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私の個人主義

(477)
価格:600(税抜)

作品レビュー

[ 2011-11-02 ]

思想家、夏目漱石。考えている。

高校でも習った「現代日本の開化」をはじめとする文明論・文化論はお見事。100年以上経った今でも通用するような普遍的な議論が展開されている。最近進路のことで迷いが生じていたのだが、「道楽と職業」における職業論はよい視点を示してくれた。これは個人的な収穫。
そして何より表題作「私の個人主義」が素晴らしい。大学在学中という今この時期に読めて本当に有意義だったと思う。あたかも自分が学習院生の一員となって耳を傾けているかのような気分になった。「出来るだけ個人の生涯を送らるるべき」学生たちに個人主義の必要を説く漱石。自身の体験談と絡めた論の運びには説得力があり、人生の先輩からのメッセージとして素直に受け取ることができた。漱石にこんなに勇気づけられることになるとは思わなかった。

しかし先生、講演が上手いなぁ。抽象的な主張を、身近な例を多用して具体的な次元に落としこんでいく手腕が見事。難しいことを易しく。諧謔も交えながら、聴衆を惹きつける真摯な語り口が冴えている。あんまり分かりやすいから最初は内容も簡単であるかのように感じられたが、繰り返し読むと漱石の優れた先見性・深い分析が分かってきた。本当によく練られている。

この時この場所にいて直に話を聞けたらどんなに良かっただろう。本書の最後に、「で私のいう所に、もし曖昧の点があるなら、好い加減に極めないで、私の宅までお出下さい。出来るだけはいつでも説明する積でありますから。」とある。今から伺ってもよろしいでしょうか、漱石先生。

[ 2019-02-20 ]

夏目漱石の博学さに触れられる貴重な一冊 私の個人主義では、今後自分の人生に活かせることが漱石自身の言葉で一杯一杯書かれており、人生のバイブルになること間違いなしの一冊だった。

[ 2018-11-17 ]

私が夏目漱石を好きになるきっかけになった本。
講演集であり毎回前置きが入る。その前置きがまた面白い。講演内容を考えることを先延ばしにし、ついに今日になってしまい困っているだとか、田舎で人がいないと思ってが、講演が始まるとどこからともなく人が集まってきたなど書かれている。また漱石自身も学者という顔を持っているためか学者についての言及も多い。私は学者を目指したいので(あくまで目指したい)どうしても学者についての記述が目に留まってしまう。
「道楽と職業」では学者を最も不具な存在と位置付ける。不具を3回重ねたユニークな表現は漱石らしいと感じる。また漱石自身も不具の1人であるという自虐も入り、漱石のユーモアを感じる。一般的に仕事は他人のためにすること=職業だが、学者は自分が好きなことを仕事にしているので、職業ではなく道楽と言うことができ、そして学者は自分のためにするのではなければ成功しないと書かれており、私もそうあろうと思わせてくれる。
「現代日本の開化」でも学者について言及がある。学者は定義を作るが、そもそも定義とは作るのが難しく内容はしばしば流動的であり、無理矢理あてはめるのはよろしくないということである。また学者を真面目にやると神経衰弱に陥るとも書いており、そりゃそうだと思った。考えるということは楽しいが、同時に相当気力体力を消耗すると私は感じるからである。最後には日本の近代化は内発的ではなく、外発的なものであり日本人は神経衰弱になるだろうと述べられ、その解決策はないと結論づける。このような結論に至るならかえって考えないほうが幸せだったのては無いかと漱石は言っているが、私はそうは思わないし、漱石も本当にそう思っていたのかはわからない。あくまで私の想像ではあるが、漱石はこの結論を知らないより知っている方がいいと思っていたのではないかと思えてならない。何かを知るということは自己破壊であり、知らないことは「おめでたい」ことであると、私の大学の先生がおっしゃったことが思い出された。私はこのペシミスティックな結論がなぜか好きである。それはフロイトの死の欲動の概念と似ているからかもしれない。
「中味と形式」学者は対象を客観視する傾向がありしばしば中身に合わない形式をつくることがある。対象を実際に経験し、対象を中から捉えるやり方でしか捉えられない中味もある。精神分析において、ある理論はその人の経験から出発しているので通ずるところがあると感じる。
「私の個人主義」ではもし自分の進むべき道が分からず懊悩しているならば、自分が納得できるまで自分の道を探し続けなさいと若者へエールを送っている。今まさに自分の道を模索中の私にとっては心にささった文章であり、この本がお気に入りになった1番の理由である。
‪漱石は職を競った相手の名前を思い出せないことに対して悔しくないからであると書いていたが、精神分析的には悔しいから忘れたのだと言うことができる。自分の勉強している学問の視点が少しでも身についていると思うと嬉しい。‬

[ 2015-05-04 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2011-12-03 ]

夏目漱石の講演集であります。いやあ面白い。
面白いといふと語弊がございますか。
鹿爪らしい顔をして気取つてゐる有名な写真がありますが、実際にはきつと茶目ツ気のある人なのでせう。

「道楽と職業」に於ける道楽とは、まあ学者とか芸術家とか、さういふ職業のことを指してゐます。
官吏や会社勤めと違ひ、自分の匙加減で仕事をする人たち。やくざな職業と思はれてゐたのでせう。
それにしても明治44年当時、漱石はすでに職業の細分化に触れてゐます。
「現代日本の開化」では、「開化は人間活力の発現の経路である」と定義します。何だか良く分かりませんね。
そこで積極的な活動と消極的な活動に分類して論を進めるのですが...漱石は現代日本の開化は上滑りの開化と断じ、日本の行く末は悲観的だと嘆いてゐます。当時こんなことを公で発言しても大丈夫だつたのでせうか。日露戦争が終つてまだ間がなく、やあ日本はあのロシヤに勝つたのだ、世界の一等国だなどと浮かれてゐた頃でせう。
「中身と形式」を見ますと、明治維新からまだ50年に満たない中途半端な時代を感じます。一般大衆に於ける善悪美醜の複雑化が窺へます。
「文芸と道徳」では、当時の文学の主流である浪漫主義・自然主義と道徳の関係を説きます。自然主義文学に対して、案外寛容な物言ひですね。
「私の個人主義」の主張は、危険思想扱ひされなかつたのだらうかと、心配になります。もちろん現代の私が明治の漱石を心配しても詮無いことでありますが。国家より個人が優先されるなどと説く漱石。カッコイイのであります。

さすがにかつて千円札の顔になつただけありますね。大衆の味方。私は再び千円札に復帰して貰ひたいと祈願するものであります。現在の千円札の人は、偉い博士ですが、どうもあの親不孝ぶりが気に入らない...

http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-80.html

[ 2013-07-08 ]

