを持っていた主人公の回想に、徐々に「実直さ、鈍感さ」がにじみ出始める。あたかも次第に暮れ行く夕刻の空を思わせる、物語の流れが絶妙だ。

[ 2011-06-22 ]

続けて2回読了。1回目で全くどこにも何も引っかからず、2回目で最後の章にものすごーくしびれました。。タイトルとストーリーのラストがシンクロしてぎゅーとなります。

[ 2012-10-14 ]

自分が年をとったのを認めるのは、相当辛いだろうな。特にプライドの高い人なら。そのあたりの描写が強烈で、何だか悲しくなった。

あと、終始丁寧な口語体で書かれているので若干違和感がある。後半はそんなに気にならなくなった。

後半、スピード感があっておもしろい。

[ 2011-11-08 ]

いま話題のカズオ・イシグロの本を初めて読んだ。
ストーリー展開も面白くないし、登場人物の個性も強烈なものはない。
一言で言うと、面白くない小説。
この小説には、何かメッセージがあるのだろうか。
何かしらのメッセージを無理に読み取ろうと思えばできなくもない。
それが読み取れなかったのは自分の力不足か、筆者の力不足か。

[ 2016-03-05 ]

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[ 2012-11-02 ]

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[ 2011-03-27 ]

大好きなカズオ・イシグロの作品
これが一番、一般受けしそうだけど。
ちょっと謎解きのように進む物語。

[ 2011-02-01 ]

イギリスの原風景。
誇り高い登場人物。
その一語一句、一描写ごとに感動した。
久々に出合えた、大好きな一冊。

[ 2012-11-09 ]

抑制された感情と物語。抑制はその奥に大きな感情やエネルギーが秘められている。声高に主張する以上に。しかし、というか、だからというか、最後の数ページでその抑制が静かに崩れる。それは、あまりに見事で、まるでまばゆい夕陽を眺めているようだった。

執事というのは、職業として、万般に通じているように感じさせた著者の力量にも舌を巻く。フィクションなのに、ここには歴史と現実があった。一人一人の人物にも、意思と感情が脈打っていた。

もう古典と言ってよい名作である。

[ 2018-03-18 ]

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[ 2011-11-28 ]

イギリスのブッカー賞を受賞した作品。2つの大戦を経て貴族たちの没落、そこに従事していた執事や女中たちの様子を描いている。英国人の主人を亡くしアメリカ人の執事となった主人公が現在と過去のよき時代が織物のようにストーリーを織りなしながら話が進んでいく。翻訳物とは思えぬこなれた日本語でゆったりとしたときの流れを感じさせる表現力と、題名通り日没前の夕焼けのような色彩を感じさせるストーリー展開。主人を尊敬し疑うことなく仕事をこなし、それを誇りに思ってきた主人公は実は客観的にみてみるとそれは悲喜劇にも似たものであった。私生活、親の死、ほのかな恋さえ犠牲にしてつくしてきたスティーブンスの人生は何だったのだろう。静かなストーリー展開が胸に染み渡ってくる。

[ 2015-09-13 ]

主人公の執事が、主人から暇をもらってある目的を孕んだ国内旅行をするというストーリーです。旅の途中で過去を振り返る。前の雇主の働きや評判のこと。同じ屋敷で主人に仕えていた女中頭のこと。歳を重ねて一時自身の部下として主人に仕えた父親のこと。執事とはどうあるべきか? 人間の品格とは?
複数のエピソードを折り重ねて、2つの大戦に挟まれた世界の動乱や、変容するイギリスや世界への悲哀、貴族の衰退、そして一執事としての主人公自身の回顧あるいは懐古を独白していく形式です。
一つひとつのエピソードも、独立した小説として成立しそうなくらいに美しいのですが、それらがラストシーンに向かって、結局、主人公執事の個人的な感情に集約されていくところが、グッとくる感じがしました。

基本的に思い出話なので、「言い訳がましさ」「謙遜付きの自慢」「記憶が曖昧であるという前提での自己弁護」みたいな語りが多く、ちょっと辟易としました。
それに、イギリス人の風俗や歴史観、国民性みたいなものを肌感覚で知っていないと、100%の理解はできないかもしれません。史実とラップさせて読むことは、知識不足のせいでほとんどできませんでした。

[ 2013-10-30 ]

自分が従事している仕事に対してどれだけプロフェッショナルなのだろうか、そんな仕事に対する自らの姿勢を考えさせられる作品だった。

[ 2011-02-10 ]

すごく素敵な本だった。

話は、ダーリントン・ホールに仕える執事、スティーブンスが、あらたな雇い主ファラディにすすめられて旅行にいく形で進む。スティーブンスは、昔の友人(?)のミス・ケントンに会いにいく道中で、様々な事を思い出し、みんながみんなあの時もっと最良の道があったんじゃないか、と考えたり、懐かしんだり…
そういったことが、すごく優しい言葉使いで描かれていて、なんというか…
英国紳士!執事文化!!ブリティッシュなお話でした。

スティーブンスが、ユーモアのセンスを磨こうとすごく真面目に勉強したり、なんか色々なとこで不器用なんだけど、それが執事言葉で丁寧に書かれてるから読んでる私としてはユーモラスな印象をうけた。
とくに、子供の性教育を任されるとことか、笑っちゃった笑
あとケントンに、何読んでるのか?ってきかれて、好んで読んでるわけじゃないのに恋愛小説なのがなんか恥ずかしくてめっちゃ隠してるとことか笑
スティーブンスがすごく魅力的な人物だったから、たのしくよめました。

でも、ダーリントン卿のよかれとおもって、自分の正義に乗っ取って行ってたことが、悪用されて…て切ないね><
それを、もっとどうにかできたんじゃないか、と悩むスティーブンスに、
最後であったおじさんの言葉で、私もスティーブンスもスッキリできたんじゃないかと…


ううん、うまく説明できないけど…面白かった。

[ 2011-01-09 ]

今日、東急線のある駅でポスターに「私を離さないで」の映画案内出ているのを見つけた。数年前、日本で傑作として発売されたとき、本を貸してくれた同僚の人が「どこが傑作か全くわからない」と憮然としていたことを思い出した。

私は傑作だと思った。しかし、この作品しか読んでいないのであれば、わからないかも…と思った。

イシグロカズオの「私を離さないで」をより堪能したければ、初期の作品である「日の名残」を読んで、時代の流れや社会の外的要因とシンクロしながら、必要とされていた物事や人が不要となってゆくはかなさと前向きな諦め、という彼独特の世界に触れてからの方がよいのではと思ったりする。

私自身は、「日の名残」そのものはフムフムと読んで終わり、それから映画を見てより納得した。それを踏まえて「私を離さないで」を読んだので、イシグロカズオ独特の世界が現実から現実と非現実が曖昧な近未来なところまで飛翔したと思い、そこが傑作と思っている。

[ 2016-03-04 ]

ディテールの書き込みによって、人物の魅力を際立たせ、それが大きなテーマに繋がっていることが物語の転換で明らかになる。尖った筆致によってでなく、平易な語りよる計算され尽くした世界観で、一見凡庸なテーマがなんとビビッドに現れることか。
カズオ・イシグロの最高傑作。

[ 2019-02-20 ]

執事の話し。ご主人様が留守の間、車を貸してもらえることになり元同僚の女性に会いに行く。
いざドライブに出てからは、退屈な回想シーンばかり。
アクションやサスペンスを期待してしまっただけにかなり戸惑いながら読んだ。
書いてあるのは、仕えていた主がいかに重要な人物で重要な会議をそのお屋敷で開いていたかと、執事の矜持。
そして同僚の女性との不器用すぎる鈍感すぎる関係。

今の自分にはピンとこない本でした。

[ 2011-04-16 ]

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[ 2011-07-09 ]

スティーブンスが可愛い。余談が多いけど、そこがこの作品の魅力らしい

最後はもう少し何かあってもいいような…

[ 2014-09-24 ]

一人の人間が仕事を成す事のすばらしさを教えてくれる。しかし個人としての自分の幸福を求める勇気も大切だという事も教えてくれる。もの寂しいが清々しい読了感。

[ 2018-05-12 ]

ブッカー賞受賞作とのこもでずっと気になってたが、ノーベル賞も取ってしまったカズオイシグロの名著をやっと読んだ。全編に漂う寂寥感が作風かな。途中で主人公にイライラしてしまったが、脳内でこの人はアンソニーホプキンスなんだ(映画版の配役)と言い聞かせて読んだら普通に読めるようになった。アンソニーホプキンスは最高です。ラストは仄かな光が射すような感じがしみじみして良い物語だった。

[ 2011-04-17 ]

執事として尊敬できる主人に仕え、充実していたはずの自分の人生。
黄昏の時期になって振り返って見ると、光り輝いていたさまざまな出来事だけでなく、色合いが違って見えてくるものもあり・・・。
新しい主人のために、ジョークの練習をしようとするスティーブンスが少し哀しい。 文章は美しく気品があり、別の作品もぜひ読みたい。

[ 2011-07-16 ]

翻訳文学ですが、訳がすばらしいの一言。こんなに素敵な翻訳本を読んだのは初めてです。これを機にイシグロさんと土屋さんに魅かれるようになりました。
スティーヴンスのキャラクターも素敵です。英国執事かわいいなあ!
彼の不器用な真面目さに、日本人としては思わずにやにやせずにはいられないのではありますまいか。

[ 2011-09-19 ]

ジェームズ・アイボリー監督、アンソニー・ホプキンス主演の映画の原作。
映画を観て気に入り購読。

第二次大戦後、英貴族の屋敷を買い取った米富豪に仕えることとなった老執事の回想のお話。
執事の視点、一人称で語られている。

かつてともに働いた女中頭に会いに行く道すがらの回想、映画同様、どこかさみしく哀しい。

映画ではカットされた(DVDにカットシーンは収録されているが)、終盤、確か、主人公の老執事がベンチで見知らぬひとと話ながら、これまでの人生を振り返りなんとなく悲嘆にくれるシーンがあったはず。

結局、概してひとの一生はなかなか思うようにいかず、やもすれば、後悔の連続なのかもしれず、しかも、それでも、われわれはそれをやり直すこともできず、これまでの人生に沿ってしか、進むことができないのかもしれない。
そんな分かりきったことだけど、改めてそれを思うと、やはりどこか切なく哀しいものだと思う。

本作品を読んだのは20代後半のころ。
いまは30代半ばだけれど、思い出してこの感想を記していると、老いていくとはこういうことなのかと、ふとそんなさみしいことを思ってしまった。

[ 2011-04-05 ]

こんなにも巧みな一人称、初めて読んだ。淡い恋と深い愛は紙一重だなあ。ブリティッシュの文化、紳士の心意気などは知らない世界だけど、無理なく入り込めた。読者に読ませながら疑問に思わせておいて、たったの一文で、はっと解いて見せる手付きは特徴的。全体を通してエレガント。ラストのギュッとつかんでふわっと放すような読後感がたまらん。

[ 2011-06-05 ]

古き良き英国的価値観の盛衰

この前読んだ「わたしを離さないで」がとてもよかったので、カズオイシグロ氏の別の作品も読んでみました。

主人公はある執事で、主人にもらった休みに短い旅行に出かける道中で自分の人生を振り返っていく、というお話です。

執事という職業に対する誇りや、品格のある偉大な執事たらんとする姿勢や、仕える主人に対する絶対的な尊敬・畏敬の念とそれゆえの葛藤などが、同じく執事であった父親の行動を通して、自分の仕えた主人や屋敷にしばしば訪れた紳士淑女の行動を通して、主人の身に降りかかった戦争に関連する不幸な出来事を通して、淡々と、とても理性的に、しかし時に偏屈なほど頑なに語られていて、いかにも「伝統的な英国」といった雰囲気をかもし出しています。ただ全体に流れるどことなく滑稽な雰囲気のせいで、若干コミカルな感じにさえなっているのがとてもよいバランスを保っています。


今の時代は、誰かを信じて仕える、ということより、自分の意見を主張するだとか、感情を素直に表現するだとか、自分の幸福を追求するだとか、そういったことがよしとされているけれども(仕えていた主人の屋敷の新しい持ち主がアメリカ人というのは象徴的)、実は程度は色々だけど何かを信じるとか仕えるということはみんながやっていることなんですよね。