夏目漱石の講演集。
「道楽と職業」、「現代日本の開化」、「中味と形式」、
「文芸と道徳」、「私の個人主義」の5篇が収録されている。

「中味と形式」、「私の個人主義」が面白かった。
夏目漱石は、真面目で誠実で、信頼できる人物だと思う。
それに諧謔味に富んでいて軽快。

「中味と形式」
P74
「すべて政治家なり文学者なりあるいは実業家なりを比較する場合に誰より誰の方が偉いとか優っているとかいって、一概に上下の区別を立てようとするのは大抵の場合においてその道に暗い素人のやることであります。専門の智識が豊かでよく事情が精しく分かっていると、そう手短にまとめた批評を頭のなかに貯えて安心する必要もなく、また批評をしようとすれば複雑な関係が頭に明瞭に出てくるから中々「甲より乙が偉い」という簡潔な形式によって判断が浮かんで来ないのであります。」
身近な例だと、一見面白くて的を射ているようだけどそうでもない
レッテル貼りのことを思い出す。

「私の個人主義」
P134
「けれどもいくら人に賞められたって、元々人の借着をして威張っているのだから、内心は不安です。手もなく孔雀の羽根を身につけて威張っているようなものですから。それでもう少し浮華を去って摯実に就かなければ、自分の腹の中はいつまで経ったって安心は出来ないという事に気がつき出したのです。」
P136
「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自己本位の四字なのであります。」
P137
「その時確かに握った自己が主で、他は賓であるという信念は、今日の私に非常の自信と安心を与えてくれました。私はその引続きとして、今日なお生きていられるような心持ちがします。」
P138-139
「行けないというのは、もし掘り中てる事が出来なかったなら、その人は生涯不愉快で始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。私のこの点を力説するのは、全くそのためで、何も私を模範になさいという意味では決してないのです。私のような詰まらないものでも、自分で自分が道をつけつつ進み得たという自覚があれば、あなた方から見てその道がいかに下らないにせよ、それは貴方がたの批評と観察で、私には寸毫の損害がないのです。私自身はそれで満足する積りであります。」

他人のものさしで自分の人生をはかることをやめた、
と言っているように受け取った。自分の人生を自分のものさしで見て、
十分満足いくように進んで行けば、それでよい。
その、ものさし、というか価値観を自分の手で掘り当てることが重要。
そしてその価値観を得たからと言って、他人に強要することのない、
謙虚さがある。

[ 2011-08-24 ]

夏目漱石の講演集。

・私の個人主義
他人本位で生きてきた夏目漱石がロンドン留学を経て自己本位の生き方に気付いた。
今から見ると別段新しいことはなく、「個人主義」という言葉自体に悪いイメージもないけど、この時代では偏った個人主義に悪いイメージが付きまとっていたことは容易に想像できる。その時代に「個人主義」という言葉を使って自己本位の生き方を説明したところに意義があった。

言葉の上っ面だけの解釈は膚浅な解釈。


・道楽と職業
やっぱり長い時間を費やす職業なんだから、自分の好きなことの延長にあったらいいなと思っていた。
漱石の提出した職業観は、まず何もかもを自分でしていた時代に遡る。自分で米を作り、着物を織る時代。でも社会が成立するうちに分業体制になるのは、自分がしない仕事は他人に補ってもらい、自分の仕事は他人のしないことを補う、という流れにある。
ということはどうしても他人本位にならざるを得ない。
また、最初は道楽でやっていたかもしれないがそれが職業となると途端に性格が変わる。

その理解の上で、科学者や哲学者、芸術家は本当に道楽=職業、自己本位でやってるレア物である。

職業ってそんなものか、と思った。職業の性質はうまく言い当ててると思う。(まだ働いてないから何とも言えないけど)
私は顕微鏡を覗く部屋から抜けられなくなりそうな気がしてたけど、その視野の狭さは私にとってはあまりよろしくないかもしれない。
中庸やったり中道やったり、昔から人はバランスのいいところを目指して落ち着くのが理想と説かれていて、それが最もだと思うに至った(at高野山)。科学や哲学に傾倒してしまって他は受け付けない人がいることは分かっているけど、あくまで私としては中道を目指したいので。


・現代日本の開化
西洋の開化は内発的であるのに対し、日本の開化は外発的で皮相上滑りの開化。酷評。

その時代に生きながら、こういう俯瞰的な見方のできる人が賢いなぁと思う。

[ 2010-05-28 ]

様々な事柄に関して夏目漱石の考えが提示されています。
講演をもとにしているので口語体で読みやすく、どの章も散漫に聞こえる聴衆への語りかけから本質に流れるように論説が進んでいく様は「すばらしい」の一言。特に「現代日本の開化」には明治の時点で日本を現在のような視点で案じていることに驚き、「私の個人主義」では個人的に生きる勇気をもらえた気がします。漱石先生は優れた思想家でもあるという発見ができました。

[ 2009-12-29 ]

漱石が行った講演の5編を収録。「私の個人主義」は漱石の晩年の講演ですが、他の四編は明治44年の近畿地方で行われたものが中心。有名な「現代日本の開化」も収録されています。

前から読みたかった漱石の講演集。文章とはまた違う彼の一面がうかがえて面白かったり可愛いなあと思うこともあるのですがとにかく彼の思想の普遍的なところに度肝を抜かれました。大体百年は時が隔たっているというのに、殆ど現代でも通用する通念ばかり。「道楽と職業」は就職活動をしている時に読んでたらなんか違った気持ちになれたかも、と思ったり、「文芸と道徳」では今はどっちの道徳なのかなあ、自然主義的道徳かなあなんて思ったり。なにより、100%理解したとは言えませんが、それでもわかりやすい文章(というより口ぶり?)なのにもオドロキです。

そして「私の個人主義」ですが、これには内容うんぬんもさることながら、本当に感動します。私が漱石に興味をもったそもそものきっかけはこの「私の個人主義」にあります。全部を引用したいのですが長すぎるっ!
留学して、文学というものは自分で作り上げていかなければいけない、そして「自己本位」の考え方を編み出していった、という彼の半生を語った上で、彼はこう言います。
「もし途中で霧か靄のために懊悩していられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、ああここだという掘当てる所まで行ったら宜かろうと思うのです。必ずしも国家のためばかりだからというのではありません。またあなた方のご家族のために申し上げる次第でもありません。貴方がた自身の幸福のために、それが絶対に必要じゃないかと思うから申上げるのです」
もう、本当漱石が直接自分に言っているんじゃないかと錯覚するくらいでした。正直なこと言うと泣きました。

これはそんなに時間もかからないので、また何度も読んでいきたい、いや読み重ねなければいけない大事な一冊だと思います! 以上!