会社だったり、親だったり、先生だったり、社会だったり。

何かを妄信的なほど信じることが恥ずかしいとか、無知という雰囲気があったりするけれど、何かを信じて自分を預けて、それに少しでも自分が影響を及ぼすことができて、それで正しい結果が出たとしたらそれはとても幸せなことでしょう。

でもそれが別の結果になってしまったとしたら、やっぱりそれは悲劇になってしまうのでしょうか。

小説のなかでは、主人の重大な失敗によって自分の執事としての人生が否定され、女中頭の淡い恋心を解さなかったことで逃してしまった私生活での失敗が重ねられているけれども、最後はジョークの研究、というとてもコミカルな終わり方をしています。

結局それが悲劇かどうかを捉えるのも決めるのは自分自身だし、それがいくつでも関係ないのでしょう。「夕方が一日で一番いい時間」と言ってますが、多分どの時間も一番いい時間と言えるのではないでしょうか。


「わたしを離さないで」もそうでしたが、カズオ・イシグロ氏の文体は、静かで情感があってシンプルで論理的で流れるような展開で、僕にとってとても心地よくて"しっくりくる"感じがします。

[ 2019-06-14 ]

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[ 2011-04-30 ]

名家の執事であったことに誇りを持っている主人公。
彼の回想を中心に展開される物語は、丁寧な語り口と上質なユーモアがなんとも心地良いです。
読み終えた後は、暖かな余韻が残ります。

[ 2011-02-24 ]

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[ 2010-10-26 ]

基本的に、映画と原作はどちらかしか面白くない、たいてい面白いのは原作、という法則を覆して、本作はAホプキンスの原作とともに楽しめた。
老執事の微妙な感情は文章で、英国の格調と風景はは映画で楽しめたからだ。
もっとも、その英国の格調を、日系人であるイシグロ氏が見事に描いているのも面白い。"

[ 2011-08-14 ]

品格とは
英国的情趣

他の方が書かれているように穏やかで凄く良い作品だと思います。それらと同じくらい印象に残ったのがミス•ケントンの女心。女性は感情が優先してしまって思い込みが激しくなってしまう節があることを痛感致しました。笑

日の名残り。私もおばあちゃんになるまで生きていたら、夕日を見て綺麗な涙が流せるような人生を送りたいな。
2011.08.12

[ 2011-01-30 ]

過ぎ去った栄光ある日々を懐かしみ、そして自分の人生の岐路に立ち振り返る、愚直なまでに素直な男の話。ユーモアがあってとても読みやすかった。「品格」とは何なのか、人生を賭して、犠牲にしながらも追い求めるものなのか?とても考えさせられた。あとがきから大英帝国に対する風刺に富んでいるとかかれていたが浅学なぼくにはよくわからない。しかし、一人の男が追い求める理想とそれに対する大きな代償、人生の日暮れにやってくる後悔の念。そんなものを共感できた気がする

[ 2012-04-01 ]

あれ?面白くないんじゃない?…と思いながら一気読み。
ぐいぐい引き込む力のある小説です(^^;間違いなく。
で、最後まで読んで、「いい話じゃ~♪」と^^

途中、何度も「メイちゃんの執事」を思い出してしまった不謹慎な読者です。

[ 2010-09-20 ]

イギリス人執事の話。
伝統に対する皮肉と哀愁が漂う雰囲気で、時代ものとしても真摯な感じです。
メイドさんと置物の向きについてケンカしたり、ご主人さまのためにジョークを練習する姿がすごい可愛い。キャストを見るかぎり映画も良さそうな感じ。

[ 2018-10-30 ]

20181030 読後感はあまり良く無い。いつ盛り上がるのかずっと期待していたが最後まで自分には分からなかった。シネマパラダイスで映像が燃えて溶ける場面。そんな終わり方も自分の好みでは無い。乾いた静かな空間で時を忘れて読書するような場面には合うのかもしれない。

[ 2011-06-01 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2011-09-30 ]

やっぱり好きだなあ、イギリス文学。
この物語は執事が主人公なので
日本人にはなじみがない職業ではあるけれど
でも、分かるんだよね、これが不思議と。
日本人とイギリス人って似てるんだよね、ある部分では。

この作品では、何度も心を打つシーンがあって、
それがカズオ・イシグロの素晴らしい文章力によって
まるで映像でも見ているように目に浮かんできたのがよかった。
そして、この作品もいくつもテーマがあって、奥深い。
カズオ・イシグロはいいなあ。

[ 2010-10-27 ]

品格ある執事を目指して仕事に盲進していた男が、人生の夕暮れにさしかかり、過去の日々の華々しさを振り返る物語。

時間が与えるものと奪い去っていくものの、その両者を鮮やかに描き出しています。

[ 2012-08-08 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-01-04 ]

ノーベル賞受賞者カズオ・イシグロ。
本作は著者の作品の中でもブッカー賞というイギリスの文学賞を受賞した小説。
第二次世界大戦後のダーリントンホールに勤める執事のスティーブンス。スティーブンスは旅の道中、戦前から戦時中のダーリントンホールを回顧する。
イギリス的な回りくどい口調で語られていく文章だが、妙にユーモラスに感じる(生真面目なスティーブンスが大真面目にジョークの練習をしていたり)。
ミス・ケントンと何年かぶりに再会し、執事業だけに邁進してきたスティーブンスはようやく自分の人生を顧みる。2人の再会後のやりとりも好ましかった。
非常にイギリス的な文章をうまく翻訳されているな、と感じた。海外ドラマのダウントンアビーを思い出した。

[ 2011-06-08 ]

より良い世界の創造に微力を尽くすため、この文明を担っている偉大な紳士に仕える職業人=執事という間接的ではあるけど、世界の中心、大事な局面を紳士と迎えたことが仕事のやりがい。執事という仕事そのものをこの先我々が選択することがないであろう職業なのに、とても鮮やかにイメージできます。日々の間接的な行為そのものが味わいどころです。

[ 2011-02-12 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2010-07-23 ]

ある邸宅に仕えた執事が6日間のドライブ旅行をしながら、これまでの執事人生を振り返る。
旅が進むにつれ、思考も進み、女中頭との行き違いの恋や、人生の誇り、悔い、が明らかになっていく。自分が人生を捧げた主人が素晴らしい人物であることを繰り返し強調しつつ、実は世間的には認められなかった不遇の人だったことがだんだん明らかになる。それは、仕えた自分の人生を否定することにもつながる。旅をしながら恐る恐る、その事実に向き合い始める。
そして、女中頭との淡い思いの交換。彼女に応えられなかったのは、執事を全うしようとしたからなのか、それとも執事としての自分の仕立てにほころびを生じたくなかったからか。お屋敷の中で完結していた人生を、小旅行に出ることで客観的に眺めることになる。
自分の人生への悔いか、汚名を着せられ世を去った主人、別の人生を歩みだした女中頭を思ってか。ラスト。涙する主人公が、この休暇を勧めてくれた新しいアメリカ人の主人のためにジョークを練習しよう、と思い立つラストが温かかった。もう一度、文章を味わいながら読んでみたい。

[ 2015-02-07 ]

悲しい憂いを帯びた物語、であると読めるほど、他人ごとに思えなかったので、確かにすばらしい作品で楽しめたのだけれど、トータルとしての印象は「遺憾に存じます。」と言わざるを得ない。
恐らく、主人公の覚える高揚感になぜか同調してしまうタイプの読み手は、この物語が仕掛けとして持っている罠に手ひどく傷つけられるでしょう。僕なんか、妻から「あんたのようだわ」と言われたし。そして、そう、正に英国の実相を誰よりもよく知っていると自任していた主人公が、そして主人公のプライドの基盤を構成していたはずの雇い主の崇高さが、視点を変えてみれば果たしてそれほど確信を持って言えることなのかと疑わざるを得ないことに、まさに、旅に出る(よって視点が、物理的に、変わる)ことによって気づかされてしまったのだけれど、それが、執事人生も終盤という時期にさしかかってであることの悲劇というべきか。さらに輪をかけて、彼の有りよう、彼の主人の有りようが、それでよいのかと自問するだけのきっかけが存在していたことは、彼自身の回想の中にはっきりと証拠を残しているわけです。それはとても悲しいことですが、物語としては、きわめて強烈なドラマ性をそこに発揮しているといえます。そして、彼の悔恨が他人事に思えない私のような人間にとっては、冒頭申し上げたとおり、誠に遺憾に存じますとしか、言える言葉を残してくれませんでした。願わくば、そのような苦しみとは無関係に、彼の悲劇を、そして、過ちを悔いた彼のこれからへの期待を、率直に味わえるであろう恵まれた皆様にあっては、この作者の手腕に最大限の賛辞を送られんことを。

[ 2012-03-18 ]

英米文学ってこうだ、って定義はもう崩れさってるようで。「イギリス人」が、「アメリカ人」が書いた文学ってこと?じゃあ国籍さえあれば居住地が全然別の場所でも良いってことなのか。イギリスやアメリカを舞台としている文学?いやいやそんなこともないでしょうよSFなら宇宙とかもアリですし、って事で今は「その国の言葉で書かれた文学」ってことに落ち着いてるようで。だもんでカズオ・イシグロさんの作品もれっきとした現代イギリス文学。ちなみに彼は生まれは日本とはいえ日本語は殆ど喋れないんだと。

イギリスの古き良き時代の執事の回顧録。良きにしろ悪きにしろ、自分で決めた道理を通して生きてきた人は、容易に後悔していることを自分に認めることすら出来ないんだよね。軽々しく後悔なんて口にするのは結局中途半端に生きてきた人だとつくづく思う。
でも柔軟だね。もう結構な歳だろうに立ち直って新しいことに挑戦する意気もあるんだから。健全だ。

[ 2011-02-11 ]

昔映画を観ておもしろかったので、原作はどうかと思ったら、同じようによかった。ついつい、アンソニー・ホプキンスとエマ・トンプソンの顔を思い浮かべながら読む。古きよき、執事の時代。
カズオ・イシグロさんの文章はやはり好きだなぁ。

読後、再び映画を観たけれど、原作をほぼ踏襲していて、どちらもいい作品だとあらためて思った。

[ 2017-10-26 ]

主人公の行動にいらつきを感じてしまったのは、その行動を反省し過去どうすればよかったという思いがそこに表れていたからだろう。旅をして仕事から離れ、過去を振り返る中で自分が何を成し遂げようとしたのか、何を失敗したのかを理解していき、最後にそれをはっきり自覚する、という流れだったのだろうか。ということを読んでしばらくしてから思った。
読んでいる最中と読後に反芻したときの思いが全く違う作品だった。読後に残るさみしさは何なのだろうか。

[ 2012-06-05 ]