[ 2019-04-11 ]

夏目漱石が明治44年から大正3年に行った5つの講演がまとめられています。
現代社会に通じる見解が多くて驚きました。当時の人々から見た開国~明治維新が、現代人にとっての太平洋戦争~高度経済成長と似ているのかもしれません。
小説も面白いですが、漱石自身に興味があれば本講演集をおすすめします。

[ 2019-07-07 ]

明治44年に関西でおこなった講演4本プラスその3年後の学習院での講演となる表題作。

どうでもいいと言えばいいのだが、一連の講演旅行であった関西での4本が、多少重なり合うとは言えそれぞれ別々のテーマとなっているのは面白い。聴衆は当然、毎回違うわけだから同じ話を4回すればよかろうという気もするが。新聞への掲載、または事後の出版を前提としていたのか。

最初の4本がどちらかと言えば聞き手を面白がらせる軽妙洒脱さに重きをおいているのに対して、「私の個人主義」はこう生徒たちに訴えかけるような重さがある。中身には大きな違いがないがトーン&マナーにおいてちょっと違う感じ。脈絡ないのだがマックス・ウェーバーを思い出した。

「中身と形式」など100年後の日本企業社会に照らし合わせても大いに身につまされる。

[ 2018-03-04 ]

生き方を伝授された。
ただ単純にこの考え方が好きです。
大学生のわたしが読んでいて、大学生が読むべき本だなぁと思いました。

[ 2018-07-01 ]

『サバイバルKさんボイス』

いつもお世話になっているKさんのオススメ。
夏目漱石。
ユーモアあふれる人格者。

#夏目漱石 #文庫 #個人主義

[ 2017-10-07 ]

今年は夏目漱石生誕150周年、没後100年にあたる年だそう。

日本近代を代表する小説家、夏目漱石が世代を超えて多くの人から愛されるのは、 彼の言葉が現代を生きる私たちに、人生のヒントや励ましを与えてくれるからだと思う。

「私の個人主義」は、漱石が亡くなる2年前の大正3年(1914年)に、 学習院の学生に向けて講演された内容をまとめたもので、大きく前半部と後半部に分かれる。

前半部では、文学とは何か、自分の進むべきはどこなのか、長い間わからず苦しんだ漱石が、 「自己本位」という言葉を手に入れて、自分の人生を生きるまでの半生が語られる。

後半部では、 「自由」と「義務」、「自由」と「道徳」について語られる。 自分の個性が最大限発揮され、自由に生きるときには、 自分以外の他者の個性や自由を尊重しなければいけないということが 権力や金力の話を交えながら語られる。

自分が好きなは、特に前半部。

文学とは何か、自分の行くべき道はどこか、わからず長い間苦しんだ漱石が、「自己本位」という言葉を手にして苦悩を突破するところは、文章を通じて漱石の気概が迫力と共に伝わってくる。

「私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。彼かれら何者ぞやと気慨が出ました。今まで茫然と自失していた私に、ここに立って、この道からこう行かなければならないと指図をしてくれたものは実にこの自我本位の四字なのであります。」

「自己本位」という言葉は、多くの人の生きるヒントになるはず。

[ 2016-07-16 ]

大学3年の頃に読みました。100年前に生きていた漱石も、どう生きるかに悩み、もがきながら進もうとした一人の人間だったのだと知って、とても励まされました。

[ 2015-06-29 ]

高校2年時の授業で読んで、感動したことを懐かしく思い、再び手にとってみました。
今の日本人が読んでも、全く色あせることのない内容だと思います。当時の文壇の自然主義と浪漫主義についての対立について言及されていて面白かった。
この本を読んでから再び夏目漱石の作品を読むと、彼が何を考え、どんなことを伝えたかったのかがわかりやすくなると思います。

[ 2015-04-09 ]

人と喋れない「猫」とか、松山に馴染めない「坊ちゃん」とか、漱石独特のアイロニーは彼の文明論にも貫かれていた。落語好きだけあってなのか、彼の講演を文字に起こした一冊だが、枕があったり、ユーモラスで結構面白い。

[ 2015-11-12 ]

漱石は50歳で胃潰瘍のためこの世を去ります。本書は45歳のころにされた5つの講演の記録です。私は、何だったかもう忘れましたが、全く別の本の中でこの講演の一文と出会い、これはぜひ読んでみたいと思うようになったのです。しかし、全体的には私にとってあまりおもしろいものではありませんでした。漱石の性格やあるいは時代的背景もあるのかも知れませんが、必ず講演の最初はちょっとした言い訳で、おもしろくなくてもがまんして聞いて下さい、といった内容のことを言っています。それが少ししんきくさく感じます。また、本題においてもすごくひかえめな感じがしました。ただ、本書のタイトルにもなっている「私の個人主義」という最後の講演だけは、学生に対して話されているということもあってか、わりとストレートで、私自身の気持ちにうったえかけてくるものがありました。前半は漱石が学生時代から教職に就き、イギリス留学をするあたりまでの話になっています。そのころ漱石はどうも自分のしていることがしっくり行っていなかったようです。少し長くなりますが引用します。この講演の前半部分を読むだけでも、文庫本1冊の値打ちはあったと思います。「もしあなた方のうちですでに自分で切り開いた道を持っている方は例外であり、また他の人に従って、それで満足して、従来の古い道を進んでいく人も悪いとは決して申しませんが、しかしもしそうでないとしたならば、どうしても、一つ自分のつるはしで掘りあてる所まで進んで行かなくては行けないでしょう。行けないというのは、もし掘りあてることができなかったら、その人は生涯不愉快で、始終中腰になって世の中にまごまごしていなければならないからです。・・・(略)・・・どうぞ勇猛にお進みにならんことを希望してやまないのです。もし、そこまで行ければ、ここにおれの尻を落ちつける場所があったのだという事実をご発見になって、生涯の安心と自信をにぎることができるようになると思うから申し上げるのです。」(P.138、引用に際して漢字をひらがなに改めているところがあります。)
私もこの漱石が亡くなった年齢になってしまいました。

[ 2016-08-18 ]

「私の個人主義」その昔、高校現国の授業で取り上げられた。当時不真面目だった私は、先生の授業がどんなだったか覚えてない。が、授業があったことは何故か覚えてた。で、今回本を手に取った。面白かった。感銘を受けた。そしてできるものならば、あの先生の授業をもう一度聞きたい。

[ 2018-06-19 ]

『私の個人主義』
著者:夏目漱石
解説:瀬沼茂樹(1904-1988) 文芸評論家。

【版元】
発売日1978年08月08日
価格定価 : 本体660円(税別)
ISBN978-4-06-158271-2
判型A6
ページ数170ページ
シリーズ講談社学術文庫

内容紹介
文豪漱石は、座談や講演の名手としても定評があった。身近の事がらを糸口に、深い識見や主張を盛り込み、やがて独創的な思想の高みへと導く。その語り口は機知と諧謔に富み、聴者を決してあきさせない。漱石の根本思想たる近代個人主義の考え方を論じた「私の個人主義」、先見に富む優れた文明批評の「現代日本の開化」、他に「道楽と職業」「中味と形式」「文芸と道徳」など魅力あふれる5つの講演を収録。
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000149889

【目次】
この本によせて(昭和五十三年三月 瀬沼茂樹) [003-005]
目次 [006]

道楽と職業 009
現代日本の開化 037
中味と形式 067
文芸と道徳 093
私の個人主義 120

解説(瀬沼茂樹) [159-171]

[ 2013-07-22 ]

作者の文学は日本の文学史を彩る作品が多い中、彼の人間性を匂わすような内容に親近感を覚えた。 何とも言えない変わったおじさん、という印象を抱かせ、漱石という名前の由来もなるほど、と感じられる。 講演として実際喋っていたというのだから、是非とも拝聴したかったと思わせる内容である。

[ 2017-04-11 ]

自分が漠然と思っていても上手く表現できなかったことをすべて言葉にしてくれている。特に『私の個人主義』では権力の関係性を兄が嫌がる弟を無理やり釣りに連れ出す例えで非常に分かりやすく捉えることが出来た。
「国家は大切かも知れないが、そう朝から晩まで国家国家と云ってあたかも国家に取りつかれたような真似はとうてい我々にできる話でない。常住坐臥国家の事以外を考えてならないという人はあるかも知れないが、そう間断なく一つ事を考えている人は事実あり得ない。」
右翼だ自衛だと言う前に、このことを肝に銘じるべきだと思う。

[ 2016-02-13 ]

夏目漱石の講演録。表題の「私の個人主義」を含め5つの講演が収録されています。

最近、改めて夏目漱石の小説の素晴らしさを感じる機会があり、長らく積読状態だった本書も読んでみることにしました。

はじめの「道楽と職業」を読んですぐに思ったことは「つまらない」の一言に尽きます。芸術家の職業観なんかどうでもいいし、もっと聴衆の役に立つような内容にならなかったのか。それともそんなことを思う自分が功利主義に毒されているのだろうか。

続く3つもインパクト無し。「文芸と道徳」は、著者が小説で追求してきたテーマでもあると思うので、小説を深く読み込んでいるファンなら楽しめるかもしれません。

結局読んでよかったと思えるのは、学習院の学生に向けて語られたと思われる最後の「私の個人主義」だけでした。漱石の魅力は小説という形式においてこそ輝くように思います。

[ 2017-03-10 ]

夏目漱石といえば『吾輩は猫である』,『こころ』などを著した小説家だが,本書は小説ではなく,彼の講演集である。タイトルとなった講演は,学習院大学で学生を前に行われた。「私はこの世に生れた以上何かしなければならん,といって何をして好いか少しも見当が付かない。」(p.132)話し言葉は「文豪」を身近に感じさせる。1つの講演は25ページほど。

*推薦者(図職)H.S
*所蔵情報
http://opac.lib.utsunomiya-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN0363751X?hit=1&caller=xc-search

[ 2013-03-26 ]

おそらく月曜会のコミュに参加しているみなさんであれば一度は読んだことがあり、そして好きな方も多いと思う夏目漱石、彼による講演を5つ収録しています。その中でもタイトルにもある「私の個人主義」をおすすめします。ページ数も多くは無いので気軽に読める一冊です。

夏目漱石と言えば、帝大を卒業し、国費で英国へと留学するなど明治期の日本においてまさにエリートの経歴を持ち、そして日本の近代文学を築き上げた人物でありながらも、その人生で数多くの悩みや挫折を経験したことが知られています。この短編では、その中で英国留学時に直面した文学への挫折と、それを乗り越え自分独自の文学のスタイルを形成する決意をしたこと(=個人主義)が語られています。

この内容は、漱石自身を知るのみではなく、現代までに通じる日本の教育システムや新たな分野を構築する気概について考える上でもとても示唆に富む内容となっており、ビジネスにも大いに参考になる内容となっています。特に、真面目で優秀な漱石青年が、決められたレールの上からいったん降りて、新たにレールを敷いていくことを決意したことから彼の文学が始まっていることを考えると彼の小説も違った読み方ができると思います。

[ 2012-08-14 ]

『大学新入生に薦める101冊の本 新版』の96番目の本。
夏目漱石の講演が、それぞれ約30ページで5本収録されている。この本は高校倫理の教科書ではよく部分的に引用されていているが、それだけではもったいない。内発的開化や浪漫主義の言葉の意味は教科書に載っているが、では実際に漱石はなぜこのような事に言及したかについては教科書に載っていない。ずいぶん昔の話ではあるが、現代にも十分通じる内容の本で、しかも読みやすいので読んで欲しいと思う。

[ 2013-06-14 ]

 季刊誌『kotoba』第12号の夏目漱石特集で、おすすめの漱石作品として、齋藤孝、中島岳志と夏目房之介の3人が『私の個人主義』をあげているのが目にとまる。先日ワールドカップ出場を決めた翌日の共同記者会見で、本田圭佑が「個」の力を高めよと語っていたことも耳に残っていた。手元にあった『漱石全集』を捜してみると、第16巻に収められている。
 書かれたものではなく、大正3(1914)年の学習院大学での講演だと知る。語り口は柔らかいが、その内容は深く厳しい。前半では、自分の半生を紹介しながら、イギリス留学中に「始めて文学とはどんなものであるか、その概念を根本的に自力で作り挙げるより外に、私を救う途はないのだと悟った」のだという。そして、今までの他人本位から脱却して、「此自己本位といふ言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました」と語る。
 後半では、「自己本位」を実践する際に生じる倫理性の問題に移り、「権力と金力」を中心に持論が展開される。将来これらを手にする可能性の高い青年を前にしての歯に衣着せぬ「権力と金力」批判は、見事という外ない。この漱石の「個人主義」」は、なおも舌鋒鋭く国家をも貫いて、今なお新鮮だ。現在の政治家や実業家には、漱石の爪の垢でも煎じて呑ませたいほどだ。
 今から99年前に、自力で「自己本位」=「私の個人主義」を「鶴嘴で掘り中てた」という漱石の講演は、ひょったしたら、周囲の空気を読むことに汲々としている現在に生きる我々こそ耳を傾けるべきなのかもしれない。
 そして、ふと思う。「個にこだわり続ける本田圭佑は、日本サッカー界の漱石である」と。

[ 2016-05-18 ]

明治45年と大正3年に行った講演5本を収録。
視点はそれぞれ違うが維新後大きく変わった日本社会に関する批評提言。なのに、比喩でも何でもなく現代にそのまま通じることの何と多いこと。2度の大戦を経て50年も過ぎたのに、社会がその内実一毫も進歩していないように思われて悲しみさえ覚える。
それでも、今に生きる一個人として襟を正さねばと発奮させられる名説。

[ 2015-10-31 ]

漱石の講演集。どの講演も、今に繋がっている現代日本や今の日本人の批評としても読めるほど色褪せない。本題に入るまでのまくらが長い。言い訳みたいな事を延々しゃべりやっと本題に入っていく。ただ、そこに漱石の人柄を感じて思わず笑ってしまう。たぶんこの本は人生のうちで何度も読み返す本になるように思う。

[ 2012-08-22 ]

とってもひねくれていて面白い
こんな発話を生でされたらどんな感じなんだろう・・・
ひねくれてても終わり方がポジティブで良い

[ 2012-04-10 ]