A−イギリス・オックスフォードシャーにダーリントン・ホールという、大きなカントリーハウスがある。と言ってもこれは小説の中の話しなんだが。
B−何ですか突然、小説の話しとは
A−いや、カントリーハウスの建築については、様々な本があるが、そこでの生活については全く知らなかったと気づかされたんだ。
B−カントリーハウスですか、映画では時々出てきますよね、礼儀作法が滅法厳しい慇懃な執事とか。
A−ぼくが面白いと思ったのは、その役割なんだ。貴族の生活の場、自然をエンジョイする別荘という単純なものではない。一人の執事を中心として沢山の使用人たちによって維持される、一つの都市のようなものなんだ。国際的な政治交渉の場であり、秘密会談の場、事業の場、情報交換の場、そしてホテルであり、そこを訪れる人々、あるいは使用人として生活する人たちが様々な恋や人生を育む舞台のような場なんだ。建築写真や映画からは見えてこない、生きた世界がこの本には描かれている。
B−カントリーハウスの生活とはどのようなものなのですか。
A−大阪市立大学の福田晴虔氏の「パッラーディオ」(鹿島出版会)の中で、かれの建築を読み解く重要な鍵として「貴族の責務ーノブレス・オブリジェ」が挙げられている。この小説では1920年代のカントリーハウスが舞台だが、そこでの生活も、16世紀イタリアの同様、この責務が基盤となっている。責務を全うするダーリントン卿、執事職という役割から懸命に「主」の選択を信じ支えるミスター・スチーブンス。その役割は建築物同様あるいはそれと一体化し、ある種の品格を醸し出すものなのだ。小説は一時代の役割を終えたダーリントン・ホールの執事が美しいコンウェール地方をドライブしながら、かっての「主」との生活を回顧する形になっているが、テーマは偉大なイギリスの風景、イギリス貴族、そして豪壮な邸宅を語り、それを支える人々の役割と生き様を描くことにあるようだ。「うねりながらどこまでもつづくイギリスの田園風景、大聖堂でも華やかな景観でもない、偉大な大地、表面的なドラマやアクションとは異なる美しさを持つ慎ましさと偉大さ、この偉大さこそ大きな屋敷に使える執事の目標となるものである」と主人公の執事、ミスター・スチーブンスは語る。
B−「貴族の責務」ですか、それが建築にとって、どんな意味を持つのですか
A−住宅にしろ公共建築にしろ、建築である限り「主」がいるのが当然だ。しかし、その「主」は現代における施主とは些かニュアンスが異なり、どの時代でも、社会的、時代的責務に支えられた存在であったことが大事なんだ。その責務とは中世においては、日本も同様、宗教的精神の反映であったし、宗教改革以降のヨーロッパにおいては「貴族の責務」が基盤だったのだ。ダーリントン・ホールは執事共々アメリカの事業家を「主]として迎える、そして、ミスター・スチーブンスは新たな「責務」を持つアメリカ人を信じ、執事職を建築物と共に継続しようと決意するんだ。

[ 2017-12-13 ]

大学生の時にちょうど文庫化されて、本屋で平積みされていた。読もうかなー、と思いつつ結局読んでいなかったが、ノーベル賞受賞を機に、読んでみた。
「品格」とは?という問いについて、考えを巡らせる機会になった。
一番印象深かったのは、父との関係。そろそろ老いを迎える自分の父の姿を勝手に重ねてしまって、寂しい気持ちになってしまった。併せて、いずれ老いる自分自信が、息子に対してどう振る舞うのか、そのとき息子はどう感じるのか、など思いが巡り、不思議な切なさを感じた。
「私は良い父親だっただろうか」。

[ 2016-04-03 ]

最近起承転結がハッキリしたエンタメ要素の強いものを読んでいたので、この淡々と進んでいく様に少し戸惑ったが、驚いたのは言葉の運びの美しさ、繊細さ。悪く言えばまどろっこしいのだが、村上春樹や江國香織の言葉の紡ぎ方が好きな人は絶対好きであろう、上品さにまず、打ちのめされた。原書がどのような感じかは英語が読めないわたしにはわからないが、翻訳の美しさのおかげで退屈はしない。

まず狡いのは、一人称でさらに回想型っていうこと。舞台は第二次世界大戦が終わって数年が経ったイギリス。執事であるスティーブンスは1週間ばかり旅に出るのだが、旅先でのことにはほとんど触れず昔のあれこれを想う。
そう。これは語り手であるスティーブンスの過去の記憶なので、必ずしとも正確な記憶ではないのです。曖昧だったり、わざと曖昧にしていたり、自己防衛に走ったり、言い訳じみていたりというのが多々ある。生真面目な執事であるスティーブンスは自分の過ちを認めることができない。
かつての主人に仕える人生を送ってきたスティーブンス。もしあの時違う選択をしていたらあったであろう未来。彼の人生を顧みて、かつての主人あっての人生だったこと、現在、主人を亡くし、自身も老いたいまできることがあまりなくなっていることに気づき涙する。

が、ここでめげずに苦手だったジョークを覚えよう。新しい主人への奉仕を頑張ろう、残る人生を自身が想う完全たる執事として送ろうと前を向いていこうと決めた様はなんとも切なく、また、美しかった。

[ 2012-12-04 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-01-08 ]

オリジナリティが文自体から溢れてくる様な作品。とても読みやすく、物語に引き寄せられた。村上春樹とは文体も内容も大きく異なるが伝えたい事をそのまま文字として起こすのではなく何気ない文や言葉でとても上手に表現している事は非常に似ている。

[ 2018-07-31 ]

この本は、「古き良き時代」を懐古するという退屈な小説では決してなく、単純に泣けるとか笑えるとかいう類の作品でもありません。ただ静かに、しかしとても心の奥深いところに語りかけてくる作品です。特に終盤Mr.スティーブンスが人生を振り返るような部分にはジワッとくるものがあります。

Mr.スティーブンスが語る過去のエピソードの中に見え隠れするのは、徹底したプロ意識とそれに対する自問自答であるような気がします。でもMr.スティーブンスはMr.スティーブンスであって、そのようにしか生きられない人なのだと思いますし、その中でこそ高貴なる品格を失わなずに生きることが彼の生き様だったのだろうなあと思います。

誰しもきっとある程度の年齢になれば「あの時こうしていれば」とか「他に違う生き方があったかもしれない」とどこかで思うところがあるのではないでしょうか。

Mr.スティーブンスも多分ちょっとだけそう思っていながらも、最後に「これで良かったんだ」と、そして「自分の生き方は間違っていなかった」と振り返ります。
それは彼が彼自身である理由を見失わずに、ストイックに生きたからこそそう思えるのでしょう。

きっとMr.スティーブンスのように、いつか見知らぬ海岸沿いでそんなことをつぶやけることが幸せなことなのかもしれません。

設定が現在の日本から遠いのは確かです。例えばMr.スティーブンスのような「執事」はもう英国にさえいないのかもしれず、もしかしたら日本の侍のように、本当にその人達が過去にどんな精神性を持っていたのかは誰にもわからないような、もう消えた人種なのかもしれない。時代も国も違うし、少なくとも自分の周りに「〜ではありますまいか。」なんて言う人はいない。

でも300ページ以上に亘るMr.スティーブンスの語りかけに耳を傾けていると、こんなことを思うのです。「自分はこうあらねばならない」と思って生きている人って、とても一生懸命で、真面目で真っ直ぐで、だからとても不器用で頑固で誤解されることもあったりして、人生損してるような感じですよね。で、大抵アメリカンな時代感覚からかけ離れていたりしますよね。良い悪いとか好き嫌いではなくて、いますよね、そういう人。

自分はそこまでストイックに生きていないと思うのだけれど、少なくとも後悔はしないように、できるだけ自分にできることや自分が大切にすることを見失わないように、生きていたいと思うのです。

そんなことを、執事というペルソナに当てはめて語らせるカズオ・イシグロさんはさすがです。

他の方のレビューで翻訳が良いと書かれていたのですが、期待を裏切らないきれいな言葉ばかりでした。堅苦しくならずに品格を維持する語りは本当に凄いと思います。
思わず、「〜ではありますまいか。」っていう言い回しが日常でも口をついて出てきそうなほどに、素敵な翻訳でした。(皮肉ではありません笑)

[ 2011-07-21 ]

p.61「品格の有無を決定するものは、みずからの職業的あり方を貫き、それに堪える能力だと言えるのではありますまいか」
来し方を振り返るとか追憶とかいうよりも、心配性の妄想日記として読むほうが面白い。

[ 2017-11-18 ]

カズオ・イシグロがノーベル賞を受賞したので、彼の小説を一冊読もうと考えた。日本が舞台でなく、日本人が登場せず、「すばらしい新世界」のような英国伝統のSFでもなく、と消去法で選んだのが本書。老境にある執事が一人称で語るものがたり。その語り口は一貫して落ち着いているものの、現在および回想の中の様々な出来事に彼の心は微妙に揺らぐ。展開は淡々としているが、読書を飽きさせない筆力がイシグロにはある。結末は陳腐といえば陳腐かもしれない。第一次大戦後のパリ講和会議における英米仏間の軋轢や、第二次大戦前の英独間の関係など、近代欧州史の知識があると、本書の奥行きが感じ取れるであろう(残念ながら私の知識はミニマム)。翻訳がなめらかで素晴らしく、ときどき元の英文が全く想像できないような表現もあり、ぜひ原文でも読んでみたい。

[ 2015-10-24 ]

この本は私にはちょっと高尚過ぎ(笑)
でもスティーブンスってすごい
っていうのはよく分かった。
執事ってこんなに大変なお仕事だと
初めて知りました。

私には無理な職業だわ。

[ 2010-07-22 ]

抑えて抑えて最後グッグッと。
こういう流れを作れるイシグロさん好きです。
翻訳者の文体も素晴らしい。

[ 2011-05-22 ]

映画『私を離さないで』の影響で、原作者カズオ・イシグロ氏の別の作品も読んでみることにした。

主人公の執事スティーブンスがドライブの旅に出る。その道すがら彼は自分の執事としての人生を振り返る、という物語。
それが本当に淡々と、静かに、でも深い深い味わいで。
スティーブンスが「執事の品格」なんていうことを言い訳にするから、女中頭との恋愛は全く進展せず、あげく別の男と結婚されてしまうところとか、彼の不器用さというか、もどかしさにイライラしつつも、彼の人生にはまり込んでいった感じ。
最後、夕日を眺めながら泣く風景はとても美しい。

[ 2011-12-01 ]

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[ 2017-08-05 ]

現在は、ゆっくりと穏やかに過ぎていく。
過去は、簡潔に足早に過ぎ去っていく。
丁寧で美しい文体で、愛惜とともに、斜陽となりゆくかつての大英帝国が描かれる。

ココア会議。ユーモラスなミス・ケントンとのやりとり。そして思わず涙してしまいそうになる、再会。

[ 2018-05-28 ]

確か昨冬あたりにEテレでたまたま見たカズオイシグロのドキュメンタリがとてもおもしろくて興味を持った。
カズオイシグロのファンと公言する福岡伸一が著者のふるさと長崎を訪ね、日の名残の意味を解く、みたいな内容だった。ともさかりえや、蜷川幸雄、三木聡らも、それぞれの視座から探っていて、見ているうちに著者の謎めいた存在に引きつけられた。福岡伸一と著者の対談はとても面白くて、今作品はノスタルジーをテーマにしているとも言っていた。

古き良き時代の英国執事の人生を彼のモノローグで
振り返る。彼は仕事人間だった。執事としての品位を追い求めていた。女中頭の恋心は執事としての品位の二の次だった。時を経て、初老となった執事が女中頭と再会を果たし、彼女の気持ちを確かめる。そして、やっぱり執事は品位を保っていたと思う。「夕方が一日の中で一番いい時間だ」老人の言葉が人生を象徴している。

「大人にになるには、自分の至らないところを認め、自分をゆるすこと。現実には人生は困難だが、それでも折り合いをつけることを学ぶこと。自分に完璧を求めず、自分の至らない点を受け入れる術を学ぶこと」と、イシグロ氏はインタビューで話していた。


今、私がアラフォーでこの年齢で読んだからこそ、堪能できたように思う。

[ 2012-04-30 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2010-05-08 ]

E.M.フォスター作品をとりあげてきたジェームズ・アイヴォリーが映画化したのも大きくうなずける名作。
(ただし映画ではまだまだその深遠さを完全に映像化しきれていない。監督はこの人以外に考えられないが)
一言一言が奥深い示唆を含み、読後の余韻にいつまでも浸っていたい、“イギリスらしい”文学。
カズオ・イシグロはコロニアル作家の範疇になるのだろうか??