伊藤忠丹羽前社長が読んだ本ということで、きっと素晴らしい考え方が書かれているんだろうとに興味を持って読んだ。

【私の個人主義】
文学を学んでいた夏目漱石。始めは周りの意見に耳を傾けていた。しかし書物を読む意味がわからなくなってしまった。その時はじめて、文学とはどんなものか、その概念を根本的に自力で作り上げるほかないと悟った。それまでは全くの他人本意であった。彼は自己本意という言葉を自分の手に握ってから強くなった。自己が主で、他は賓である。

【道楽と職業】
自分の力に余りあるところ、すなわち人よりも自分が一段とぬきんでいる点に向かって人よりも仕事を一倍して、その一倍の報酬に自分に不足したところを人から自分にしむけてもらって相互の平均を保ちつつ生活を持続する。=自分のためにすることはすなわち人のためにすること。=己のためにする仕事の分量は人のためにする仕事の分量と同じである。人のためにする分量が少なければ少ないほど自分のためにはならない結果を生ずるのは自然の理。人のためになる仕事を余計すればするほど、それだけ自己のためになるのも明らかな因縁。

職業の分化錯綜が進めば進むほど我々は片輪な人間になってしまう。言い換えると、自分の商売が専門的に傾いてくるうえに、生存競争のために人一倍の仕事で済んだものが二倍三倍ないし四倍と段々速力を早めて追い付かなければならないから、その方だけに、時間と根気を費やしがちであると同時に、お隣のことや一軒おいたお隣のことが皆目わからなくなってしまう。大きく云えば、現代の文明は完全な人間を日に日に片輪者に崩しつつ進む。
→解決策 本業に費やす時間以外の余裕を挙げて文学書を読む」

[ 2015-10-06 ]

自分が何のためにこの世に生を受けたのか、深く考えさせられる。これから、折に触れ読み返すと思う。
(2015.8)

[ 2013-07-18 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

続きを表示

[ 2011-08-14 ]

凄いの一言に尽きる。
近代日本開化を多面的に見て、自分の中で明確に捉えてる。なかでも個人主義の解釈には感動して言葉が出ない。

漱石さんが戦中に生きてて、あの暴走した社会を見てたら何を感じたんだろうか

[ 2014-12-15 ]

有名な「自己本位」について語っている。学生に対する熱い言葉掛けが、達観していて冷たい印象だった評者の漱石像を打ち崩した。

[ 2018-10-27 ]

凄く薄い本ですが、読むのにすごく時間がかかりました。
言葉に慣れないとか、内容が簡単ではないとか、色々と理由はあるのですが、ゆっくりゆっくり読みたいなあと思い……

講演集ですが、個人的には『職業と道楽』がすごく面白かったです。
漱石が生きた時代はちょうど職業が細分化している時期で、そこでマッチングが上手くできない学生がたくさんモヤモヤしている…というのは、どこかで見たような光景。

そして、表題にもなっている『私の個人主義』は、これからもきっと読み返すであろう内容でした。
「自由に生きるときには、 自分以外の他者の個性や自由を尊重しなければいけない」

時代背景は違えど、今にも通じる言葉がたくさん。

どの講演も、導入部の言い訳が回りくどくて、漱石の照れ隠しなのかめんどくさい人だったのか、人柄が滲み出ていて、そこも面白いです。

[ 2011-04-04 ]

いかに生きるべきかを若者に向けて説いた講演「私の個人主義」を収める。苦悩と孤独を経て漱石が晩年に到達した境地とは。そこから発せられる渾身のメッセージは、現代を生きる私たちにも生き方の指針を与えてくれる。

[ 2011-02-15 ]

ぼくが漱石の小説、特に『猫』が好きであるとか、そういうことはここでは脇に寄せておく。

当書の表題ともなっている『私の個人主義』という講演録は、まずひとこと、すばらしい。
これだよ、これを求めていたんだ――と熱くなったところで、評価★5つは確定した。

かの著名なJ・Sミル『自由論』はこういう土壌で生まれたのか、と妙に得心した風情にひたったり、漱石の語り口調の軽妙さに心がほころびたり、今も昔も似たようなことを問題にしてるんだな、と史上月並な感想をもったり、「畢竟、程度問題」という言い回しに俺この言い方好きなんだよなー、畢竟程度、されど程度ってねーなどとニヤニヤしたり、とにかくたのしく読めた。

ただし一点だけ、個人主義の淋しさを語るところについて、ぼくは漱石が書いたようには(少なくともそう読めるという意において)おもわない。きみはきみの個人主義で、ぼくはぼくの個人主義である。これが通じる相手に出会えれば、それはそれで好さがあるんじゃないかなあ。

ガタガタと多くを語りすぎた。伝えたいのはひとつだけ。
しかし、それをいってしまえばこの"個人主義"と矛盾してしまうかもしれない。
星にでも願うような気持ちで、今これを書いている。

[ 2011-01-14 ]

本のタイトルにもなっている「私の個人主義」は40pに満たない講演録ですが、己の人生を考えるエッセンスが詰まったものであった。
・自己の個性と他者の尊重、自由と秩序
・権力と義務、金力と責任
漱石も人生の中で懊悩し、考え抜いて「自己本位」という言葉を己の手で握った。私も事を得られるように精進したい。

[ 2010-12-12 ]

彼の示した『個人主義』の考え方に深く納得させられた。権利とは一種の自由であり、自由には限度がないと無秩序状態に陥ってしまう。義務がないとカオスの世界を作り出すことになりかねない。だから権利を持つことを許された者は、それをどこかで還元すべきなのだ。それが義務なのであり、新たな自由、権利を生み出す元になってくれる。今を生きる私も、そのことを忘れずに生きていこうと思った。

[ 2012-09-18 ]

漱石先生が仰るところの鈍痛を感じている。

「行くより外に仕方ないのです。」

そうか、仕方がないのならば。

漱石自身の経験にも、そう言い切られたことにも、ずいぶん励まされた。
おれの尻の落ち着ける場所を。

[ 2012-07-08 ]

目から鱗が落ちた。と同時に、少し肩の荷が下りた。小説は勿論のこと、この随筆も珠玉。模索中の今だからこそ、ポンと背中を押してもらったような感じ。

[ 2014-01-18 ]

[このレビューにはネタバレが含まれます]

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[ 2010-09-14 ]

かの文豪、夏目漱石が晩年に行った講演の記録。

本書のタイトルになっている「私の個人主義」は学習院において学生に対して行った講演であるが、そのほかの講演はすべて一般の人を相手にしたもの。

先だって福澤諭吉の「学問のススメ」を読んだ際、その際立った先見性に驚愕した。学問に貪欲であり続けながら見聞を広め、思索を深めていくことで100年先の社会の在り方までも見えてくる例に触れたのである。