[ 2012-10-21 ]

「私を離さないで」以来のカズオイシグロ氏でした。ピリッとしつつもユーモアにあふれた小説だった。
年老いた品格にこだわる執事が旅の中で思い出す過去の出来事。
”イマ”の旅と”ムカシ”の出来ごとが流れるように進んで、すいすい読めて心にじんわり沁みます。

[ 2014-02-12 ]

大学時代に生協でユリシーズ原書が山積みになっていて「これは日本語で読んでも分からない。だから原書で読みましょう」というPOPがあって「なるほどな」と思いながらもユリシーズに突っ込む気概はなく隣にあった"Remains of the Day"を買って読んでみたりした。学生時代は翻訳の日本語精度にイラついて無理して原文で読んでいましたが、2000年代以降の翻訳は精度/文章力ともにあがっているのに気がついてからめっきり原文読まなくなりましたな。
原文の格調を残した、品格のある翻訳でした。素晴らしい。

[ 2019-09-28 ]

亡き主人を敬愛していた老執事が昔を思い出しながら、昔の同僚のもとへとドライブする数日を追っている。老執事の落ち着いた語りで進む文調。描かれるイギリスの穏やかな地方の風景といった作品内の今日。その一方で、老執事がバリバリ現役だった頃のさまざな出来事が語られる。それが老執事の誇りを成しているのだろうけれど、読み手にとっては少々滑稽に思えることもある。落ち着いた舞台でウィットに富んだコメディが繰り広げられているみたい。
めったにない休日に現主人に借りた車で会いに行った同僚とは、かつての女中頭。二人の二十年近くぶりの再会にも、老執事の妄想的な勘違いがスパイスを利かせている。
淡々と進むが読みごたえがある。人生の落日、いや日の名残りの時間を過ごす老執事の哀愁がやわらかく漂ってくる。

[ 2010-07-20 ]

「私を離さないで」が話題になってたとき、読みました。
翻訳小説になれていなかったこともあいまって、なかなかリズムをつかめなくて、苦戦しました。
中盤あたりからすいすい読めた。土地に根付いている文化ってあるなぁとしみじみした。

「私を離さないで」、結局読んでなかったから、近々読みたいです。

[ 2012-01-02 ]

品川区図書館に、蔵書あり。22年前イギリスブッカ賞、石黒5歳まで長崎で過ごす。福岡伸一が訪問。他、私をはなさないで。がある。訳は土屋政雄。

[ 2010-09-15 ]

哀愁を帯びた美しい物語。
主人公の老執事が過ぎ去った古き良き時代を懐かしく思い出す。
過ぎてしまったことは忘れて前を向いて新しい生き方をしたらどうか?と人は言う。
しかし執事としての職務を全うする代償に個人としては大きな痛みを伴いながらも、その生き方に誇りを持ち、執事としての人生に満足して過ぎゆく時代とともに朽ちていこうとする。
土屋政雄氏の翻訳も素晴らしいです。

[ 2010-04-01 ]

英国人の執事の思い出と、彼の心の想いを探る旅に一緒に出かけていくと・・・
イギリスでブッカー賞を受賞し映画化された作品。

[ 2011-04-25 ]

古風な執事のお話。自分の理想とする執事の美学に邁進し、全てを犠牲にする。武士道のようでもあり、滅私奉公する昔のサラリーマンのようでもある。その頑なで硬直した生き方に付き合わされ、イライラしながら読んだ。著者は何が言いたいの?と。そしたらラスト数ページで彼が自分の生き方に疑問を感じ涙を流すという何とも切ないラストであった。執事とは特殊職業だが、仕事にかまけ過ぎの全ての人がいつかは身につまされる話だと思う。自分の人生の優先順位を、主人公のように田舎を巡りながら見直してみたい。

[ 2017-05-01 ]

のっぴきならない場面もあるのに、はなしは一定のリズムを保って穏やかに進んでいくので、手に汗握るということもなく落ち着いて読めた。

スティーブンスの語りで成るこの作品、口調は常に冷静で、スティーブンスが自分の務めを全うしている様子がよく窺える。
ただ他の登場人物の言葉から、スティーブンスがときどき、感情的な、人間らしい行動をしているのが読み取れて面白いと思った。

まったく訳文と思えない、自然で美しい文章だった。何度も読み返したい。

[ 2018-04-24 ]

昔良き時代の近代英国を描いた映画や小説は、いくつか読んだ。
本書も、その去りゆく英国の中で、連綿と続いていた貴族社会、お屋敷と旦那様がいて、執事が取り仕切り大邸宅で華やかに政治や経済が動かされていく。
その執事の視点で、良き時代が終わっていく中で起きた出来事、華やかな時代の記憶、そして執事自体の女中頭に対するほのかな思いを描いている。

チップス先生さようならに描かれていた、謹厳実直という言葉を具体化したような教師の姿を、執事の映像に重ね合わせて想像しながら読んでいた。旧き良き英国のの終焉期、夕日に照らされてセピア色に映し出される世界。その姿を映像として観ていた。

そして、なにより驚きなのは、本書はその当事者たる英国人が書いたのではなく、日系人のカズオ・イシグロが書いたということ。彼はこれを英語で書いたので、やはり彼は心の底から英国人なのだろうなと思った。日本人何人目のノーベル文学賞などという言葉が空虚に感じられた。

[ 2018-01-30 ]

2018/01/30
何ともバカ真面目な執事のお話。
全体を通して真面目過ぎて、ラストはクスッとさせる。
とても真っ直ぐで頑固な人、いるよねぇ。

[ 2010-02-11 ]

『私を離さないで』もよかったけど、これも、すごくよい。
読んでいる最中に感じる面白さという意味では、今のところ『日の名残り』の方が好きです。
自分が古びること、自分の存在意義が滅びてゆくこと、がテーマの小説、なのだと思います。
本当に行儀に適った小説です。
テーマとか主張とか、つい作者が登場人物の口やモノローグを借りて説明しはじめてしまう凡百の赤裸々な小説とは違い、
ただただ外堀を埋めることで確かに読者を見せたい景色の前まで運んでいく抑制の利いた筆致。
好きです。
今、主人公の父が『失くした宝石を探すように』あずまやの石段を下を向いて歩いているシーンを過ぎたところ。
比喩を使うと小説は腐敗するとかいうけれど、このカッコ付きの映像的な比喩は、響きました。
多分作者としては渾身の一撃というか入魂の一投なんやけど、冷静な提示の仕方で読者を醒めさせないのがさすがやなと思いました。

うーんおもしろい。しばらく楽しみます。

====================
『日の名残り』やっと読了。
最後、リトルコンプトンに着いてからの時間的な濃密さに、思わず緊張感でハァハァしました。
しかもラストの桟橋のシーンときたら、劇的な悟りとでも言うべき視界の開け方というか、わかってはいたけれど直視するかどうかを思案するために建てておいた堰が決壊したというか、
人が打撃を受けたとき、内部がいっきょに顕わになる感じ、それでも日常に踏みとどまるように働く保護本能とか、うますぎて頭垂れざるを得ませんです。

しかし丸谷才一の解説ってすごい含蓄あるけど、直截的で余韻も何もない(悪いといってるわけじゃなくて私が感傷的だということです)。
あらすじを3行でまとめる力業には恐れ入るけど本編読んだ直後に読むのでなかった(笑)。

[ 2011-07-10 ]

 味わい深い。ジョークについて真剣に悩んでいるミスター・スティーブンスかわいい、と思った向きも多いのではありますまいか。翻訳がすばらしい。

(Kちゃんに借りた本)

[ 2015-08-25 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2010-02-15 ]

英国執事好き必読。執事という仕事に誇りをもって人生を捧げてきたスティーブンス。だけど時代が変わり、価値観も変わり…。淡々と語られる執事の心の動きに引き込まれます。翻訳の日本語の美しさや浮かぶ風景も素敵です。

[ 2011-04-07 ]

執事とはどんな人物なのか に興味があった 主人に仕え 女中や下僕を取締り 時には私情を押し殺してまで仕事に徹する ありし日のイギリスを描いた作品 執事と女中頭の淡い恋模様には夕日がにあう 卿への全幅の信頼と敬愛を寄せる姿がなんだかかなしくてあたたかいと感じた

[ 2013-11-20 ]

読み終わって、胸につーとのびて染みていく余韻。そういうのがあると、ああ、これは名作だわ、としみじみ思う。あくまで自分の使命に真摯に捧げてきたスティーブンスの独白が、あまりに品格を重んじすぎたゆえに人間的な情緒が希薄にならざるをえなかったことが、何とも言えない哀愁を漂わせるのだけど、一番この小説がすごいなと思うのは、まるですれ違う人と人との関係のように、絶妙に噛み合わない会話の見せ方。特に医師とスティーブンスの車での会話はなかなか秀逸だと思う。最後に新しい主人のために帰ったらジョークの練習をしようと真面目に考えるスティーブンスが滑稽でまた何ともいえず愛おしい。そういや、これと似たようなプロットの中島京子の「小さいおうち」もおもしろかったな。この小説を読んだんだろうか。

[ 2019-01-21 ]

ある執事の旅の6日間と、その執事の過去の記憶を描いた話。正直淡々としていて、あんまり面白いと思うところはなかったんですが、なんだかんだ一気読みしてしまった。

特に印象に残ったのは、
p61
品格の有無を決定するものは、みずからの職業的あり方を貫き、それに堪える能力だと言えるのではありますまいか。
の部分。
自分の仕事を振り返っても、品格は無いかなーと思ったりしますが、まあ、この主人公の振る舞いを見ていると、品格も良し悪しかなと思わないでもないです。もう少し人情味があってもいいんじゃないかなと。

[ 2010-02-25 ]

「人生一度きり」ということをたまらなく痛感させられた。
イシグロさんらしい哀愁感漂うラストに思わずホロリ。

[ 2016-03-30 ]

主人公が傲慢で鼻持ちならない、と思った
でもそうやって自分を否定しつつ肯定しつつ昔を思い出すのはよくわかる。きっと本人は自分が悪かった部分も気づいていながら、それでもちょっとした装飾をして語っているのだろうと思う。

[ 2018-01-19 ]

たぶんこれを読んだら、ウッドハウスのジーヴズの事件簿あたりが頭に浮かぶのが普通なのだろうけれど、残念でした。天川風水の伯爵家女中伝が浮かんでしまったのです。執事と女中頭が…などと…。すんませんっした!
国家と、社会制度と、自らの人生と、いろんなものが斜陽の時を迎えた男の切なくも美しい物語でした。

[ 2012-04-09 ]

執事小説の代表格だけあって、よくできているんだろうとは思う。1920年代~30年代のイギリスの文化や雰囲気が細部まで丁寧に書き込まれていて、その世界にどっぷり浸かれるし。

ただ、私の好みの執事ではないんだな、主人公・スティーブンスが。

スティーブンスの姿勢は、“忠誠心”を笠に着た“怠惰”と“鈍感”だ。彼が執事として備えているべき広い視野、冷静な視点、繊細な配慮をもってすれば、当然捉えられるであろう人間関係、客観的な事実から、彼自身、目を背けている。「すべて主人の意のままに」という大義名分を言い訳に、自ら考えることを放棄している。当人もそのことに無意識ながら気付いていて、それを認識したからこそ、最後は涙し、新しい主人との関係に意欲を持って踏みだそうとするんだろうと思うのだけれど。

ただの妄想だ、幻想だと言われようとも、自らの意志をもって主人との信頼関係を構築し、様々な感情に気付きながらも、それを冷静に退ける、抱え込む……そんな人であってほしいのだ、執事には。ただの召使いじゃないんだから。

もしかしたら、執事小説で、執事に語り部をさせるのもよくないのかもしれない。過去の栄光を、自らの哲学をしゃべりすぎる執事って好きじゃない(最近の「萌え執事」も好きじゃないけど)。

やはり現状、私的執事モノ最高峰は、三谷幸喜「国民の映画」で小林隆さんが演じたフリッツだな。

[ 2010-02-24 ]

 イギリスの名家に勤める執事、スティーブンが元同僚と会うために旅にでる。その間、思いをめぐらせる。

 伝統的なイギリスと本の裏にあるが、その通り。
 でもって、この主人公が執事としては優秀なのかもしれないが、人間としては面白みがさっぱりない。さっぱりないんだけど、だんだんシンパシーを感じてくる。
 カズオ・イシグロ、上手い!
 「品性」という言葉がポイントのように出てくる。品性が失われた時代に、あえてこれを問うという、手法は古めかしいが切り口は斬新なのである。
 つまり、古い皮袋にいれた新しいぶどう酒か…。

 村上春樹が、「わたしを離さないで」を絶賛していたのが、納得。
 さっさと、文庫になってくれるといいんだがな。

[ 2017-12-09 ]

内容(「BOOK」データベースより)

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

平成29年10月8日~12月9日

間に数冊の本を読みながら、少し時間が掛りすぎました。

[ 2009-09-20 ]

堪らない。すばらしい。読んでよかった傑作です。
近年あんなに泣いた本もない。原書も買いたいのですが、日本語になったときの美しさも捨てがたい。いつかまた、きっと読み返すと思います。

[ 2018-05-07 ]

執事の回顧録。映画化されたものは見ていないものの、アカデミー賞にノミネートされ、アンソニーホプキンスとエマワトソンが出ているのは知っていたので、読んでいるあいだ中脳内変換される。在りし日の自分の言動を緻密に分析して回顧しているのだが、執事としての品格を保とうとするあまり、自身の思いを意識の中にも浮き立たせない演技を観たくなった。

[ 2011-08-13 ]

面白かった。仕事と人生の話だと思った。あと、社会と仕事と。
読んでいて巧みだなぁと思ったのは、職人気質?な執事に共感していた自分の気持ちが徐々に「あれ?それでいいのかな?」とはなれていったところです。

最後の夕暮れの場面に続いて、◯◯の練習をしようかと思うラストの一文が私には嬉しかった。

[ 2010-05-22 ]

エンタメ作品に続けて読んだせいか最初は単調な感じがして物語にうまく入り込めなかったが読み進めるうちに深く静かに心のうちにじんわりとした感動がたまっていく。
短い旅行の狭間に人生を振り返り仕事に対するこだわり父への尊敬ミスケントンとの様々な出来事。
執事としての品格、男として生き抜くことへの矜持を強く強く感じる。

[ 2009-07-21 ]

内容:古きよき時代のイギリス。大邸宅には必ずと言っていいほど居た執事が昔を振り返りつつ、元女官長を尋ねる旅に出る。思い出と現在が入り混じりつつ、語られる。
感想:イギリス好きにはきっとたまらなく好きだと思われる世界観を元に描かれる風景と人々。
文句なしに雰囲気を味わうことが出来る。そこには居なかったはずの自分が
どこかノスタルジックな気持ちを味わうことが出来るのは、作者の描き出す世界が古きよきイギリスのイメージそのままだからだろうか。
映画もよかったけど、原作も好きです。

[ 2017-11-11 ]

第二次大戦前から英国貴族の邸に務めていた執事が語り手。時代が流れ、邸の持ち主がアメリカ人実業家に変わり、年をとって思うように仕事を切り回せなくなって、かつてともに働いた女中頭に会いにゆくために旅をしながら、自身の半生を振り返り見つめ直す。時代の変化とともにかつて手にしていた充実感と栄誉が失われ、それまで頑なに縋ってきた価値観が揺らぎあるいは崩れてゆく中、そのことを受け容れがたく感じてなお縋ろうとする語り手の矛盾と、最後になって意地が突き崩れて吐露する思いが切ない。

[ 2017-11-03 ]

最後の章が想像以上に切なくて、なんだよーもー、ばかばかミスター・スティーブンスのばか、という感想。あと「ココア会議」ってかわいい。

[ 2009-06-06 ]

内容の良さもさることながら、土屋 政雄さんの訳が素晴らしいと思う。翻訳本ということを忘れるくらい、日本語がしっくりきます。

[ 2017-06-24 ]

名作を読みたくて。

偉大さとはどこからくるのか。
職務による分を徹底した立ち振る舞いから現われる品格。

人生の選択を誤ることはある。
誤りに気づいたときにどうするのか。

品格を、生き方を貫いた後に残るもの。

[ 2009-05-15 ]

最盛期には、英国の中でもトップクラスの力を持っていたある貴族に
仕えていた執事が主人公の回想物語。
古き良き時代のイギリス、華やかな屋敷の風景から一転
戦争、そして主人の転落。
新しいアメリカ人の雇い主になじみきれず、
自身の執事能力の衰えを感じずにはいられずに、
人生の「夕暮れ」に近づいていることを実感する主人公。

淡い恋の回想と、ラストはありがちな話だったけど
なぜかどうしても切なかったです(;ω;)

スティーブンス(執事ってなんでみんなスティーブンスって言うんだろう)の
主人にたいする信頼とか、仕事に対する真剣さが
がちがちにまじめで堅苦しすぎるけど、そこが良い。

個人的に女中頭のミス・ケントンの人生が
今ならむしろ現代的なんじゃないかなぁと思いました。
仕事を続けるか、それとも引退するかのところとかが。。

カズオ・イシグロの本を立て続けに二冊読んで
なんとなくその雰囲気がわかってきました。
好きか、嫌いかでいうとあんまり好きではないけど;;
「日の名残り」は読みやすくておもしろかったです。

[ 2015-02-08 ]

晩年に差し掛かり、自らの支えにしてきた主人への忠誠、職務への誇りがバラバラに崩れ去りそうになる中で、人生の意味について惑い考える老執事。古い友人を訪ねる道程で、時は戻らないことを悟り、新たな一歩を踏み出す勇気を得ていく。ブッカー賞を受賞した、カズオ・イシグロの傑作長編。

[ 2019-08-12 ]

カズオ・イシグロ2作目。古き良き英国を感じた。ところどころユーモア散りばめられていて読みやすい。
ミス・ケントンに再会する場面は、ほろ苦く微笑ましく。
50くらいになって読むと、また違った味わいになりそう。

[ 2011-06-09 ]

2011.06.09
授業で原作の方を使ったのだけど、英語だけじゃ理解できない部分も多かったので補助に買いました。
まず、先生も言っていたのだけど、訳が素晴らしい。
すごく雰囲気が出てるし、例えば"godfather"の話の所も、日本には馴染みがない習慣だから、さりげなく補足が加えられてる。

留学時代にショートストーリーの"Family Supper"を読んだけど、カズオ・イシグロのお話の雰囲気は好きだなー。これって盛り上がるメイン・イベントは無いんだけど、静かで、でも響く物があると言うか。

[ 2010-02-02 ]

作品全体に漂う、過ぎたものを惜しんで愛おしむ切なさ
ずっと抱いて来た信念と美学を揺るがす違和感がゆるやかにあらわになる過程…本当に上手い小説だなあ、と。

個人的なことと社会的なことがうまく絡み合って、さらに英国そしてヨーロッパの特性、「伝統」
伝統は歴史のこと。その歴史に含まれる悪。

ノスタルジーの空気でいっぱいでありながら、ノスタルジーそのものを本当に肯定すべきなのか?と問いかけて来る小説。すごいです。

[ 2010-03-30 ]

-品格の有無を決定するものは、自らの職業的あり方を貫き、それに堪える能力だと言えるのではありますまいか-

1989年ブッカー賞(イギリス文学賞の最高峰)受賞作。1993年にジェームズ・アイヴォリー監督で映画化されたので皆さんタイトルは知っているのでは?!
カズオ・イシグロという「外」の経験のあるイギリス人が、愛情いっぱいに、しかし客観的に、「古き良きイギリス」を語っているのがよいのだと思う。

イギリスの長閑な田園風景、執事という仕事の位置づけ、品格のあり方、イギリス外交、そして主人公スティーブンスの人生、全てが"夕暮れ時"、Remains of the Day、というタイトルに戻っていく。

夕暮れ時は、涙が似合う。

名作。

[ 2009-02-23 ]

ストーリー、話の組み立て、ところどころに挟み込まれるユーモア、卓越したセンスに技術、それら全てが素晴らしい。
小説に、まだこれほど良いものがあるとは思いませんでした。
最近は、ブログや日記、ケイタイ小説など、だれでも文章を書いて発表することができて、ヒットする作品の多くが、素人の書いたウェブ発のものだったり、ケイタイで書かれていたり。
それはきっと良いことで、これからもこの流れは止まらないだろうと考えていましたが、このような作品に出会ってしまうと、やはりプロと素人の差はあまりにも大きいと考えざるをえません。

「品格の有無を決定するものは、みずからの職業的あり方を貫き、それに耐える能力だと言えるのではありますまいか。」

「人生たのしまなくっちゃ。夕方がいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方がいちばんいい時間だって言うよ。」

[ 2015-06-20 ]

主観で物語が描かれるのに、ここまで人間らしく美しく構成されてるのに感嘆した。
人の持つ信念と思い込みと矛盾が表されていて、読み終わった今染み込んでくるように悲しい。

[ 2009-01-15 ]

読み終った瞬間にもう一度はじめから読み始めた小説はこれがはじめて。カズオ・イシグロの現時点最高傑作。

[ 2010-09-15 ]

何度読み返しても、読み応えがある。
話はイギリスの、それも1950年代の話にもかかわらず情景が頭に浮かぶ。
そして、なぜか郷愁を感じる。

カズオ・イシグロの作品で最も好きな作品。

[ 2010-08-12 ]

言葉が美しい。
全体的に茶褐色でちょっとダルトーンな感じ。
英国執事の淡々とした回顧、というより“懐古”録。
堅苦しい物語なのかと思ったら意外と笑える。

生真面目で、
クサクサした煮え切らないミスター・スティーブンス。
ああしていたらどうだったろう、
いや、私のしたことでいいのだ、
と懐古しているのだけど、いいわけがましい感じで
イラッとするわー。

だけど、人は迷ったとき、こうなんだろうな。
ああしていたらどうなっていただろう、
自分の選んだことでいいのか、
いや、よかったのだ、と思いきかせる。

最後のおっちゃんの言葉に、
未来に目を向けられたのはよかった。
今は過去の積み重ね、未来は今から積み上げるもの。

[ 2010-02-05 ]

(2010/02/08読了)

09/6/14
積読
10/2/4
再読開始
序盤は、スティーヴンスの語り口が鼻について、なかなか読み進めなかった。
(『わたしを離さないで』を読んだ時もそうだった)

終盤は良かった。
「日の名残り」の「日」とは、大英帝国の過去の栄光であり、過ぎ去った人生の最良の時のことだろう。
旅の終りに「日の名残り」を見つめながら、スティーブンスは主人ダーリントン卿の過ち、そして自分自身の過ちを確認し涙する。

スティーブンスはこの時、60歳前後か?少なくとも、若くはないだろう。
人生の終りさえ意識し始めるであろうこの歳で、自分の信じてきたものの過ち、虚しさを認めるということは、どれ程の哀しみと切なさをもたらすのか。

通りがかりの男が、スティーブンスに語った言葉が全てを救ってくれるような気がする。

━━ 「(省略)いいかい、いつも後を振り向いていちゃいかんのだ。後ばかり向いているから、気が滅入るんだよ。何だって?昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休む時が来るんだよ。(省略)そりゃ、あんたもわしも、必ずしももう若いとは言えんが、それでも前を向きつづけなくちゃいかん」
「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日で一番いい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。(省略)」(350頁)

日の名残りを見つめる時こそが最良の時なのだ、と言えるような人生を送れるだろうか。


2010/11/**
映画を観た。
ポプキンスは好きだが、スティーブンスのイメージとは違う気がする。あくまで個人的に。キャストよりも、ストーリーに問題がある。大事なところを端折るな。

[ 2010-04-20 ]

英国執事小説。
なんというか・・・とても格調高い感じのする小説。
執事が語る、お屋敷の仕事やご主人様のこと、はたまた品格について・・・。味わい深い話です。
最後は、静かな感動に包まれました。
でも、「わたしを離さないで」のほうが物語に入り込めたな。
これはこれで、素晴らしかったのだけれど。
品格についてスティーブンスが言ってた面白いこと忘れちゃった。

[ 2008-12-31 ]

大好きな小川洋子さんがFMラジオでとりあげてらっしゃたので読んでみました。 キーワードは『品格』でしょうか。 それがちょっと滑稽に描かれているように思います。

[ 2011-04-15 ]

カズオイシグロの本は初めて。友人絶賛のわたしを離さないでも読んでみよう。とても良い本。
古き良きイギリスの古き良きプロフェッショナルがとても新鮮。職業とは何かを考えさせられる。

[ 2008-11-18 ]

The evening's the best part of the day
夕方が一日の中でいちばんいい時間なのさ
You've done your day's work
一日の仕事を終え
Now you can put your feet up and enjoy it
脚を伸ばしてのーんびりと過ごす
That's how I look at it
わしはそんな風に思っとる

五十年後、誰かにそう言いたい。

You've got to enjoy yourself
人生は楽しまなくちゃ損だ

[ 2010-09-27 ]