漱石もまた、本書に収められている講演内容から今日の日本のありようを、明治後期には見据えていたことがうかがえる。それにとどまらず、漱石は「何が文明を発達させるのか」、「職業とはどういうものか、道楽との差は何か」といった、普遍的テーマについての思索をめぐらせ、自身が得た結論を民衆に説くのである。そしてその内容は100年を経過した現在の日本人が接しても大変に納得できるものであり、先述の福澤同様、きわめて先見性に富んだ議論を展開していたことがわかる。

タイトルとなっている学生向けの講演「私の個人主義」は、こうした漱石の思考・論考がどうして生みだされたのか、自身の経歴をその時々の悩みとともに振り返りつつ、ひとつのケースとして学生に熱く語りかけている。この講演において漱石は、徹底して自分の人生において突きつめたい事柄(必ずしも学問とは限らない)に対して、決して妥協しないことを求める。また、学問を修めた者、金のある者には、自然と世の中を動かす力がついてくるため、その行使の方向を間違えれば危険な世の中をつくることにもなりかねないとし、学習院という当時の上流に位置する家庭の子女である学生に対して早くから高い倫理観を持つことを求めている。

漱石の講演は哲学的でもあるが、一般の人が無理なく理解できるよう、その内容は大変練られたものである。文人としての側面しか知らなかった私であったが、本書に触れ、学者として、思想家としての漱石を垣間見ることができ、非常に有意義であった。

[ 2010-05-16 ]

中学の国語の教科書に載っていて衝撃を受けた。その後の人格形成に多少影響を受けた。中学の教科書の中でもっとも印象に残っている。

[ 2010-05-05 ]

人生の指南書。地位や権力には自己責任がついてまわる、という今の政治家にも聴かせてあげたいような話を100年前に漱石はしています。

[ 2010-04-20 ]

夏目漱石の思想が端々に散りばめられている。
小説も然りだが、氏は物事を決して難しい言葉では表現しない。

近代化・合理主義化に対して、危惧を通し越して憂愁を感じさせる。
社会の大きな流れを、ただ諦観する。
小泉八雲にしてもそうだけど、こういった態度を前にすると現代人として言葉に詰まる。

やっぱり好きだわ、漱石。

[ 2014-08-09 ]

漱石晩年、生涯の体験と思索を総括した関西での講演録。道楽と職業、現代日本の開花、中味と形式、文芸と道徳、私の個人主義、どれをとっても漱石の思想に基づいた創造的で型にはまらない展開に、きっと聴衆は釘付けだったのではと想像する。
漱石の自己変革のきっかけになったのは、”自己本位”であり、自身の思想の根幹になっていったようだ。時代背景がこれだけ変わっても、自己本位の考え方や自己を追求する姿勢は、個の時代だからこそこれからも変わらない人として生きていく原点なのではないだろうか。

[ 2010-02-25 ]

ソウセキナツメが考えること

1)自分の個性が発展できるような場所に尻を落ち着けるべく、自分とぴたりと合った仕事と発見するまで邁進しなければ一生の不幸であること
2)自分の個性を尊重しうるように、他人に対してもその個性を認めて、彼らの傾向を尊重するのが理の当然
3)自己の所有している権力を使用しようと思うのならば、それに附随している義務も心得るべし

-England expects every man to do his duty

[ 2011-03-12 ]

漱石の講演をまとめたもので、「道楽と職業」「現代日本の開化」「中身と形式」「文芸と道徳」「私の個人主義」の5本立てです。


「道楽と職業」では、世の中では、自分のためにする仕事量と他人のためにする仕事の分量が等しくなることを前提ににして、人のためにするという意味を


高尚ではあるが偏狭な意味で人のためにするというのではなく、天然の事実そのものを引きくるめてなんでも蚊でも人に歓迎されるという意味

だと結論づけている。


私はこの主張に7割ほどは納得しながらも、完全には同意できない種類の人間です。
今世の中にあふれているさまざまな職業のほとんどが、生きていくのにさして重要でもない仕事を選択しているように感じているからです。
もちろん資本主義的循環とかいろいろこじつければ役にったっているのですが、例えば車の会社で毎日自分が働くと考えると、毎日必死になって働くほど車に価値があるのかとか、かえって車という高々機械に働かされている風に思えてならないです。(これがまさに資本が中心で人が中心でない資本主義そのものの弊害だと感じるのですが・・・)


書きたいことと違う方向に行ってしまった気がしますが、まあこんな感じで他4篇も鋭い社会認識にあふれています。高校生ぐらいによむのが一番いいのではないのでしょうか。開化の話は私の高校教科書にものっていましたし。

[ 2010-02-10 ]

この本によせて
道楽と職業
現代日本の開化
中味と形式
文芸と道徳
私の個人主義
解説 瀬沼茂樹
(目次より)

[ 2009-11-27 ]

夏目漱石の講演をいくつか集めたもの。「私の個人主義」はそのうちの一つ。

大学で三年間勉強しても本場イギリスに留学してもついに文学が何なのか解らなかった漱石であったが、ある時、これまでやってきた文学は西洋人の借り物であったことに気づく。漱石は自分が「独立した一個の日本人」であるならば、「風俗、人情、習慣、遡って国民の性格」に根ざした文芸批評をしなければならないと悟り、独自の文学観を打ち建てる。「自己本位」という言葉を見つけ、科学的研究や哲学的思索を重ねていく中で、これまでの不安や憂鬱な気分が消え、真の強さと自由を手に入れた漱石。漱石の個人主義とは自己本位に基づいたものであった。しかし、漱石は、自分が一個として自由を享有している限り、他にもその権利を同等に付与しなければならないという立場であり、彼の個人主義は自己本位といっても決して身勝手な生き方ではなかった。

[ 2009-06-02 ]

【道楽と職業】

[要旨]
 現代の日本では、開化に伴って職業の細分化が進んでいる。これは一般的な社会常識の欠落を引き起こし、片輪を生んでしまう。この状況を打開するためには他者を理解することが肝要だが、そのために筆者は文学に触れることを提案している。けだし文学は全ての人間に普遍的な営みを描き出すものだからである。
 他人のためにすることが「職業」、自分のためにすることが「道楽」である。芸術や科学・哲学は道楽である。筆者は芸術である文学を職業としているが、これは自分のためにしていることが偶然他人のためにもなっているからである。この偶然が壊れたとき、自分本位に根ざすか他人本位に根ざすか否かについて、筆者は自分本位を選択することを宣言している。

 −元来文学上の書物は専門的の述作ではない、多く一般の人間の共通な点について批評なり叙述なりを試みたものであるから、職業の如何にかかわらず、階級の如何にかかわらず赤裸々の人間を赤裸々に結びつけて、そうしてすべての他の墻壁を打破するものでありますから、吾人が人間として結びつくためには最も立派でまた最も弊の少ない機関だと思われるのです。−