ちょうどウッドハウスのジーヴスものを読み始めていて、ナイスタイミングでした。物語としてとても面白いだけでなく、当時の社会や歴史が透けて見えるのも興味深い。政治談義のくだりとか、品格、領分、誇りといったものに対する考え方についても。現代人から見ると歯痒くって仕方ないことも多いんだけど…

[ 2009-06-02 ]

ジェームス・アイボリー、アンソニー・ホプキンスで
映画化された『日の名残り』の原作。
映画はジェームス・アイボリーということもあり興味があったので、
原作を読んでみたのだけれど。

良品ということはよーくわかるのだけど、
『私をはなさないで』のイライラ再現…。
私はカズオ・イシグロはダメかもしれない。
でもこの作品の主人公は執事ということなので、
過剰に思える丁寧さと回りくどい表現も納得できるか…、と
一端了解するとじわじわと物語に入り込めて、
最後にはゆっくりとしたカタルシスが。
うーん、なるほど。

ただ良い作品と好みの作品は別なので★3つ。
『私をはなさないで』よりは好きかな。

ついでに言うと相変わらずハヤカワepi文庫はサイズが嫌いなので
購入予定はなく、
これも友人から借りたもの。

[ 2011-11-08 ]

気品と情感。ひさびさにこんなに素敵な余韻にひたれる本を読んだ気がする。
主人公の老執事の語り口は思い出語りと現在の様子とを行きつ戻りつする。彼は若き日と古き良きイギリスと懐かしみ、自らの成長と矜持を穏やかに語る。そして今これからも執事として新しい境地を拓くことに、楽しみをみいだしている。
最後の夕暮れの桟橋の情景は、美しく、優しく、清々しい。

映画観たいな。

[ 2008-09-08 ]

長崎生まれ、英国育ちの著者のブッカー賞受賞作。
実直で勤勉な老執事、スティーブンスの短い旅に込められた思いや目的を美しい言葉で綴った小説。
(原書ではなく日本語訳を読んだので、翻訳者の力量もある)
古きよきイギリスの空気を感じられる1冊。

[ 2013-12-12 ]

タイトル通り、一番輝いていた時が過ぎ、その名残の中で過ぎた日々を振り返るダーリントン・ホールの執事スティーブンスの独白。

長年仕えたダーリントン卿への想いと現在の所有者であるアメリカ人ファラディへの想い。
二つの大戦の間に、邸内で催された数々の会合の思い出。
女中頭ミス・ケントンとのやりとり。
父もまた同じダーリントン卿に仕えた執事で、その父に対する冷静な目。

英国の名家の品格ある執事として使えるということを体現することで、ひとりの人として生きることとはかけ離れてしまったことを知ることになった自動車旅行。

執事は英国の文化そのものなんだろうな。

ミスター・スティーブンス
ダーリントン卿
ファラディ
ミス・ケントン

P41外国の風景がーたとえ表面的にどれほどドラマチックであろうともー決してもちえない品格がある。そしてその品格が、見る者にひじょうに深い満足感を与えるのだ、と。
この品格は、おそらく「偉大さ」という言葉で表現するのが最も適切でしょう。
今朝、あの丘に立ち、眼下にあの大地を見たとき、私ははっきりと偉大さの中にいるいことを感じました。実にまれながら、まがいようのない感覚でした。国土はグレートブリテン「偉大なるブリテン」と呼ばれております。少し厚かましい呼び名ではないかと言う疑義があるやにも聞いておりますが、風景一つを取り上げて見ましても、この堂々たる形容詞の使用はまったく正当であると申せましょう。
では「偉大さ」とは、厳密に何を指すのでしょうか。それはどこに、何の中に見出されるものなのでしょう。この疑問に答えるには、私などうよりずっと賢い頭が必要であるのは承知しております。しかし、あえて当て水量をおゆるしいただくなら、私は、
表面的なドラマやアクションのなさが、我が国の美しさを一味も二味も違うものにしていうのだと思います。問題は、美しさの持つ落ち着きであり、つつましさではありますまいか。イギリスの国土は、じぶんの美しさと偉大さをよく知っていて、大声で叫ぶ必要を認めません。

P149「私にはあなたが”プロ”という言葉で何を意味しておられるのか、大体の見当はついております。それは、虚偽や権謀術数で自分の言い分を押し通す人のことではありませんか?世界に善や正義が行き渡るのをみたいという高尚な望みより、自分の貪欲や利権から物事のゆう線樹にを決める人のことではありませんか?もし、それがあなたの言われる”プロ”なら、私はここではっきり、プロはいらない、とお断り申し上げましょう。

P350なあ、あんた、わあしはあんたの言うことが全部理解できているかどうかわからん。だが、わしに言わせれば、あんたの態度は間違っとるよ。いいかい、いつも後ろを振り向いていちゃいかんのだ。後ろばかり向いているから、気が滅入るんだよ。何だって?昔ほどうまく仕事ができない?みんな同じさ。いつかは休むときが来るんだよ。わしを見てごらん。隠退してから、楽しくて仕方がない。そりゃ、あんたもわしも、からなずしももう若いとはいえんがそれでも前を向きつづけなくちゃいかん」そしてそのときだったと存じます。男がこう言ったのはー『人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。みんなにも尋ねてごらんよ。夕方が一日でいちばんいい時間だって言うよ」

[ 2018-02-24 ]

かなり独特な雰囲気で面白い。
カズオ・イシグロの作品の中では一番これが好き。

淡々と主人公の旅と思い出の回想録のように思えるが、その中に彼の伝えたいことが皮肉にも描かれているように思える。

[ 2011-08-14 ]

イギリスで最上の賞、ブッカー賞を受賞した作品。

ただ思う、こういうものにかれらは弱いのか、と。個人的にはあんまり感動もせず、しかしまぁイギリス人にしてみれば哀愁誘う作品なんだろう。

[ 2010-10-23 ]

地味に生きることのかっこよさが溢れてる。

執事小説だけど、おっさんの淡ーーーーい気持ちが精緻に書かれていて、でも翻訳だと地の文も敬語使ってたりするから英語で読みたいーーーと思って3年。まだ英語で読んでない。

主人であるダーリントン卿のために人生捧げて尽くしてきた執事スティーブンスの細かい感情が、一見穏やかに回想してる風を装って、実はものすごい滾っている。
長年ダーリントン卿に仕えてきたプライドと、寝ても覚めても執事であることへの義務感と、今ある現実が上手く噛み合ずにいて内心そわそわしてるのに、旅に出ても執事でいるスティーブンスの気持ちの描写は涙なくして読めますん。

ミス・ケントンがスティーブンスを支えてあげていれば!ケントンのばか!!とも思うけど、彼がこういった感情を持つ事は実にすばらしいことで、ミス・ケントンへの恋心が単なる淡いもので終わったからこそ彼は本物の執事になれたのだと思う。

でも現実世界にもこういうオッサンはけっこういると思う。これを読むと、そういう人に優しくしてあげられること間違いない。 むしろ、愛しくさえなるかも。

スティーブンスの旅は、彼にとってはある意味アンラッキーなバカンスだったのでしょう。でも、旅すらもアンラッキーに出来る程、彼はプロフェッショナルだったわけで、それすら気づかない程、彼は夢中だったのね。仕事、というか自分に。

「ある人の発達の決定的段階に何事か起こり、その人の能力の限界に挑み、それを拡張させます。その何事かを克服した人は、それ以降、新しい基準で自分を判断する事になります。」

スティーブンスは間違いなく体育会系執事にちがいない。この一言だけなんか違和感あった。

[ 2008-09-11 ]

執事の仕事がどういうものかよくわかり、興味深かった。

一人の執事の人生に胸を打たれた。

仕事についてプロとは何か?品格とは何か?など奥深い内容が詰まっていた。

[ 2018-07-07 ]

初めてのイシグロ氏。前にNHKの番組見て興味ありました。執事の回想録なんだけど、一流の執事とは何たるやが書いてあったりイギリス文化を知る上でも良かった。

[ 2019-05-08 ]

「夕方が1日でいちばんいい時間」

品格を追及してきた老執事が数日の旅に出る

亡き主人への想い
古き良き時代への回顧
かつての仕事仲間への秘めたる恋

旅の終わりに彼は静かに涙する。
美しくも切ない物語

[ 2016-03-29 ]

過去の栄光を引きずる英国執事の独白。
必死になって自己正当化している姿は見るに堪えないものなんだけど、その語り口に引き込まれ最後まで読んでしまう。
そして、「あぁ、そう言うことなのか。」と、感じ入ってしまう。

それとハヤカワ文庫って、普段使ってるブックカバーのサイズに合わないんだよなー

[ 2008-05-10 ]

これは学生時代に授業の課題として読んで、また最近読み直しました。
多分、人生の中でベスト3に入る本だと思う。

しっとりとゆったりと、主人公の男性の半生を思い起こすような物語。イギリスの執事文化からアメリカ富豪だったかにお屋敷を買われてしまったり、使用人たちとのやりとりや風景を想像するのが楽しいです。
執事としての仕事、仕事に対するプライドが現れる部分はとても興味深かった。仕事一筋で真面目な主人公の不器用さが愛しいです。
これ映画もあるのですよね。見てみたいなぁ。

あとイシグロさんの他の作品も読んでみたいと思って購入はしてますが、まだ読めてない・・・。今度の出張の移動時間に読むのに持っていこう。

[ 2008-05-15 ]

タイトルのカッコよさに惹かれた。内容はもっと良かった。
振り返ると、そこには時間が静かに重なっていた。そんな話。

[ 2012-06-21 ]

カズオ・イシグロの描く静謐な物語。
栄華をほしいままにした、秩序ある大英帝国の陰りを、緻密な時代考証と風俗調査を重ねて見事に一つの世界として構築しています。

大邸宅の一切の管理を仕切り、主人であるダーリントン卿に絶対の忠誠を尽くす、まさに執事の鏡といえる主人公スティーブンス。
常に完璧を期しており、主人からも篤い信頼を寄せられており、訪問客からの賛辞を誇りに日々過ごしています。
現在では様相が変わり、新しく変わったアメリカ人の主人から、数日のドライブ休暇を提案されたことで、煩雑な毎日から離れ、これまでの半生を見つめ直しはじめた思い出語りで話は進みます。

彼には、やはり屋敷の執事をしている父親がおります。
これまた有能な執事であり、息子の尊敬を一身に受けているようではありながら、実際に親子が対面すると、意外にも他人行儀でかなりギクシャクした間柄であることが感じられます。

良き執事たることをモットーに、厳しく育て上げられたためだと考えられますが、それよりも父が、執事の面が強すぎて、父親として接してやらなかった様子。
そうして成長した主人公は、立派な執事になったものの、人間としてはどこか感情を落としてきたような面が見られます。

イギリスの首相と外相とドイツ大使が外交会議のために集まるほどに立派なお屋敷。
会の成功のために、忙しく立ち回る執事。
その中で、父親が倒れます。
その死期を感じながらも、任務遂行のために仕事に戻っていく主人公。
父の臨終に立ち会えなかったことを悔やんでいるかと思いきや、「その日の会合は成功し、こんな誇らしい日はなかった」と思い起こしているところに、ひやりとしました。
やはりこの人は、人間として肝心な感情が欠けているようです。

女中頭とのやりとりも語られます。時に反発し合いながらも、彼女の才能を見込んでいる彼。
ただ、冷静で無駄のない仕事運びの中に、時折彼女に関する感情がちらつくことに、読みながら気付きます。

好意を寄せる彼女がプロポーズを受けて離職を申し出た時も、止めるでもなく慇懃に祝辞を述べ、自分の反応を求めていても応えずに、仕事へと戻っていった彼。
その時々は、全て仕事を最優先しておきながら、それでもどこかに引っかかっていた父親、そして女中頭のこと。

なによりも第一に置いていたお屋敷の仕事、そして執事としての主人への忠誠ですが、やがて時代は変わり、政界の名士として知られたダーリントン卿は、ナチスへの協力者としてそしられるようになります。
何も気づかず、清廉に活躍していたはずの卿。
やはり何も気づかず、ひたすら主人に尽くしていた主人公。

大きくうねりゆく時代の波に乗れないまま、ゆっくりとかやの外へとはじき出されたような二人の姿が明らかになってきます。
卿も今は亡き人となり、新しい時代の象徴として、アメリカ人がこの屋敷を所有するようになりましたが、彼の軽妙さになかなかついていけずに困惑する主人公。
長い時間を変えてこれまで培ってきた慣習や考え方から抜け出るのは、並大抵のことではなさそうです。

屋敷を離れ、一人になり、新鮮な風を受けて客観的に考えることで、立派な人格者ではあれど、結果的に失敗の人生を歩んでしまった卿について、きちんと考えられるようになった彼。
同時に、自分もまた、完璧な執事を常に目指したために、犠牲にしていったもろもろの感情に、ようやく目を向けることができるようになったのです。
最高の執事としてのクオリティを保ち続けていながらも、一人の人間としては不完全にすぎなかったことに気づき、人として犠牲にしてきたものの大きさを知って、海を見ながら涙するスティーブンス。
このラストシーンには胸を突かれました。

これまで、個人的な感情を表だって出すことをよしとせずに、自分を封じ続けてきた執事としての自分から、ようやく人としての自分に戻ることができたのです。
イギリス、そして自分自身の日の名残りを、涙を持って見送る彼。
執事としての人生を全うした父が、それでも息子を残したことに比べ、主人公は恋愛に手を伸ばすこともないまま、子を成していないというのも、暗示的。

やるせなさに包まれますが、それでも読後感が暖かいのは、彼が泣いているだけではなく、屋敷に戻ったら、新しい主人ともっとよりそってみようと、決意を新たにしているからです。
これまでの、頑なにも取れるストイックな求道的仕事スタイルから、新たな世界への柔軟な変化が感じられる、ささやかながらも希望に満ちたエンディングとなっていました。

古式ゆかしき大英帝国の香りが全編に漂っています。
アングロサクソンでないのに、ここまでイギリスの執事について詳細な描写がされていることに舌を巻きました。
太宰の『斜陽』やチェーホフ『桜の園』を彷彿とさせる、時代の変遷による貴族の没落がテーマとなっていますが、中でも群を抜いて重厚で緻密な作品となっています。

一日、何もせずに、ただ読んでいたい物語。
著者独特の、悲しみが織り込まれた物静かな世界をじっくりと堪能できました。

[ 2019-09-16 ]

【G1000/25冊目】ミス・ケントンに出会うまでわずか4日のスティーブンスの心の揺れ様はダーリントン・ホールで過ごした数十年ではあり得ないほど揺れ動いたであろう。ダーリントン卿の執事として過ごした日々、ファラディ氏に仕えた数年間。屈指の歴史を持つソールズベリーという地を選び、英国と米国の違いを浮き立たせる。ミス・ケントンをミセス・ベンと呼ぶスティーブンスが痛々しい。既にスティーブンスの心の拠り所は遥か空想の中でしか無くなっていたのかも知れない。残り短いスティーブンスの余生が穏やかであらんことを。

[ 2012-03-19 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2008-07-19 ]

「ザ・モラル・リーダー」教材。ハーバード・ビジネススクールにある軍学講座い。リーダーシップにまるわる強烈かつ意義深い教訓をビジネスリーダーに提供している。文学作品を読み互いに評論しあうことで、リーダーシップの育成に役立てている。

「ビジネスリーダーの日常生活には道徳的あるいは倫理的な側面を無視できない判断が絶えずつきあいまとう。つまり、リーダーには道徳的規範が求められるが、一般的な組織では道徳上の問題にまつわる微妙なニュアンスを理解する力を養ったり、その種の問題について議論する機会はほとんどない。ザ・モラル・リーダーのプログラムでは、議論を通じて、本質に迫る対話を身に付けます。」

[ 2008-03-18 ]

イギリスの老執事、スティーブンスが旅の途中で自分の執事人生を思い返していく、というような話。

父とのエピソード、元同僚と再会した時など、主人公はとにかく不器用な人なのだなと思う。でもこのじれったさがまたなんとも言えず。
映画もとても良かった。でもA.ホプキンスがたまーにレクター博士に見えて怖かった…

[ 2009-10-27 ]

<poka>
アキバでもはやっている「執事」の、古き良き英国のお話。
私のような日本人にはちょっと理解できない世界ですが、興味深く読めました。
ラストが印象的でした。

<だいこんまる>
アキバにいって「執事」体験してみよっかな。

[ 2008-07-31 ]

秋葉原のメイドはこの本をバイブルにすべき。

というのは冗談だけど。
のど越しのいい文章でするするしてる。
つるんと読んでいるのに、いつのまにか沈殿したものから
イギリスが見えてくる不思議。

[ 2008-11-17 ]

11/9 Never let me go よりも、個人的にはストーリーが好きだった。時間の経過、物語の進み具合、主人公の心情の混ざりあいが絶妙。ラスト近くでの独白は圧巻。必見。他のものも読みつくしたく幸せに思う。

[ 2007-12-30 ]

 この著者は私の好きな作家の一人です。
 この老人執事の回想シーンでストーリーは彩られます。この執事、「スティーブンス」というのですが、この人がまた実に可愛らしい。ミス ケントンとの会話での勘違いや天然ボケ、そして何よりも主人に尽くすという彼の執事道のようなものへの真摯な気持ち。主人公による主観的な一人称で語られていくという手法の小説、だというのに当時の雰囲気が十分に臨場感を持って感じられるのは、この小説でしか味わえない。
 ああ、カズオ・イシグロさん……大好きです。

[ 2010-01-10 ]

WW2直前のイギリス、貴族ダーリントン卿はベルサイユ体制に疑問を持ち、ナチスに利用されているとは知らずに親ドイツの立場で政治活動を行う。やがて戦争はおわり、ナチのシンパとして名誉を奪われ、失意のうちに卿は生涯を終える。残された広大な屋敷はアメリカの富豪が買い取る。
卿に忠実に使えていた執事がそれらの出来事を振り返りながら、昔淡い思いを抱いた女中頭に会いに行く。

…と、あらすじだけ読んだらめちゃめちゃツボにはまりそうな小説なのですが、読んでる最中、何か気持ち悪い、もやもや感がずっと付きまとっていました。ただ単にこの作者(訳者)の文体、そして主人公に共感しなかっただけかもしれませんが。

人は誰でも、当然、未来の事はわからない。
後から振り返ってみた時に、あれは誤りだった、もっと他のやり方があったと思っても、その時点では己の信じる正義に従うしかない。
でもその「過ち」が全て、悪い結果を生むわけではない。
「一日で一番いいときは夕暮れ」という台詞が救いになってると思う。

・・・それにしても、イギリスのツンデレのめんどくささ、はんぱない。

[ 2009-12-07 ]

切ない。
解説の「つまらない男」云々の記述にちょっと反発を覚えるほど主人公に感情移入(?)してしまった。

[ 2007-10-05 ]

映画が最初でそれで興味持って読みました。全体的に品のある文章が舞台設定によくマッチしています。主人公の心が解けていき、思い出と真正面から対峙する姿にジンときました。

[ 2007-10-15 ]

イギリスの執事が主人公。
最初の印象は「何て退屈な設定なんだろう!」だった。
そして、読み進めて思ったけど「何て退屈な小説なんだろう!」って思った。いや、失礼。何て抑制のきいた文章なんだろう。
「でもさ。人生なんてそんなものだよな」とも思いました。
そして、執事という職業を持つ主人公を通して著者が言いたかったメッセージが受け取れるかどうかが鍵のような気がします。
自分は向いていると思う面もありますが、著しく向いていない面もあります。そして、その向いていない部分が、私の弱さであり、これから先身につけることが求められている部分でもあると思います。

あなたが人生の岐路に立っているならば、ぜひおすすめします。

[ 2007-09-13 ]

昨年から気になっていたカズオイシグロの小説。物語はイギリスの歳を取った執事の視点からずっと語られます。カメラ一本ずっと流し撮りしていて視点が変わらない映画を観ている気分になるそんな小説だった。
語り口がイギリス人の執事の丁寧な口調なもんだから最初は読みづらいけど、途中から一気に読んでしまった。
物語がずっと一人の人物の視点から語られるから彼の記憶が、彼の語られる話が全てのはずなのだけど、記憶や語り口調があいまいになったりして・・・。
そういった曖昧さ、人間臭いモノが大好きな僕にはとても面白い小説でした(こういった手法は「信頼できない語り手」というらしい)。
他にもカズオイシグロの本を買ったので早く読みたいもんだなぁ。

[ 2007-09-09 ]

きっとこの本の本当の良さの半分も理解していないであろう僕ですが、こりゃーよかった。てゆーかなんで、おれ執事目指さなかったんだろう、来世は執事で決定だな。

[ 2019-05-19 ]

夕方が1日でいちばんいい時間。
分かる。
脇目も振らずにがんばったことも、がんばれなかった後悔も、自分の判断が誤っていたと気づく瞬間の虚しさも、何となく美しく思えてしまうのが夕方だ。夜になると恥ずかしさが勝るし朝はもはや過去を思い出しているひまなどない。

全体を通して言葉遣いが非常に美しい。
そして 執事 is cool
格好よく同時に滑稽

[ 2018-01-12 ]

ノーベル文学賞受賞ということで、

気になっていたので、読んでみました。



英国のあるお屋敷で執事をしているスティーブンスは、

主人から休暇を与えられ、短い旅に出た。

ある女性に会うために。。。



美しい景色の中を車で走りつつ、

今までの様々な思い出を振り返る。。。



そして、只ひたすら、品格のある執事をめざし、

主人に仕えてきた彼は、いつの間にか年をとり、

様々なことを犠牲にしてきたことに気づく。



そう、あなたは、仕事は優秀だったけれど、不器用すぎた。。。



淡々と進む物語なので、

途中で、ページが進まなくなり、

読了するまで、数日かかってしまったけれど、

意外にも、最後は涙がこぼれ落ちた。。。



夕暮れの海辺のベンチに座る、初老のスティーブンス。。。

あなたのその背をそっと抱きしめてあげたい。。。

[ 2008-07-09 ]

「私を離さないで」以来のイシグロ作品。
やっぱすごく丁寧なんだなぁー。
本の世界の情景が目の前に広がるよう。
なんだか綺麗でした。

[ 2008-05-25 ]

Aセクっぽいとの噂をきいて読んでみたけれど別段そうは思わなかった。

信念に従う人は美しい。けれどこの主人公はそうでもないような……と、微妙な気分で読んでいたけれど、最後の章で一気に主人公が好きになった。
とりあえず真面目にジョークを学ぼうとする姿はひたすら可愛い。

[ 2011-01-13 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-12-11 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2009-09-15 ]

2009.9

過去のお屋敷でのユーモラスな出来事と
段々と明かされる現実。

とても綺麗な言葉で綴られた、
失われた時代の物語。

イシグロさんの本はいまのところ外れなし

[ 2017-04-26 ]

イギリスの執事の目線からの、色んな出来事の語り口調小説。有能な執事なんだろうけど、自分のことは不器用な人なんだと思う。

[ 2009-08-14 ]

息詰まるような完成度を誇る傑作。
政治から「紳士協定」が滅びていく時代の変遷の中、滅びいく出口のない世界に殉じ、自分の恋愛感情まで抑制してしまう男の悲劇。

[ 2007-01-17 ]

 ダーリントン・ホールの執事、スティーブンスが現在の主人であるファラディの車を借りて旅をし、その間に昔のことを思い出す。信頼できない語り手の技巧を駆使し執事として己を抹殺せざるを得なかった男の半生を描いた傑作。

[ 2007-12-04 ]

丁寧静かな語り口に気付いたら惹き込まれてました。翻訳本は苦手なんですが、この文章は巧いと思います。執事の人となりに静かに恋しました(笑)

[ 2007-01-12 ]

ブッカー賞受賞作。イギリス人の執事を主人公に、日系の作家がここまでこまやかな作品をかいたことが大いに話題となった。人間は歳をとると、選択しなかった人生について、あれこれと思いをめぐらすものなのかもしれない。人に仕えるという職業に生き甲斐を感じてきた主人公が、人生の黄昏に思いおこす、ささやかなときめきがせつない。

[ 2008-08-16 ]