【現代日本の開化】

[要旨]
 開化とは人間の活力の発現の経路である。この活力の発現の様態は二通りあり、一方は義務としての刺激に対する活力節減の反応として、もう一方は道楽としての刺激に対する活力磨耗の反応として現れる。この二つの反応が入り乱れて世の中が発展していく、ということが開化の本質である。
 現代日本における開化には、上記以外に外発的な開化であるという点に特色がある。否応なく進む、急激な跳ね上がりのごとき開化である。これは、西洋の開化がそれまでの日本の開化とは比較にならないほど、活量節減・活力磨耗の両面において進歩しているためである。外発的な開化とは皮相上滑りの開化であり、このような開化によって人は空虚感・不安感・不満感を募らせてゆく。しかし上滑りになるまいとしたところで、西洋と同等の内発的な開化を成し遂げることは極めて困難であり、人は神経衰弱に陥らざるを得ない。ここに現代日本の抱える深刻なジレンマがある。

[ 2009-05-13 ]

あの貴族の日常よりも、衣食住、そして情報、全ての面で現代人は恵まれている。
けれどもなぜか、不幸の度合は実の所変わらない。


誰もが自動車、電車、携帯電話を使える世の中になり、
「さぁこれからどれだけ便利、豊かな生活を送れるだろう」と喜び、全ての経済活動に欠かせない虚栄心を発動させる。
徒歩で40分の所が自動車で10分、これで30分の余裕が生まれるものの、結局その30分の使い道が解らなかったり、あるいは別の予定を組みこんでしまうので、便利どころかむしろ前にも増して忙しくなる。


あなたに揺るがない人生の目的があれば、世の中の見事なからくりに気付き、本当の意味で時間を自分のモノに出来るだろう。
「全ての時計が狂っているその町の中で」、せめてあなただけは正確な時間を刻め。
30分は貴重だ。

[ 2014-06-06 ]

講演集。
小説は学生の頃に読んだけど、初めて生の夏目漱石に触れた気がする。
今読んでも、全く色褪せてない。
さすが、旧千円札。

[ 2011-07-02 ]

夏目漱石の講演録。約100年も前のものとは思えない、現代にも十分通用する優れた思想を読み取ることができる。同時期に読んだ内田樹にも漱石と同じようなことを言っている、と感じる箇所があったのがその証拠。ユーモアを交えた語りなので楽しく読めます。
ちなみにゲーム理論の教科書によると、自由で自律的な個人がいかに協力してより良い社会を作ることができるかを研究する学問であるゲーム理論の背景には、夏目漱石の「わたしの個人主義」に見られる近代個人主義思想があるらしいです。いずれにせよ様々な分野に引用され得る普遍性を持っているということ。

[ 2009-06-26 ]

講演録(学習院で学生に演説する形で記しています)。他者とは切り離された自分の意見(自己本位性)を持つべき、という漱石自身の考え方を表したもの。読んでみると、たしかにーと共感する普遍的なところがありました。(メモ:人格を持たないor権力や金の力がある人は自分の意見を他人に押し付けるきらいがある。)

[ 2010-03-30 ]

古今の比較や定義から発展させていく考え方に共感。
将来や生き方に悩んでる今の私にとっては、己を信じて突き進めばいいと鼓舞して貰えた気がする。

[ 2009-01-04 ]

明治44年(1911)と大正3年(1914)に開かれた講演会、計五編を集めた一冊。夏目漱石は1916年に死んだのだから、本当に晩年のものだ。個人的には漱石の小説はほとんど読んだし江藤淳や柄谷行人などの評論も少しは当たっているから、知識として新しいことはほとんど見当たらない。「私の個人主義」を又聞きではなく直接読んでみたいというあまり強くない動機で買ったに過ぎない。

駄話からはじまりいつのまにか本題へ移る語り様は、整理整頓されていないし「門口から玄関までがうんざり」すると評せられるほど冗長的であるものの、なぜか読みやすいと感じるのは漱石の語る言葉が身体的な次元において抽象化を果たしているからだろうか。具体的には、二項対立の設定がうまいからかしら。道楽/職業、内発/外発、中身/形式、文芸/道徳など。これらが集まって出来上がる漱石のスタンス、それが「私の個人主義」なる概念なのだが、利己主義とは違うことが肝要である。自己を社会という大文字の道徳、善、義理、責任などを内包した全体的個人とせよ、ということ。それはたとえば、自己本位としての道楽(芸術家/哲学者/科学者)と他人本意としての(社会的)職業を止揚せよということ。つまり、、

*   *   *

漱石の個人主義
≒ルソーの社会化された「私」
≒デカルト的「コギト」
≒柳田的「常民」
≒大塚的「公民」

[ 2009-03-12 ]

すごい簡単なことを言っているようなんだけど、
思考の到達点が人の先を行っていて話が深い。

複雑なことを簡単にするのが人間のすごいところ、
といつかタモリさんが言ってたのを思い出した。

そのうえ本質的、普遍的なところを掴んでいるから、
今読んでも全く古く感じない。


(2009年 3月 12冊目)

[ 2009-08-24 ]

精神健康論の課題本。
漱石の講演をまとめたもので、表題作は学習院で行ったもの。
-----
ああここにおれの進むべき道があった!
ようやく掘り当てた!

こういう間投詞を心の底から叫びだされる時、あなたがたははじめて心を安んずる事が出来るのでしょう。
容易に打ち壊されない自信が、その叫び声とともにむくむく首を擡げ来るのではありませんか。
(中略)
もし途中で霧か靄のために懊悩としていられる方があるならば、どんな犠牲を払っても、
ああここだという掘当てるところまでいったら宜しかろうと思うのです。
(中略)
もしどこかにこだわりがあるなら、それを踏潰すまで進まなければ駄目ですよ。
------
というわけで、進路変更を決めたんですなー
結果はまだ、というかおそらくいつになってもわからないけど、とりあえずやらない後悔、は回避したわけで。
漱石さんには感謝ですなー

他の部分をたまに読んでみても、すごく力のある言葉でびびる。
100年前にこんな講演が聴けただなんて。生で聴いてみたかった。

[ 2013-08-20 ]

講演を集めたもの。何となく、夏目漱石って難しいイメージがあったけど、割と読みやすく、楽しく読んだ。なるほど、と納得する部分もあったし、すとんと胸に落ちてくるような部分もあった。きっと楽しい講演だったんだろうなぁ。また読みたいな、と思った。

[ 2010-03-24 ]

名作だと思います。私の個人主義は当時「近代化」に向かって進もうとする日本に対して苦言を呈した漱石先生の考えが見れます。

[ 2008-05-03 ]

これを読んだとき、「今の日本はまったく進歩していないな」と思ってしまった。
それくらい、この演説の内容は現代に通じるものがある。
学問の専門化・細分化による「専門バカ」、「内容」より「形式」への拘泥、「皮相上滑りの開化」、などなど。
今の社会を考える、考え直すためにもこの本に出会えてよかった。

[ 2008-06-28 ]

書評済み
http://blog.livedoor.jp/kova_plus/archives/840146.html

[ 2008-09-02 ]