淡々としているものの、品があって、時にユーモラスで、読み始めると引き込まれました。どこかの書評で女性作家さんが「執事としては完璧だけど、人としてはかなり抜けてる」みたいなことを書かれていて興味を持ったのですが……確かに(苦笑) こと恋愛についてはかなりツッコミどころ満載ですが、静かな物語の中で、それは愛おしいものでもあります。(2008.07.06読了)

[ 2007-10-07 ]

英国貴族に長年仕えたベテラン執事が、たまの休暇旅行に出て今までの人生を振り返る、という筋。執事としての「品格」を追い求めてきたことを、最初のうちは誇りとともに回想していくが、旅は思わぬ方向へと自分の考えを向けていく・・・。
悲劇といえば悲劇なのかもしれないが、話の中にはユーモアが散りばめられているし、登場人物にも好感が持てる。非常にさわやかな気分になれる本。

[ 2012-04-19 ]

なんとなく目についたので読んでみた作品。
英国紳士に仕える執事スティーブンスの視点でずっと語られるので、表現が回りくどい。もっと直接的に言ってよ!と私なら言ってしまいそうな会話。でも慣れてくると、この口調と遠まわしな言い方が癖になってくる。
彼が振り返る華やかなお屋敷の過ぎ去りし日々。夕焼けの美しさと切なさを静かに楽しめる一冊。

[ 2011-05-19 ]

素晴らしい文章力。時制の違うエピソードがまったく違和感なく流れるように展開されていく。しかも無駄がない。本当に感心します。ちょっと突出した文章力だと思う。

執事のスティーブンスの語り口調がエレガントで楽しくて好き。実直で堅苦しいからこそ起こるユーモラスな会話や出来事が、彼を愛すべきキャラクターにしている。

執事としては最高の仕事人なわけだけれど、執事以外のことはもうぜんぜんなのね。お屋敷ではあれだけ気が利くのに、仕事以外のことにはまあ鈍感というか、鈍感通り越して無神経と言っても過言ではないような(笑)。でも最近はなんとなくそのことに気付いたり、自分の老いにも気付き始めてたり、まさに今、彼の人生はありし日の名残。最後に夕日を眺める場面はちょっと物悲しいけれど、でもその夕日を見ながら新しいご主人様のためにジョークをもっと練習しなければと決意するスティーブンスに明るさと強さを感じました。がんばれスティーブンス。

悪い人がひとりも出てこない小説は大好きです。

[ 2007-04-01 ]

冷静にみると主人公の執事はワーカーホリックで?意固地な?人物なのだが、なぜか憎めないのは、その?品格?のせいなのか。抑制された雰囲気がすばらしい。名作である。古き良きイギリスと美しい田園風景。訳もよかった。映画もよかった。実際には中央公論社刊の単行本のほうを読んだ。

[ 2007-01-09 ]

ほんとうに幸福だった。第一次大戦から第二次大戦にかけてイギリスの高名な紳士に仕えた執事が、自動車で旅行をしながら回想をめぐらす話である。完璧で美しい台詞や言い回し(原文は英語だが)、当時のイギリスの文化、旅行中の風景など、執事の人柄を表すかのように、どれも骨太な美しさがある。これまでの仕事に対する誇り、雇主に対する愛、その2点に縛られていたからこそ成就することなく、気付くことすらなかった女中頭への想い。自信と、後悔と、郷愁と。過不足無く、絶妙なバランスで成り立った世界があった。「浮世の画家」と同様、とても丁寧に描かれていて、小説を読む喜びがじわじわとあふれ出るような、まさに傑作。読了後、「この小説を読んでいる時、私は幸福だったんだな」と泣きそうになった。ほんとうに幸福だった。

[ 2008-09-15 ]

やー。すばらしいですね。すばらしいですね。二回。
私を〜もだったけど、ストーリーがどうとかっていうか、カズオイシグロがすばらしいよ。ごちそうさまでした。720円ですよ。街の本屋にいきゃすぐ手に入るんですよ。ああ、小説ってすばらしい。本屋っていうシステム作った人ありがとう。すげー。
なんか、時々ギャグなのか?っていう瞬間があってそれがまた切ない。これをよんでそっこー映画も借りてきたんだけど、まあ映画もいいけど、小説のがいいわね。なんか小説のが客観的だし、それゆえの愛ってのがあるし、救いがある。最後が断然小説のがいいです。

ところで唯一のラヴ・シーン(と呼べるのか)、スティーブンスが読んでる本をミス・ケントンが無理やりみるところ、映画ではホラーで笑えた。二人とも怖いですから。ハンニバルー。でもアンソニー・ホプキンスは、当然すばらしい。

[ 2006-08-08 ]

失われつつある伝統的な英国、とあるが、日本人のためかピンとこず。淡々とした情感は素敵だが、少々退屈かも。でも、痛烈な風刺小説として読むとにわかにどきどき。著者が日系人だし。

[ 2011-07-27 ]

品格のある執事はこういうときどう対応するんだろ?と思いながら、むーそうなんだー、といちいち感心しながら読みました。
そう、スティーブンス?今人生の大事な岐路かもですよ?という瞬間も、仕事に真摯に向き合う、忠実な執事であり続けた、ともいえるし、その反面、その時々の(仕事以外の)事象にきちんと向かい合ってこなかった、ようにも見える。そこが、ずっと心に引っかかっていたんだろうな、と思った。
イギリスの風景と織り交ぜながら、さわやかな、ぴりっと涼しい風を味わったような気がしました。

[ 2007-02-11 ]

映画が先で、ようやく読んだが、良かった。ただし、これは主人公の一人語りなのか日記なのか、どちらでも変な気がする。

[ 2006-06-16 ]

大物貴族に執事として仕えたスティーブンスンの回想。第2次大戦前に彼が自負していたものは崩れ去ったのか、残ったのか。新しい主人のもとで彼が追及する執事の品格とは何なのか。映画のアンソニー・ホプキンスもよかったけど、この本の中に住むスティーブンスンも素敵です。いつか原書に挑戦したい1冊。

[ 2007-05-21 ]

せつない。この人の本を読んだは3冊目ですが、そろそろ本格的に“好きな作家さん”リストに入りそうです。

[ 2007-03-24 ]

前からずっと読みたいと思っていた本で、実際に読んでみると期待を裏切らない名作だった。それもかなりの高いレベルで。こういった素晴らしい本に出会えるというのは、とても幸せなことだと思う。

[ 2011-08-10 ]

当時世界に冠していた大英帝国の、しかもその中枢を担う上位の貴族達。
そしてその貴族達に仕える優秀な執事たちの日々。
華やかなりし頃のイギリスの上流社会の様子が語り手であるスティーブンスの言葉で鮮やかに浮かび上がってくる。
スティーブンスは優秀な執事だし、その職分を充分に弁えていたのだろう。
だがあまりに自己抑制が効いているため、彼の振る舞いは、時に他人の目には冷ややかに映ることがある。
内心どれだけ痛みをおぼえていても、彼は表面上何も変わらない。
そのため、周囲の人は彼の内心を掴みきれないことに苛立ち、時には誤解してしまう。
読みながらその不器用さを何度ももどかしく思った。
だがいずれにしても彼にはこういう生き方しかできなかったんだろう。
最後の最後で少し感情の揺らぎが見えたが、それはくよくよと過去を悔やむようなものではなかった。
スティーブンスの視線はきちん先に続く道に注がれており、その姿勢がとても美しい。
ラスト数行はとてもお茶目で、切なさを残しながらも爽やかに本を閉じた。
一日の中で夕方が一番いい時間だ、と素直に言えるような、私もそんな人生を送れるといいなと思う。

[ 2007-11-08 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2011-10-26 ]

古き良きイギリスの執事の姿がここに。
これこそ本当の執事だよねぇ・・・
ちょっと漫画のエマとかに雰囲気にてるんじゃないかな?(私、エマは1巻しか読んだことないけど・・・)
ここに書かれている執事の品格とかはとても日本人にも理解できるもので、日本人とイギリス人は思考が似ているのかもなぁと思いました。

[ 2011-06-11 ]

イギリスの貴族に長年務めていた執事が、数日の休暇に出ながら昔を懐古するという話。主人や自身の「品格」について思い、自分の人生を思う。

カズオ・イシグロらしい細かい心理描写で、在りし日のイギリス社会を描いた良作です。
カズオ・イシグロを読むといつも思うのだけれど、人生なんてものはほんの一瞬の心遣いや気持ちのすれ違いで、大きく変わっていくものなのかもしれない。そう思わせる筆力はやっぱり凄い。

[ 2018-04-19 ]

ノーベル文学賞受賞した時に図書館で予約して、半年待ちでやってきた。
戦後の今と、お屋敷の華やかなりし頃の追憶、そしてスティーブンスとミス・ケントンのすれ違いの関係。時間軸を行ったり来たりさせながら、最終的に視点をクライマックスに収束させる手法が面白い。
昔ながらの英国紳士。執事の品格。
巻末の解説を丸谷才一が旧仮名遣いで書いているのを見て、はっとする。

[ 2006-01-20 ]

簡単に云えば、短い旅に出た老執事が
その道すがら自分が館で過ごしてきた古き良き時代を回想する…
といった内容なんですが、
その中に自分の仕事に対する誇りや女中頭への淡い恋愛感情、
イギリスの美しい風景なんかが表現されてて
イギリス好きのあたしには堪らんです。
映画も良かったし。

[ 2006-04-20 ]

読んでてわくわくするような小説ではないのですが、つまらないとは思わず、実に淡々と読み薦められる一冊でした。イギリス人ではないので古きよきイギリスへの郷愁はわかりませんが、日本人として古きよき日本への郷愁という気持ちがわかるように、自分の属する世界の昔の姿への思慕、というのは万国共通なのでしょう。カズオ・イシグロ氏の作品はこちらが初めてでしたが、俄然興味が湧きました。原書も読んでみたいです。

[ 2013-09-22 ]

淡々とスティーブンス執事が回顧する、だけなのに、なんだかするする読めてしまった。これは翻訳なのに、あまり違和感を感じないというか、その執事と女中、執事と雇い主の会話自体があまりに他人行儀な世界なので、そういうものかと思った。 途中、ミス・ケントンの気持ちが想像できたので、スティーブンス、お前はロボットか?って思った。こんな四角い頭の執事が気が利くとは思えなかったな。 皆さんの感想を見て、映画があると知った。是非見てみたい!!

[ 2017-12-30 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2006-09-16 ]

執事とは。萌えーなんかじゃないんです!奥深いもんなんです!切ない中、最後に救いどころを設けるあたり、作者の力量を感じました。なんちって笑

[ 2018-01-03 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2018-02-12 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2005-05-16 ]

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々―過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

[ 2019-06-09 ]

烏兎の庭 第六部 6.9.19

http://www5e.biglobe.ne.jp/~utouto/uto06/doc/nagori.html

[ 2018-10-29 ]

このところ多忙につき、読感を書いている時間がない。
とりあえず、読みましたということで、読了日と評価のみ記載。

[ 2010-09-29 ]

カズオ・イシグロのブッカー賞受賞作。イシグロ自身は「アングロサクソン系以外がイギリス文学を書いたことを評価されただけ」と謙遜しているが、著者の人種は別にしても、これは歴史に残る「文学作品」だと言えよう。「執事」といういかにもイギリス的な主人公のナレーションを通して、偉大さ、品格、恋愛、人生の価値を描く。しかし、この一見純朴な小説は、実はいかにもイギリス人好みの sarcastic なストーリーなのだ。

丸谷才一の解説が素晴しいというか、なんというか、ここまで適切に分析してしまっては、読者の解釈する楽しみを奪ってしまうのではないかと心配になるほど。

[ 2004-10-04 ]

ホントは英語で読まなきゃいけなかったんだけど。でも大学が選んだとは思えないほど優れた話だった。執事さんばんざーい

[ 2006-09-21 ]

おもしろかったー。読み応えあり、ひさびさに本の世界に入り込みました。本のシチュエーションというより、物語に漂う感性のようなものが自分の頭の裏あたりに入り込む感じ。腑に落ちるということはないからこそ、おもしろい。

[ 2006-05-30 ]

購入日不明。5月30日読了。老いた執事がこれまでの人生を振り返るお話。これ映画みたいけど,主演がアンソニー・ホプキンズて…怖くない?