造詣深い。演説集。

●道楽と職業 
職業は自分の需要以上その方面にはたらいて、自分の不要な部分を他の使用に給するもので、自己本位的に生きるのであれば職業は不必要。
だから仕事は他人への喜びにやりがいをかんじる部分が多いんだと思う。

●現代日本の開化
開化は義務への労力の削減と、道楽への労力を費やす時間の増加を狙ってやるもの。
開化がうまくいってれば、人の生活は豊かに、役になってるに違いないのに、今の日本を見る限り実現されていない。
それは日本の開化が西欧の真似による外発的なものであるから。
日本人の受動性、創造力の欠如、問題解決能力のなさの起因はここかも。無理がでてくるぞそのうち。

●中身と形式
中身を形式で抑えるのではなく、形式は中身によって自然に発生するものだということ。
ならば日本はなんなんだ。憲法も文化も真似事ばっかり。やばい。

●文芸と道徳
ロマン主義と自然主義を道徳観に結びつける画期的な演説。普通にすごい。
実現可能な浪漫を持って、自然に生きるのが人間を一番良い方向に形成するということだと思う。

●私の個人主義
漱石の個人主義の考え方は自己本位的なもの。イギリスのそれに似てる。
自己中ではなくて、相手を尊重下上での自己の追求。
結局、自由ってのは義務あってのものだな。

[ 2009-10-28 ]

漱石の軽妙な言葉遣いが好き。
深いことを難しく言わない。
秋刀魚のくだり、留学中に”悟った”文学とのかかわり方。
天才のきまぐれとか謙遜じゃなくて、
凡人が試行錯誤したあとに辿りつく物事の真理に
心にしみこんでくるものがある。
彼が凡人だというわけではなくて
上から目線ではない、講演の形を借りた対等な
(というよりむしろ低め)言葉の選択と
文章の運びかた。すごく参考になる。
また読み返そう。

[ 2008-05-14 ]

講演録という臨場感に一冊の本にまとめた時のそれぞれのつながりがプラス作用を起こし非常に味のあるものとなっている。また夏目漱石の巧みな講演技法も学べるとあって2度おいしい。
全体を通していえるのは漱石のバランス感、中庸観が目立つ。『道楽と職業』・・・複雑に見える自己と他己の問題を明晰かつ論理的に捉えている。『現代日本の開化』・・・日本の開化を『皮相上滑りの開化』と称し、その行く末を悲観的に捉えているのが予想外であり、打破する名案は無いと言い切るあたりが興味深い。『中身と形式』・・・すべての事象が中身ありきの形式という方式に収斂されていく。多くに経験を積むべしと語る。『文芸と道徳』『私の個人主義』

[ 2010-12-03 ]

一度読み終えた...
多分 凄くいい事が書いてあるんだと思う... 読解力が無くてきっと1/10も理解してないんだと思う。

最後の「解説」をもう一度じっくりと読んで、そして次に「私の個人主義」を読み、後ろから読んでみようと思う...

内面の形成、個人主義 個人がとても自由でありながらとても秩序のある国イギリス

己の進むべき道を「掘り当てた」という確信を見つける事の大切さ...

等々...

講演を収録した物...


未だ、はっきりと理解してないけれど、これから生きて行く上で、そして社会の中で気持ちが揺れ動かないで居られる為に何をしたら良いのか...を考える。という事を考えなければ...と気付かせてくれる一冊だと思う。

ちゃんと理解する迄 何度でも読まなくちゃ..

[ 2007-06-23 ]

大正3年(1914)、学習院での講演の記録。
時に漱石47歳、世を去る2年前のことである。

講演内容は大きく前後半に分かれる。
前半は、教職の場を転々とし、英国に留学して初めて文芸に対する自己の立脚点を得るという話。
すなわち、それまでの他人本位から、自己本位という考え方に到達するまでの話である。
この自己本位が個人主義とつながっていく。

後半は、漱石のいう個人主義とはどのようなことかを説明し、聴衆の学習院の生徒たちが将来手にするであろう権力と金力は、それを行使する際に責任と義務を伴うとする。

個人という観念が、まだ未成熟であった近代において、漱石の個人主義についての考え方は大変すぐれたものであり、今読み返しても、決して色あせてはいない。

[ 2007-05-07 ]

文豪 夏目漱石の同名の講演を活字にしたものです。
小説だけでなく、講演も当代随一と言われた漱石。ユーモアも交えながらも、時代にするどくメスを入れる視点が斬新です。しかも現代社会に通ずるものもあり、明治時代の文豪の先見の明に関心せざるを得ません。

[ 2007-12-30 ]

話し口調とはいえ慣れない文体に読み慣れない漢字…難しかったです。ただ内容は結構考えさせられてよかったです。

[ 2008-06-22 ]

なんでこの人と同時代に生きることができなかったんだろう、肉声を聴きたかったと思わせる内容。
『道楽と職業』は仕事でのスタンスに迷った時
『文芸と道徳』は浪漫主義と自然主義、つまり理想に対する己の対峙の仕方に迷った時
刺さる内容でした。

[ 2006-06-25 ]

漱石が学習院で学生に語りかけた講演録。日露戦争(1904−05年)直後に既に太平洋戦争勃発を予見し、日本が戦争に走らぬよう懸命に語る。

[ 2006-06-05 ]

懐かしさについ買ってしまった。これ高校の教科書に載ってたわー。

しゃべり口が文体まんま。これ実際に聞いてたら鬱陶しかろうなあ。んなことねーのかなあ。

[ 2010-04-18 ]

漱石の“生の声”とも言える講論集.晩年に近畿地方にて行われた講演5編(「道楽と職業」,「現代日本の開化」,「中味と形式」,「文芸と道徳」,「私の個人主義」)を収録.
本のタイトルにもなっている「私の個人主義」では,自らの経験を踏まえ,未来ある若者に対し,自分の信じる道を突き進め,と熱きエールを送っている.私も大いに感化された.
一方で「現代日本の開化」では,日本は文明開化を遂げたものの,未来永劫欧米の後追いを続けねばならない事実を看破し,その悲哀を嘆じている.明るい材料が提示されずに終わるこの講演は,ただ彼自身のそのときの精神状態を反映しているのではなく,将来の日本すなわち現在の日本の本質を突いていると言わざるを得ないだろう.そしてそこに薄々気づいている者は,「死ぬか,気が違うか,宗教に入るか」(『行人』より)しかないのかもしれない.
しかし,だからこそ,自らの信じる道を突き進むしか,自己を生かす道はないのだ.そこに彼が「自己本位」「個人主義」を説く核心がある.

[ 2007-11-15 ]

夏目漱石の講演をまとめた一冊。ブックオカの書店員オススメの一冊で紹介されていて手に取りました。ただただ夏目漱石の先見の明に感服。今読んでもまったく色褪せることなく、現代人の私たちの思想に鋭く切り込んできます。特に一番最初に収録されている「道楽と職業」、最後の学習院での講演「私の個人主義」は秀逸。広い意味での若い人に是非読んでいただきたい一冊です。